第2話 節足動物
あの後、本当に歩く事が出来ました!アドレナリンさまさまです!けれどまだ走れません。
「あのー、すいません。この場所ってなんです?」
「ここはセパト遺跡というところだ。古の人々が作ったとされるが、それくらいしか私には分からん。殆ど謎の古代遺跡だな」
「へぇー、謎の古代遺跡ってなんかロマンありますね。ワクワクします」
「………お前もその口か?」
「へ?」
「いや、なんでもない。まぁ、謎だらけも無理もない。斬っても斬ってもロボット共は湧き続ける危険な場所で調査など不可能に近いからな。我が国の精鋭部隊でも良くて1週間くらいが限界だろう」
その迷宮を一人で来てるアリアさんは何者なんでしょうかね。さっきからロボットが感知する前に攻撃して真っ二つにしてるんですけど。ついでに助けた時と比べ、やや光が弱い(省エネかな?)から多分、本気じゃない。
「どうした?そんなに見つめて」
どうやらずっと見てたのがバレたらしい。
「いえ、なんでそんなに強いのか不思議で」
「ああ、それはこの剣のお陰さ。【煌剣ルクス】代々、アルヴァリア家で受け継がれてきた家宝だ。身体能力を上げたり雷を纏えることが出来る」
剣身は鏡のように滑らかで、鍔には西洋風なデザインに加え中心に青白い宝石が嵌め込まれてる。とてもかっこいい。
「すっげー!!俺もその剣持てば雷出せるの?」
「残念ながら煌剣はアルヴァリア家の血筋を持つ者しか扱えない。それに扱えた所で負荷に耐える強靭な肉体が無ければ死ぬ」
「死んだ実例があるのか?けどやっぱいいなー。かっこいいし」
「ふっ、皆同じことを言うな。女の私ではいまいち理解の出来ない事だ」
「えっ?じゃあなんで剣持ってんの?」
「………現在、アルヴァリア家の正当な血筋を持つ者は私だけだという話だ」
「あっ……」
「ああ、母は私を産むと同時に亡くなり。父は生涯、母以外を愛さなかった。だから父が死んだ後、正当な後継者が私しかいなかったのだ。」
「………すいません」
「気にするな。私が父の意志を引継ぎ当主となったのは私自身の選択だ」
そういってアリアはニカッと笑った。あらヤダイケメンだわ。
「ん?、どうやら話してるうちについたようだ」
「おお、やっとですか!怪我で1時間も歩いてクタクタで」
「3階層に上がる階段が」
「ふぁっきゅー」
◆ 弁当休憩を挟み3時間後~
外に出ると一面に広がる広大な世界!って訳でもなく
「なんも整備されてませんね。ダンジョンの出入口なのに夢が無い」
「お前は何を夢見てるんだ?」
俺はそうやって地面に落とされた。………はい、途中からアリアさんに片手で担いで貰いましたよ。ですがそれが何か!俺怪我してるんです!正当な理由があるんです!文句あります?
「ピュー。……しかし、男の癖に情けないなショータは」
「グハッ!?」
………とりあえずプライドと誇りと尊厳とプライドを捨てメンタルを回復した俺は立ち上がる。
全く整備されてないこの森を通るとして、迷わず出る事は可能だろうか?まぁ、あんな魔法みたいな剣あるんだし心配無──
「ひぃ!?」
俺は咄嗟にアリアの背中に隠れる。ヤバイヤバイ何アレ?何アレ?ていうか近づいて来る!!
