第5話 割れ目
帰る途中のことだった。コンビニの横で、近くの中学校の制服をきた学生たちが話していた。『月曜日か...』私はふと気づいた。『そういえば...今日は学校だったのか...結衣は...今日はお休みだね。連絡も何もしてないから、先生たち心配してるかもね...』私は振り返って彼女を見た。彼女は、涙を流しながら私を見ていた。『誰も心配なんてしてくれない...!私が蹴られても!ノートを破られても!私がどれだけ泣いても!誰も心配なんてしてくれなかった...!誰も...誰も...!』
喉が塞がって声が出なかった。『叔母さんだって!ご飯もお水もくれなかった!目があっただけで何度も叩かれた!』
私は立ち尽くした。私は結衣の心を完全に崩してしまった。『だからもう...叔母さんに会って...夜景を見たら...もう私のことは...忘れてね!』彼女は涙でぐしゃぐしゃの笑顔で言った。その笑顔は、もう全てを諦めた笑顔だった。涙は溢れるばかりだ。それは、私もだった。彼女の死はもう目前だった。明日はもう彼女を見れない。もう、二度と会えない。『じゃあ...叔母さんに...挨拶しなきゃ...』彼女は力が入らない私の腕を取り、ゆっくりと歩き始めた。なぜ、結衣はそれでも私の手を引けるのだろうか。深い傷に、追い打ちをかけた私の手を。「……私も行く。行かせて。叔母さんのところに」
結衣は小さく震えていた。胸の奥で、何かが軋むように鳴った。
どうしてこの子が、こんな目に遭わなきゃいけないんだ。
絶対に――諦めない。彼女の周りに、そして自身にも猛烈な怒りが湧いた。『でも...叔母さん、怖いよ...?』震えた目は、『怖い』では表しきれない思いを私に投げつけた。私は彼女の手を強く握った。
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