AKF(アウェイクンキーパーフォース)立ち上がりし守護者の部隊
コトプロス
第1話 アウェイクンキーパー
「ずいぶん眠そうだなぁ、征仁よぉ、お前また夜遅くまでAKやってたのか?」
「まあな、今のシーズンになって今までは使われなかった戦法が有効性を帯びて来てさ」
後ろの席の吉木が呆れた様にする。
授業中にうっすら船を漕いでたらしい。
昨夜はついつい遅くまで俺のマイフェイバリットゲーム「アウェイクンキーパー」通称AKと呼ばれるロボットアクションゲームをやり込んで居て気付けば明け方だったんだよな。
「お前ホントあのゲーム好きだよな。他にやるモンねぇのかよ」
「そういうなよ吉木、お前のやってるネトゲのマルチにも付き合ってやってんだろ? それに俺はあのゲームしかやらない訳じゃないぞ? ストロングロボティクス界戦とか他にもかっけぇロボットが出るなら何でもござれだ。」
「征仁、お前は確かにロボットゲーム好きだよなぁ。それにゲームの要点掴むの上手い。俺がオススメするネトゲとかシステムと要点すぐに覚えるしさ。アイツとも良い勝負するんじゃないか?」
吉木は教室の前の方を指す。その先には現役高校生でプロゲーマーの仁宇力瞬がスマホで何かを見ていた。
「バカ言え、俺はスポーツマンみたいな勝った負けたの世界だとしんどくなりそうだからパス。それに華がないしな」
「当たり前だ。本気で勝とうとしてる奴に何となく楽しいでやってる奴が敵う訳無いだろ?」
聞こえて居たのか。
言ってる事はまあ間違っちゃ居ないんだろうが、わざわざ言いに来るなんて相変わらず嫌味な奴だ。
コレでゲーム配信とかだとスゲェ人気があるんだからなぁ……
やっぱ顔か(´・ω・`)
担任の先生が教室に入って来る。
「えー、今日は転校生が来ます。槇野時音さん入って」
時音と呼ばれた少女はパッと見は普通の少女だった。コレがラノベだと長々と髪質がどうの透き通る肌艶がどうの、乳のデカさうんぬんって説明が入りそうなモンだが、綺麗めではあるがよく居そうな女の子だな。ちょっと幸薄そう。あとはなんかデカい腕時計してるぐらいか。アレゴツいな。気になる
俺が彼女の左手に興味を惹かれていると槇野時音は仁宇力瞬に詰め寄る。
「貴方ね?プロゲーマー仁宇力瞬」
「あ、あぁ。俺は瞬だが……ファンか?それで学校まで転校してくるってお前ヤバ過ぎだろ」
「コレを付けて」
時音は左腕のゴツい腕時計を外すと瞬に差し出す。瞬も明らかに警戒してるな……そりゃあ始めましてで腕時計差し出されたら怖いよね。
「お前いきなり来て付けろって何のつもり? 盗聴器でも入ってんのか?」
「良いから付けなさい」「だから何で付けて欲しいんだ?!」「付けてよ!!」
何か押し問答始めたな………
(おい、おい仁宇力瞬! この女はお前を追っかけて転校までして来る奴だぞ? キレさせてヤケになると何するか分かんねぇよこえぇよ。後で怪しいモンが付いてないか一緒に確認してやるから形だけ付けないか?)
(あ、あぁそうだな分かったよ)
瞬はゴツい腕時計を左手に巻く。すると時音は腕時計に付いている幾つかのボタンを操作し始める。
「対象の装着を確認、レセプター展開、シンクロデバイス起動。………………完了。やった! この数値なら…………」
カシュンと音がして文字盤が展開して中のメカが空中に浮かび上がる。そして瞬を中心にまばゆい光が溢れ出た。
「吉木、居るか?何が起きた!」
「聞こえてるよ征仁、いったい何があった?」
次第に教室が落ち着きを取り戻し始める。腕時計には小さいが理科の教科書で見た加速器?よく分からないけどそんな感じの機械とプラネタリウムを足して2で割った様なモノが鎮座していた。
「おおっ! 成功だ! 彼がそうだな。仁宇力瞬くん。是非我々と来てほしい。今ので奴らがここにやって来るハズだ。」
いかにもマッドな感じの科学者がいきなり現れて喜びを全身で表現している。
いったい何だ? 我々と来てほしい?
「いきなりですまないな。私は座頭。この計画の発案者でキミに目をつけていた。そしていずれ人類の歴史に名を残す者である。まあ、人類が残っていればの話だがね。」
計画? ………人類が残っていれば? …………
「つまり………何かヤバいのが攻めて来る?」
「そこのキミィ!正しい状況説明ありがとう!大まかにはそんな感じだね!」
あちこちからどういう事だの返してくれだのクラスメイトがそれぞれに声を上げ始める。
「座頭さん、でよろしいですかね。いきなりなんですか貴方は。計画だのなんだのと、ウチの生徒を何のために連れて行こうとしてたのかはご説明願いたい。」
「ゲームが上手いから」
「は?」
「ゲームが上手いからだよチミ! 彼がプロフェッショナルとして活動しているゲームはある機動兵器のシミュレーターを兼ねていてね! 好成績を収めた仁宇力くんをエースパイロットとして引き抜きに来たのだよ!」
「せ、生徒を戦争に連れて行く気ですか!」
「そそ、じゃないとみんな死ぬよぉ」
周囲からは怒りと困惑の声が上がる。と同時に部屋に振動が起こる。地震か?いや雷が落ちたみたいな、大きなモノが崩れ落ちる様な……規則的な振動、そして衝撃音。コレは……爆撃?!
