#3 洒落てんな


「上がって。……そこのソファにでも座ってて」

 リビングに通され、深緑色のふっかふかのソファに座らせてもらった。

『深ぁ』

 一気に体が沈みとても心地よかった。

「はいこれ、紅茶。これでも飲んで待ってて」

 ソファの前にある小さなテーブル(コーヒーテーブル・リビングテーブル)に、紅茶が注がれた小さくて可愛いティーカップが置かれた。それを一口啜りながら、洒落たリビングを眺めていた。

 『このソファは深緑一色だけど、差し色として黄色のクッションかぁ……観葉植物達も沢山あって緑貴重だな。テレビの周りには雑貨が置いてあって情報量マシマシ。あぁぁ…見てるだけで楽しいぃー』

 あの頃の私は、マイ〇ラでの建築にハマっており、オシャレな内装などを見て感心していた。それと、将来開くつもりのカフェの店内もオシャレにしたいと思っていたのもあって「参考にでも」と思い隅々まで見ていた。そう浸っていると、三門が声をかけてきた。

「あ、如月ー。何作る?ものによっちゃ買い物行くかもよ」

 そう聞かれ、私はどんな材料があるかを見させてもらった。

「うーん、とりあえずスパゲティがあるから、何らかのパスタ料理が作れそうじゃね?ニンニクもあるし、何ができるかなぁ?」

「あ、庭で育ててるバジルがあるよ、粉チーもあるし、ジェノベーゼは?」

 三門が名案を出してきた。私は咄嗟に「いいね!食べたい!」と返事をしていた。一緒にと言っても、作り方すら分からないのに。

「いいけど、俺作り方わからんよ?できることは全然するけど」

「そっか。一応あそこにあるノートにレシピとかあるはずだから、サッと見てみていいよ」

 学校で、一人でずっと読んでいた物は自作のレシピブックだったらしい。

「なになに……松の実?そんなの使うん?あるのー?」

 ノートのジェノベーゼのページに書いてあった材料は松の実だ。

「あー、松の実ね。それはそこにある瓶の中身で代用できるから大丈夫。あの瓶に何が入ってるかわかる?」

 大きな瓶の中に入ってたのはナッツだ。松の実はナッツで代用できるらしい。

「よし!そろそろ作り始めるか。よし、如月庭にあるバジルを沢山採ってこい!」

 そう指示をされ、私はバジルを積みに行った。そこで私は再び思わされた。

 『この家オシャレすぎだろ……庭まで綺麗に手入れされてるし』

 バジルを沢山積んでキッチンへ行くと三門はもうパスタを茹でていた。

「あっ、採ってきた?そこの引き出しにフードプロセッサーがあるからそれでソース作れる?ノート見ればわかると思うからさ」

 そう言われ私はノートを見た。松の実のことを知った時にも、このノートについて思ったことがあった。

 

 ────『字が汚すぎる!』──── 

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おれ時間 五月兎夢 @Tom_Satsuki

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