第20話 相良陣屋での再集結と桜の決意、そして熱狂の始まり!



 相良陣屋に足を踏み入れた桜は、その広大な敷地と荒廃した様子を目の当たりにした。

 しかし、その瞳には諦めの色はなく、むしろ強い決意が宿っていた。

 陣屋の中央に位置する広間は、かつての栄華を偲ばせるも、今は埃まみれで静まり返っている。

 しかし、桜はここを、未来への足がかりとすると決めていた。


(この美少女、肝が据わりすぎだろ! まさに女傑! 俺のハーレムには、こういう気丈なタイプも必要だ!)


 まず桜は、屋敷に到着して間もなく、自分に最後まで協力的だった人々を陣屋の広間に集めるよう指示した。


 集まったのは、桜の屋敷で働く者たち、駿府から協力してくれた商人たち、そして、俺の提案で相良から駆けつけてくれた芝島夫婦とその若き弟子たち。

 広間には、数十人もの人々がひしめき合い、彼らの視線は一点に集中していた。


(まるで、熱血漫画の主人公が演説を始める前の、あの緊張感だ!俺、ちょっとワクワクしてきたぞ!)


 静まり返る広間に、桜の凛とした声が響き渡った。


「皆の者! この相良の地で、私はもう一度、商いを行います!」


 その言葉に、広間は一瞬の静寂に包まれ、やがてどよめきが起こった。

 桜は、集まった人々の顔を一人一人見渡し、力強く続けた。


「私たちは、この地の地下に眠る宝、すなわち油を掘り起こし、それを世に送り出します。そして、この油を用いて、人々の暮らしを豊かにする新たな光を創造するのです。これは決して容易な道ではありません。しかし、私は皆の力を信じています。どうか、私に力を貸してほしい!」


 桜の熱い訴えに、広間に集まった人々は皆、感銘を受けた。

 彼らの顔には、新たな挑戦への期待と、桜への信頼が満ち溢れていた。

 彼らは口々に協力の意を表明し、広間は熱気と活気に包まれた。


(まるで、アニメの最終回のような盛り上がりだ!俺、思わず「アンコール!」って叫びそうになったぜ!)


 集まった聴衆の中には、以前に一夜の宿を借りた芝島夫婦の姿もあった。

 彼らは桜の言葉に深く頷き、その瞳には強い決意が宿っていた。

 そして、桜の父と親交の深かった**榊原権蔵(さかきばら ごんぞう)**もまた、その場にいた。

 権蔵は静かに桜の言葉を聞き終え、満足そうに頷いた。


(おお、芝島夫婦の親父さんもいるのか! これは心強い!)


 皆を解散させた後、桜は権蔵と芝島夫婦を広間の奥にある小部屋に招き入れた。

 そこには、簡素な机と椅子が用意されており、三人は向かい合って座った。


「権蔵様、芝島殿、これからのことについて、ご相談させていただきたいことがあります」


 桜は、真剣な眼差しで二人を見つめ、これからの事業の具体的な計画を話し始めた。

 その目は、まさに未来を見据える先駆者のそれだった。


(よし、俺もこの会議に参加して、俺の『未来知識チート』と『童貞魔法』を惜しみなく披露してやるぜ!……って、童貞魔法は関係ないだろ!)




 桜が最初に口にしたのは、相良油田から油を採掘し、それを駿府まで船で運び、そこで販売するという、事業の根幹となる計画だった。


 権蔵と芝島夫婦は、その壮大な構想に耳を傾け、時折質問を挟みながら、真剣な表情で話を聞いていた。


「油田事業と並行して、手に職を持つ権蔵様には、オイルランプの製造をお願いしたいのです」


 桜はそう言って、俺がCADで作成した簡単なオイルランプの図面を二人に手渡した。

 図面は、従来の行燈とは異なり、より効率的で安全に油を燃焼させるための工夫が凝らされていた。


 権蔵は図面を手に取り、熟練の職人の眼差しで隅々まで確認した。

 彼は長年、金属加工に携わってきた経験から、その構造や製造工程を瞬時に理解した。


「なるほど、これは面白い。しかし、この構造では、それなりの鉄が必要となりますな」


 権蔵の指摘に、桜は頷いた。


「ええ、その点についても考えております。当面の間は、嶺たちが砂鉄から電気炉を使い鉄を作り、権蔵先生に提供する形を考えております」


 これには権蔵も驚きを隠せない様子だった。

 砂鉄から鉄を作り出すという、途方もない計画に、彼は静かに感嘆の息を漏らした。


 この方法は古来より刀鍛冶などで使われていたことなので、鍛冶をかじったことのある者ならば誰もが知るが、知るだけに、その困難さも理解している。


「砂鉄の収集からいきなり困難にぶち当たりますが」


 芝島さんが言ってきた。


「そこは考えがあります」


「いや、砂鉄を集めても、鉄にするまでに相当な手間が……」


「少量……ここでいう少量というのはこのランプで言いますと2~3個分ですか。それくらいならすぐにできますが、そこは私に任せてください」


 俺はEV車に積んである電気炉を使う方向で考えている。

 これは、前に工業高校でデモをしたことがある。

 浜に出て、磁石で砂鉄を集め、それを電気炉にぶち込んで終わりだ。


 尤も、相当電気は食うが、そこは油(軽油)の心配がなくなるので、問題は無いだろう。


(俺の童貞魔法にかかれば、砂鉄からでも鉄を作るなんて朝飯前……なわけない! これも未来の知識の恩恵だ! ってか、電気炉ってヤバくね? 俺、どこまでこの世界を変えちまうんだ!?)


 芝島夫婦は、オイルランプの製造について、図面を見ながら議論を始めた。

 彼らは、必要な材料や工具、そして製造工程について、具体的な意見を交わしていく。


 桜は、彼らの専門知識と経験に耳を傾け、積極的に意見を取り入れた。


「その他、一度屋敷まで権蔵さんたちをお呼びして、必要な工具類を選んでいただきたいのです」


 桜の提案に、権蔵は快諾した。

 彼らは後日、桜の屋敷を訪れ、これまで蓄えられていた工具の中から、オイルランプ製造に必要なものを選び出した。


 そして、いよいよオイルランプの一号機が屋敷の庭で作られることになった。

 権蔵と芝島夫婦、そしてその弟子たちが協力し、試行錯誤を繰り返しながら、丹精込めて作り上げた。




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