うっかり死んだら異世界転生しちゃいました! でもここにはイイ男が全然いませーん! そんなところへ、ドSの王子様が現れました!

志村けんじ

第1話 うっかり死んじゃったら異世界転生

 もぉー! サイアクなんですけどー!


 学校の帰り道で、凍った橋を歩いてたら、前から自転車が走ってきて、それを避けたら足を滑らせて川に落ちて、気がついたら異世界転生してました。


 二月の寒いある日、高瀬巫琴タカセミコトは高校の帰り道、寒さに震えながら歩いていた。


 道には、昨日の夜に珍しく降った雪がしっかりと残っている。


 だから歩いている地面はツルツルなので、歩き慣れない凍った道を、そーっと、そーっと歩く。


 橋に来ると、またさらにツルツルだ。恐るおそる足元を見ながら、そーっと、そーっと歩く。 


「チリン、チリン!」


 自転車のベルの音がして、慌てて避ける。


「ツルッ」


 足が滑る。


「おっとっとっと……。ヒューン、バシャン!」


 川に落ちちゃった……。冷たい……。カラダ動かない……。沈んでく。アタシ、死ぬのかな……。


 気がつくと、あたしは水の外にいた。暖かい……。心地良い気温だ。ゆっくりと目を覚ます。


「ナニ此処!? あたしが居た世界ところじゃない!?」


 ビルが一つも立ってない、緑と草花の広がる、まるでゲームの中のような世界。


 後ろから大き過ぎる人影!? 絶対に人間じゃない!? バケモノ!? 


 無意識に右手のひらが前に出る!


 瞬間! 白い光の輪の攻撃がバケモノのカラダを粉々にする!


「なにこれ!? 魔法!? ……だよね?」


 よく見るアニメやゲームの中の魔法みたい。


「あたし……魔法使い? えーっ!? えーーっ!? どーいうーことなのーー!?」


 そういえばあたし、高校の制服着てない!? ローマ時代みたいな白のワンピースみたいなの着てる!?


 まわりには……誰もいないっか。取りあえず、夢かもしれないし、どっか歩いてってみよう。


 ワダチの残る土の道を歩いていく。これがバーチャルゲームならパターンとして、どこかの村とか町とかに続いてるはず。


 でもこれって、これから仲間とか集めていくのかな。でもあたし、「勇者」じゃないよね? こういうのはふつう勇者がやるもんじゃ……。


 村、見えた! やっぱりそうだよねー! 定番! 定番!


 さーて、どんなキャラクターの登場人物が出てくるのかなー。楽しみ! 楽しみ!


 さて、村の中はどうでしょう。


 これも定番だぁ! みんな見たことがあるような村人ばっかり。


 余裕ー、余裕ー。さーて、今日はどこに泊まろうかな。宿、宿ー。


「あのー、すみません。この村に宿はありますか?」


 その辺に歩いていたお爺さんに聞いてみる。


「あー。ありますな。どうぞこちらへ」


「どうもありがとう」


 宿まで案内してもらえるなんて、ラッキー!


「えーーっ!? 宿代かかるのーー!?」


 そりゃそうかー。ゲームでも金貨コイン必要だもんねー。


「またきまーーす!」


 えーーっ! それじゃ、今日はどこ泊まればいいのー。まさか初日から野宿はないよねー。


「なぁ。なんか困ってんだべか?」


 如何にもむさくるしい男が声を掛けてくる。


「あっ……いやぁー。結構です」


 ヤバい、ヤバい。こんな男に襲われたら大変! 


 走って逃げてきちゃったよー。


 あたしが魔法使いなら、魔法で金貨コイン出せないのかな?


「エイッ!」


 そっかー。そんな都合よく金貨コイン出せないよねー。


 大体、あたしどうやって魔法を出しているのかわかってないし。才能? もしかして才能! あたし天才だったりしてー!


 なーんて、自画自賛してるけど、今日どうしよー。ご飯食べたいなー。


「お腹空いたよー!」


「お姉ちゃん、お腹空いてんの?」


 これも定番、村人の少年が声を掛けてくれた。


「うん。お腹空いてる。ご飯食べさせて」


「おかねは?」


「じゃー、無理」


 えーーっ!? ここはご飯をご馳走してくれるところじゃないのー!?


 話が違うんですけど!?


「じゃあさ、お姉ちゃん、なにができんの?」


「魔法……かな」


「どんな?」


「どんな? そう聞かれましても……」


「じゃあさ。これ直してよ!」


 少年が壊れた馬のおもちゃを出してくる。


「こ、これを直せばいいのね……」


 この壊れた馬のおもちゃに両手を当てて……。直れー、直れー。


 あっ、なんか温かい電球の灯りみたいなのが出た!


 あっ、なんかバラバラで壊れてたのが直ってく。そのまま、直れー、直れー。


「直った! これでどぉ?」


 でも、ちょっと疲れちゃったかなー。これが魔法力を使うっていうやつー。


「凄いよ、お姉ちゃん!」


「じゃあ、ご飯食べさせてー」


「うん。いいよ! 家においでよ!」


「ところで少年、名前は?」


「ポタ。 お姉ちゃんは」


「あたしは巫琴ミコトだよ!」







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