春のように淡々と
いずミジンコ
第1話 フォローバックと初絡み
うちはその日、いつものようにTwitterを見漁っていた。同じ趣味を持つ人とつながってその話をしたかったからだ。
そこに君がいた。なんの面白味もないアイコンで、うちのツイートにいいねをする君が。
君に出会ってから退屈だった毎日に光が差し込むように、温かく色づいていくことをこのころのうちは知らないだろう。
最近うちには好きなキャラがいる。「パチワワ」というチワワのようでチワワではないよくわからない変なキャラだ。しかし、結構可愛いのだ。ラリってるが、大きいクリクリのお目目はとても愛くるしい。鳴き声は「キャウッ‼」といって小型犬らしくて可愛い。
パチワワは、Twitterで飼い主との4コマ漫画が投稿されている。うちは数週間前からこれにハマりグッズを集めている。ぬいぐるみにストラップ、スマホケースの裏に入れる用のステッカーなど買うものは様々だ。
まぁまだうちは高校1年生なのでお金がないわけで、欲しいのに買えないことが多い。
だから今、アルバイトの求人サイトを見ていた。割と時給の高いバイトを探す。いっぱいあって正直どれに応募すればいいのかわからない。.....とりあえず色々応募してみよう!多分落ちる回数の方が多いだろうしな。
応募しようとメアドを打っていると、ピコピコっとスマホの通知が鳴った。
スマホの画面の上側に目をやると、そこには『めいたん。さんがあなたのポストにいいねしました』と表示されていた。
「めいたん。...?相互さんじゃないな」
あっと思った。そういえば昨日繋がりタグを使ってツイートしたんだった。だから相互さん以外の人からいいねが来ても不思議ではない。
応募する手を止めてTwitterを開いた。通知欄の一番上にあるアイコンを迷わずタップする。なんのお面白味もない猫のアイコンだった。名前は「めいたん。」。
プロフを見てうちは胸が高鳴るのがわかった。
めいたんさんのプロフには『めいたんです。パチワワと犬とラブコメが好きです。同じ趣味の人はフォロバします。』
たったこれだけの文章、絵文字も顔文字もビックリマークすら使わないこの堅苦しい文章にうちは妙に惹かれた。趣味が合いすぎているのだ。
思わずめいたんさんの過去ツイを見返す。
めいたんさんは普段好きなのもについてツイートしているっぽい。パチワワ、犬、家で飼っている猫の写真、見たアニメのこととかだ。
まだアカウント作ったばかりなのか、21件しかツイートしていなかった。すべて見返してしまい、少しだけいいねを押した。急に全部いいねするとキモイって思われてブロックされるかもと考えたからだ。そもそもそんなこと考えている時点でキモいのだが。
急いで自分のプロフを少しだけ変える。パチワワが好きだということは書いていたが、もう少し同じ趣味が好きだよとわかりやすいように書き換える。
『最近パチワワにハマった高1。ラブコメが好きで今好きめがを見てる途中‼‼たまに愛犬の写真ツイートする』
......書き換えたけど、キモいな。フォロバしてほしいって意図がわかりやすすぎるか?まぁ大丈夫っしょ!多分...。
早速めいたんさんの事をフォローする。フォローが返ってくるよう祈りながらそっとスマホを閉じた。
母親の声で目が覚めた。お昼ご飯ができたと部屋に呼びに来たらしい。うちは覇気のない声で適当に返事をし、二度寝をしようと目を閉じた。そしてうちはまた眠りに─────落ちなかった。
スマホの通知音で体がビクッと跳ね上がる。ポコンっと鳴っていたからLINEの通知だろう。
ベットの上で転がったままの重い自分の体を起こしてスマホを手に取る。
夏帆からだった。夏帆とはうちのクラスメイトでよく話す仲のいい友達だ。
LINEの内容は明日一緒にカラオケ行こうというものだった。正直すごく行きたいが今は金欠なので行けない。それにもう少しでパチワワのイベントがある。そのためにもお金は貯めとかなければならない。
夏帆に断りのLINEを入れて、なんとなく寝てる間の通知を確認した。通知の時間帯を見るにうちは3時間程寝ていたらしい。2時間半前くらいにTwitterの通知が来ていた。
──めいたんさんからだった。 『めいたん。さんにフォローされました』と、書いてあった。
心臓が一拍遅れて動いた気がした。まじか!マジかマジか!!めいたんさんにフォロバされてしまった!!
「う、うわぁ。すっげぇ嬉しい...」
思わず声が出る。感情が抑えられそうにない。今にも踊り出しそうででもそこまでの体力はないのでベットの上でゴロゴロと悶えていた。
「春菜ー⁉︎まだ寝てるの⁉︎早く来なさい!」
母親の声で我に返る。そうだった、ご飯の時間なんだった。ベットから降りて部屋を出る。さっきの余韻はまだ残っていて、口元がにやけるのを必死に抑えながらリビングに向かった。
お腹が満腹になり部屋に戻ってきた。今日のお昼ご飯はパスタだった。トマトクリームパスタだ。とても美味美味であった。
うちは迷いもなくスマホを掴んでTwitterを開く。めいたんさんのアカウントを見て、フォローされていることを実感する。まだ若干余韻が残っていた。
「フォロバありがとうございますってDM送ってみてもいいかな」
相互になってすぐDM行くのはキモイか?最初はリプとかで話してからの方が自然か?
「うーむ」
画面をぽちぽちして送信ボタンを押した。
『初めまして!フォロバありがとうございます』
DMを送ってしまった。返信してくれるかと不安な気持ちでいっぱいだったがとりあえず違うことを考えることにし、スマホを机の上に置いた。
最近よく聴くこはならむちゃんの曲良いよなーとか、お昼美味かったなーとか、明日カラオケ行きたかったなーとか、パチワワの絵描いてみようかなとかをぼーっと考えていた。
とたん、机の上でスマホが振動した。めいたんさんかな?と思いスマホを見る。
『初めましてー。こちらこそフォロバもDMもありがとうございます』
返信きたぁぁぁぁぁぁあ!!やばい、ちょー嬉しい。素早く指が画面の上を滑った。
『返信ありがとうございます!趣味がすごく合うなと思ったのでとても嬉しいです!』
胸が高鳴って心臓がうるさい。胸の中で太鼓が鳴り続けているようだ。ついにパチワワ好きの友達ができるかもしれないと思うと興奮が抑えきれない。
『私も最初に投稿を見た時から絡んでみたいなって思っていたので嬉しいです』
嬉しさが弾けて、身体中に光が走った。
うちは多分そこから記憶が飛んだと思う。気がついたら朝だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます