第2話 自己紹介はインパクトに
兄との会話が終わり、新1年生のクラス分けが玄関前に張り出されているため、俺はそこまで1人で歩いた。
その間が長く感じる。
それもそのはず、在校生の人たちから視線が刺さる刺さる。
「だから兄貴と会話をしたくはなかったんだよな」
生徒会長ともめ事を起こした新入生。
そんな風に見られているんだが・・・本当に嫌になる。
そしてこれが、今度はあの生徒会長の弟って見られるようになって、
最後はあぁ~~~あの出来が悪い弟のことだろってなるんだろうな。
・・・何か、こんな考えをしている自分に中学時代は腹を立てていたが、今となってはもう諦めしかない。
だって、比べるだけ無駄でしかない。
兄貴は兄貴。
俺は俺なのだから。
って教室を確認しなくちゃな。
香田香田・・・・あった。1年2組か。
今日から通う公立光州(こうしゅう)高校は生徒の自主性を重んじる高校であり、
校風は自由でバイトOK・髪を染めるのもOKな高校だ。
ただ、成績が悪かったら罰則になるらしく、補修がめっちゃ厳しいんだとか。
だからなのか学校全体の偏差値は高めらしい。
部活についてはサッカーとバスケが強いんだと(ちなみに兄貴がサッカーね)。
1学年のクラスは
<普通科・7クラス、スポーツ科・2クラス、福祉・看護科・2クラス>
で構成されている。
地元の公立高校は規則に厳しい高校が多く、光州高校は緩めだからか、
倍率は地元の中では高いのだ。
「2組は結構近いな」
玄関から入って、階段を登ったすぐ右にある教室が1年2組だ。
教室を見た感じ、人はちらほらいるぐらいかな。
「席はここか」
俺の席は真ん中の前から3番目の席だ。
よかった。一番前じゃなくて。
「タツ。おは」
と俺に声をかけてきたのは、中学からの知り合いだった。
「おはようマサ」
「何だ?式が始まる前から疲れているみたいだが」
「俺の兄貴っていえば分かるか?」
「・・・そういえばお前の兄貴、朝から校門前にいたな」
「生徒会長だとよ」
「・・・大丈夫か?」
「あぁ」
コイツは佐島政宗(さじままさむね)。俺の唯一の友達だ。
コイツも家族関係で苦労してるらしく、休日に2人で愚痴大会をやるほどだ。
マサの家族についてはいずれ出てくる予定。
「お前のお兄さんは結構言ってくるけど、何かあったのか?」
「何にも。逆に俺が聞きたいぐらいだよ」
本当になぜか兄貴を含む家族みんなが俺に話しかけるようになったんだよな。
俺のような凡人なんてほっといてくれてもいいのにな。
とマサと雑談をしていたら、時間が結構経っていたみたいだ。
「新入生は廊下に出席番号順に並んで、体育館前に向かってください」
の合図とともに、俺たちは入学式を迎えるのだった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
入学式が終わり、教室に戻ってきた俺を待っていたのは自己紹介だ。
これが一番嫌なんだよな。けど、ここを乗り切って楽になりたい。
「タツ。自己紹介はどうするんだ?」
「おふざけ半分、ガチ半分」
「おふざけって何を言うんだ?」
「まぁみてろ」
と俺の番になったため、席を離れ黒板前に立った。
「香田龍也です。笹の川中学卒の誕生日は8月13日、血液型はO型です。
名字で気づく人もいるかもしれないので言いますが、さっき入学式で在校生代表挨拶をしていた生徒会長の実の弟になります。ただ、仲はいいわけではないので紹介とかはできません。手紙を渡してくださいとかもやめてください。以上です」
と自己紹介をするのだった。
政宗は「お前・・・マジか」って顔をしていて、それ以外の同級生は唖然って感じでし~~~んとなった。ただ、1人の女子がクスと笑っていたのにはあの子にだけウケたんだと完全スベリじゃないことに安どした。
この自己紹介はいわば一つの予防線だ。
中学時代に俺は兄弟のことを言った後から、
「ラブレターをお兄さんに渡してください」とか
「バレンタインのチョコをお兄さんに渡して」とかが多かったからな。
女子に話しかけられて浮ついた心がどんどん冷えていったのを思い出す。
ならば、最初から兄貴関連のものを貰わないように予防線を張るのが大事だと思い、
今回決行したってわけだ。
ただ、上級生とかほかのクラスの1年のことを考えると、
予防線は薄いかもしれんが、やらないよりはマシだろ?
「・・・この後やりづらいんだが」
「それはすまん」
それについては本当に済まない。
後でマサにジュースを奢る俺なのであった。
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次回が、家族との壊れた交流です。
龍也と恭平以外の家族が登場します。
この感じから、団らんとは程遠いですが。
次々回から学校生活がスタートしますが、一気にワープすると思います。
一気にと言っても、1・2か月ぐらい飛ぶ感じですね。
それと同時にヒロインも登場します。
次の更新は10/24の0時です。
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