歌う、歌う、歌い続ける
あおじ
1
「おい、ミラン」
公園のベンチで本を読んでいると不躾に名前を呼ばれた。
その聞き慣れた声に僕が仕方なく顔を上げると、同じクラスのバーニーとグスがニヤニヤと下卑た笑みを浮かべて立っていた。
横にも縦にも大きい乱暴者のバーニー、そしてその手下をしている小柄で痩せっぽちのグス。この二人に関わるとろくなことにならない、それがこの町の常識だ。
とはいっても、無視をしたらしたで面倒くさいので対応することにする。
「やぁ、バーニーにグス。僕に何か用かい? 今本を読んでいるから手短に頼むよ」
手にした本を少しだけ持ち上げてそう言うと、バーニーはその太い腕を伸ばしてきた。
本はぐしゃりと掴まれ、そして奪われるとベンチの横に置いてあるごみ箱の中へと捨てられる。
「本なんてつまらないものどうだっていいだろう? それよりも動画を撮ろうぜ、動画をさ!」
バーニーの隣に立つグスの両手にはやたら高性能そうなカメラがおさまっていた。
どうやら彼らの最近の趣味は、撮った映像を動画投稿サイトにアップすることらしい。
「……一体どんな動画を撮るの? それって僕が必要?」
ため息をつきたいのを我慢しつつ訊ねると、バーニーは胸を張って答える。
「森の奥の心霊スポットに忍び込むのさ! お前が一緒にいたら何か起こると思ってな。なぁ、そうだろ? 幽霊が視えるミランくん!」
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