「戦闘態勢! 瞬きゅんと他に我こそはって奴らは付いてきな! 男の子なら絶頂必至の光景を見せてあけるからさ!」
今はとにかく情報が必要だ。俺は吉木と共にドアから飛び出た。
明らかに近未来的な装備をした兵士の間を右に左にしばらく歩いていると巨大なトレーラーにつく。そこには白く輝く巨大なロボットが鎮座していた。
5メートル程の身長にヒロイックな造形のアーマーを纏い、今にも動き出さんばかりに機械音を響かせていた。
「座頭主任!火は入れてます!いつでも行けますよ!」
作業員も待ってましたとばかりに瞬に何らかの機械を取り付けていく。
「瞬くんですね。基本は貴方がよく慣れ親しんでいるゲームと同じです。FPSだと思って下さい」
「いや、何だコレ? ロボット? 外の破壊音から察するにこれで戦えってい」(プシュ)
「主任〜ちゃんとして下さいよ。疑問持っちゃってるじゃないですかーやだー」
思いっきりナニかを嗅がせてた……一瞬で瞬がトロンとした目つきになったんだけど怖い((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル
あれよあれよという間にパイロットスーツに着替えて白いロボットに放り込まれる瞬。というかアレって………
「ホワイトグリマルキン………?」
ホワイトグリマルキンは俺の愛するゲームであるAKの主人公機と言って差し支え無い機体である。宇宙から飛来したエネルギー鉱石コロニストーンドライブを作中初めて実用化に成功したフラグシップ機である。
ただ俺は無骨でカクカクしたデザインで重量級のサンスクリットのが好きだからあんまり使わなかったんだよね。
「おぉ?キミAKプレイヤー?ランクは?」
「あ、はい。一応最高ランクのイレギュラーですけd」
瞬間爆発音が響き瓦礫が振り注ぐ。土煙の向こうから機械で出来た巨大な虫が顔を覗かせていた。
「ホワイトグリマルキン! システムアクション! 」
白い鬼神がライフルを構えて虫の頭を吹き飛ばす。そのまま機械虫を突き破りホワイトグリマルキンは空に飛翔して行った。
あの機械虫は珪素生命体であったコロニストーンが野生化したモノだ。AKで見た。
「座頭さん。AKみたいな敵ッスね。アレ。ホワイトグリマルキンといいシュッシンが噛んでるんです?」
「そうだね!あのゲームが今のこの世界を預言してたのさ!!」
精一杯の現実逃避でダメ元で聞いた質問の答えに俺は絶望した。シュッシンのゲームは世界観が絶望的な事で有名だ。
「そう、シュッシンはこの破壊に対抗する為にワクチンとしてゲームを作ったのだ。全ては奴ら機械虫を打ち破るため。協力してくれるよね♡」
俺は素直に頷いた。プシュってされたくないしな。
案内された駐機場には3メートル程の小型のAR(アウェイクンライダーつまり手足の生えたバイク)が並んでいた。
「よろしくな、相棒」
ハンドルを握るとなんとなくこのARが喜んでるのを感じる。コイツにもコロニストーン技術が使われてるだろうからね。
ガシャガシャと周りのARも動き初めて運動部系の奴らが気炎を吐いている。あっ、プシュっとされたなアレは。
駐機場から野球部の大仁田のARが飛び出すとライフルをバットの様に構えて近くの機械虫にフルスイングしていた。その横をサッカー部の本竹が駆け抜け別の個体にサッカーボールキックをかます。
うぅむ………薬を嗅がせて兵士に仕立て上げるなら別に俺達は必要無くないか?
物陰から飛び出して来た機械虫をライフルで撃ち抜きながら考える。AKを作らせていたのはここの奴らなんだよな?このまま流れで戦闘員になるのは何かマズい気がする……流されてる感じがして嫌だな………
「吉木、後ろが留守だぞ」
「お前適応早すぎだろ! プシュされて無いのに」
「されたくないから適応してるんでしょうが! 」
「しっかし俺達なんでいきなり兵士になってんだろうな? 俺達だけしか居ないって訳でも無さそうなのに。瞬が欲しかったみたいだけどただプロゲーマーだからってだけで戦わせるか? 」
確かに。うん? 向こうの物陰に居る先に展開していたARが何かこっち指差してる。通信か?コレかな……
「やっと繋がった! お前達! あのAK乗りの同級生だろ?! お前達も災難だな! 機械虫退治に駆り出されてよ! 」
先に展開していた部隊に激を飛ばされる。
辺りを見ると倒壊した建物にスクラップと化したAR、機械虫が惨憺たる様相を呈していた。
「座頭主任! あのAKの撃ち漏らしたのを掃除すりゃあ良いんで?!」
俺がコンソールを叩き付けて座頭を呼び出しながら叫ぶ。
「キミはAKプレイヤーだけあって察しが良いね。戦いながら聞いてくれ。この日を我々はずっと前から準備していた。もちろん大々的に周知して備える案もあったが、我々も1枚岩では無いのでね。ゲームを通して素質ある者を探して居たのだよ」
「なるほどそれで、コロニストーンを分かってやれる若者を探していたんですね?」
「キミは本当に話が早い。生き残ったらキミにもAKを用意してあげよう。」
しばらくして弾を撃ち尽くし、最後にはライフルを鈍器にして機械虫を叩き潰す。そうやって殲滅し終わってふと辺りを見回す。
俺達の住んでいた街並みがあり、店が立ち並び、人の行交いがあったと思われる広場には無残に焼け焦げたAR、深く抉れたアスファルト、そして点々と存在する赤黒い染みが広がる凄惨な場所と化していた。
AKF(アウェイクンキーパーフォース)立ち上がりし守護者の部隊 コトプロス @okokok838
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