二十六夜 旅は道連れニャイト

 『入るな危険』と洞窟の入口にデカデカと彫っていて、横穴には『御用の方はノックしろにゃ』と書いているにゃ。岩を切り出して作ったであろう入口は通常の魔物は入口だと認識しないにゃろう。


 まあ、明らか猫が住んでるにゃ。


「まさかこんな所に猫にゃんて住まにゃいでしょう? にゃにかの冗談では?」

「⋯⋯いや、いるな」


 コンコン!


「はーい♪」


 ⋯⋯。


「ほらな?」

「度し難いですにゃ」


 クリスが不満を漏らす。

 ガチャリ


「どなたですにゃ?」

「通りすがりの者ですにゃ。少し話を聞きたいにゃが、良いにゃろうか?」

「ここに人が訪れるのは初めてにゃ。歓迎するにゃ。まあ立ち話もにゃんだから入れにゃ」


 意外とすんなり入れるにゃね。まあ、こんなとこに住居を構えるくらいにゃ。強い。


「失礼するにゃ」

「「失礼しますにゃ」」

「⋯⋯」

「いや無理だからね? サーペントは入れませんよ? って⋯⋯え?? サーペント?? さ、サーペントオオオオオオオッ!?」

「こいつは友だちのココルにゃ。ここで待っててもらうにゃ」

「そんな可愛らしい名前しててもサーペントですにゃよ? 大丈夫にゃんですかい?」

「大丈夫じゃにゃいように見えるにゃか?」

「絶妙に微妙ですにゃが、ギリ? 大丈夫?」


 ココルは可愛い花柄模様を見せてアピールしているにゃが、実質的な質量の前ではあまり意味をにゃさにゃいにゃろう?


「可愛らしいにゃね♡」


 なに、意味をにゃしただと!?


「悪いにゃココル。ここで待っててくれにゃ」


 フンフン縦振り。いいこにゃ。


「オイラの名前はクロノア」

「すまない。申し遅れたにゃ。俺はノックス。そしてオルガとクリスにゃ」

「歓迎するにゃ」


 中に入ると、わりと生活力のある空間が広がっている。ベッドにテーブルとイス、着替えと干された洗濯物、そして大量のカリカリの入った袋。そしてここにきてコイツを見かけるとはにゃ?


「ミャスリル銀?」

「やらにゃいにゃよ?」


 ⋯⋯こいつ。こんにゃものを持っているのに見知らぬ猫を招き入れるとか。そう言えばサーペントを見ても臆することもにゃかったにゃ。下層と言うこともあるにゃが、相当の腕があるにゃね。


 何者にゃ?


「あんた、あれにゃろ? バドの爺さんに頼まれたんにゃね?」

「ん? あ、ああ。知ってるのか?」

「爺さんにこれを売ったのはオイラにゃからにゃ。爺さんはもっと売ってくれと言うにゃが、この洞窟から出てくるモンスターからドロップする分しか手に入らにゃいので、量は用意出来にゃーし、中に入って採掘する気はにゃいと断ったにゃ」


 にゃるほど?


「ここから出てくるモンスターとは?」

「ロックゴーレムにゃ。この洞窟、ダンジョンの素材から作られるその体にミャスリル銀がついていることが多いにゃ」


 ロックゴーレムを単独で倒せるにゃか、こいつ。


「ところでここに住んでるにゃ?」

「んにゃわけにゃーにゃよ。オイラはトレニャーハンターを生業にしているにゃ。今はこのミャスリル銀が効率よく儲かるのでここでロックゴーレムを狩ってるにゃ」

「教えてほしいにゃが⋯⋯」

「俺の識ってることにゃら何でも教えてやるにゃ」

「この洞窟はワンフロアダンジョンだと聴いたにゃが、本当にゃ?」

「本当にゃ。爺さんにそれを教えたのも俺にゃ。しかしこのダンジョンは危険にゃ。俺には踏破できる気がしにゃーから、ここでロックゴーレム狩りをしているにゃよ」

「にゃにが危険にゃ?」

「まあ、単純に魔物が強いのもあるにゃが、中にはアイツがいるにゃからね⋯⋯」

「アイツ?」


 クロノアは言い淀んで俺の目を見た。


「ドラゴン」


 やはり。あの濃厚な魔素を含んだヒリつく空気感はドラゴン特有のものにゃ。つまり、この洞窟はダンジョンにしてドラゴンの巣、そう言うことににゃるにゃ。


「見たにゃか?」

「見た。まあ、すぐに逃げたがにゃ?」


 そりゃまあそうにゃろう。ジジイめ。これを知ってて俺に頼みやがったにゃ?


「特徴を教えてくれにゃいか?」

「ん〜、まず地竜にゃね。色は深い青。大きさとしては外のサーペントの二倍はあるにゃ。刃が立た⋯⋯いや爪が立たにゃいにゃよ。少なくともオイラにはにゃ?」

「くそジジイめ。俺がチュールを欲しがっているのを知っててこんな無理難題を⋯⋯」

「ああ、諦めた方が賢明だと思うぜにゃ? 悪いこたぁ言わねぇにゃ。引き返すならここにゃ」


 普通にゃらにゃ?


「引き返さにゃいならクロノア、手伝ってくれるにゃか?」

「おいおい、今の話を聞いてたろにゃ!? 本気かにゃ!?」

「当たり前にゃ。そこにあるんにゃろ? ミャスリル銀が?」


 クロノアを見た。

 クロノアは視線を逸らさずニヤリと笑った。


「ああ、あるにゃ。たんまりにゃ?」

「にゃら、行くだけにゃ!」


 じっと俺の目を見るクロノア。

 そして、諦めたように言う。


「はあ⋯⋯オイラは道案内するだけにゃよ?」

「助かるにゃ! 報酬はミャスリルで払うにゃ」

「にゃ」




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