「キャアアアア!!!!」
「本当に騒がしい。紹介しよう、森の案内をするダンゴムシのラヴィだ」
体長2メートルもある黒くて巨大な節足動物を前に俺は気絶した。
◆
俺は意外にも乗り心地が良いダンゴムシの背中に乗りながら思う。
「ダンゴムシって意外と可愛いですね」
プライドも誇りも尊厳もプライドも捨てた俺に怖いものなんて無い。見方によっては全然可愛いじゃないかダンゴムシ、なんかー、そのー、このつぶらな瞳とか?うん、なんか可愛いよ。
「そうだろう!特にこの子、ラヴィは触覚が愛らしいんだ。他の子と違って、短いのがポイントだな!その他にも~~~」
「ソウデスネ、キャー、カワイイ」
こうして妙に上機嫌なアリアとダンゴムシトークで、目的の専門家への道のりの時間を潰した。
◇2時間後~
「ばっかやろう!ラヴィの一番の魅力はこの甲羅の星の模様だって!『触覚の短さが良い』とかいうハンデを可愛いと思う思考が遺伝子操作して足の短いコーギーを生み出す悲劇の元なんだよ!あいつら自然で生きてけねぇんだぞ!」
「何を言ってるんだお前!ダンゴムシにとって触覚の短さはオスとして弱さの証とされる。けれどラヴィはその事にめげもせず努力し、他のどのオスより大きくなり成長したんだ!つまりこの触覚は可愛いらしさと同時に誇りでもあるんだ!」
「ばっかやろう!それはハンデを背負っても諦めなかったラヴィの精神が美しいし誇りであるだけでハンデがハンデな事に変わりねぇ!手足がない奴らがそれ自体を誇りにするか?しねぇよ!手足がもし再生出来るんだったら皆するわ!そんなもんに誇りがあるか!」
「それは例えがおかしいぞ!ラヴィの触覚の短さは男でいう身長みたいなものだ。手足が無いなどというレベルの深刻なものではない!お前はラヴィの触覚をそのレベルに捉えていたのか?それはラヴィに対して失礼ではないのか!」
「「ぐぬぬぬぬ」」
◇ごめん。まだ終わってなかった。
「着いたぞ」
森に囲まれた場所にある唯一開けた場所には、今にも崩れそうなボロボロの小さな家があった……。
「……ああ、なるほど!ああいう古い家が好みの人なんですね!」
「いや、単純に金が無いだけだ。ここでラヴィと待ってくれ」
そう言ってアリアはボロ屋に行った。なぜ待たないといけないのだろうか?ラヴィどう思う?んー、アリアにとってショータはまだ素性がしれないうんこだよ。良いうんこか悪いうんこか相談したいんじゃない?んー、流石ラヴィ賢い!撫でてやるよしよしよし!
「外骨格撫でても気持ちいいのか分からんけどな〜」
さて、待ってる間この世界について考えるか。それにしても、チグハグな世界だ。ダンジョンが未来的な事からきっと科学文明が崩壊し、新しく魔法文明が築かれたと思っていたのだが、移動手段が原始的であったり、始めて人が住む建造物は震度3でぶっ壊れそうなレベルだ。まだ全てを知った訳ではないが、ぶっちゃけ文明レベルが低い。だからこそ彼女の【煌剣ルクス】に違和感を覚える。一体全体どんな世界なんだ?
「古代文明が自ら科学の力で滅んだ世界である」
俺の耳元で、いきなりボサボサ頭の不審者がねっとりと囁いてきた。
「ぎゃあああ!!!気持ち悪っ!?」
「フハハハッ!!自己紹介をしよう!我輩の名はデヴィン・グレイダスト!空前絶後の天才考古学者である!!」
「………はぁ」
大変気持ち悪いが、とりあえず感情を抑え冷静に考えよう。考古学者、なるほど古代遺跡に謎に転移した俺を調べてもらうなら最適な職業だろう。だが、もうちょっとマシな人材は居なかったのだろうか。
いや別に、ちょっと変な人で鼻先がくっつくぐらい顔面を近づけて、息が荒くて、目が血走っていて、臭いからではない。
服もボロボロ、家もボロボロ、栄養失調気味な貧相な身体、このような状態の人間にまともな判断が出来ると思わないからだ。健全な精神は健全な身体に宿るのである。
「ほうほうほうほう!黒髪黒目の人間は北東民に見られる特徴だが、それにしては顔が薄くて背が高い。新種の人間か?実に興味深い!貴様は我輩のモルモット決定である!」
さて、皆さん。こうゆう時どうすれば良いか分かるな。はい、せーの
「アリアさーん!!ヘルプミー」
「任せろ」
その後、アリアは一瞬でデヴィンを組み伏せ、関節技を決めた。青白いエフェクトが無いので多分素の速さである。えっ、バケモン?
「ぐっはっ!?何をするかアリア・アルヴァリア!我輩であるぞ!?」
「………大変申し訳ないがどちら様で?私の方からでは顔が良く見えないのだが」
「貴様ァ!わざとであるな!わざとであるなこのクソゴリアぁ!!………あっ、ちょ、撤回するのである!ゴリアは撤回するのである!!だからそれ以上腕をあっ、ああああ!!!」
──ボキッ
デヴィンの腕があらぬ方向に曲がった。
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