第38話 聖女と生存費①
「ジュリエッタ様――リンに回復魔法を」
「ええ、そうね。待たせてごめんなさい」
回復魔法をかけると、動くたびに顔をしかめていた凛は驚いたようだった。
「お姉さん、強いのにヒーラーなの? 凄い……」
言われて気が付いた。ジュリエッタの聖女の力と、D端末でのジョブは何ら関係しないことを。
しかも名前すら教えてなかった。非常事態にしてもこれは酷い。
「ごめんなさい、私は
「ジュリさん、エリスさん、ポーションと回復をありがとうございます。あたし、 スピリットユーザーというジョブで精霊を扱うジョブなんです」
凛はそう言って自分のステータスを見せてくれた。
―――――――――――――
花井 凛 レベル/4 ポイント30
スキル/
体力:LvD
筋力:LvD
敏捷:LvE
防御:LvE
器用:LvE
走力:LvE
幸運:LvE
―――――――――――――
スキルもステータスもほぼ育っていない。
いつからカガリといたのか分からないが、この階層ではけして生き残れそうにない。
ジュリエッタの顔色を見て、凛も悟ったようだ。
「あの……お母さんと弟が戦えなくて……あたしがポイント貯めたら、二人に譲っていたんです。……カガリさんに会ったときも最初は家族分の生存費はくれてたので……」
最初は甘いことをいってそうやって取り込んだのだろう。
カガリとナオヤはまだセーフティゾーンの端で、芋虫のように転がっていた。
ジュリエッタは自分でポーションくらいは買える程度に痛めつけたつもりだったが、二人とも思ったよりひ弱だったのか泣いて地面を転がるだけだった。
見かねたエリスがまたポーションを二つ買って、それぞれにふりかけてやった。
「私たちのジョブは――その」
ジュリエッタが言いよどむ。エリスは問題ないが、ジュリエッタのステータスは混乱させるだろう。
「あ、あの。ステータスはグループ間でもよほど信頼がないと見せ合わないものですし、今回は私が勝手に見せただけですから、気にしないでください」
凛は素直ないい子そうだった。二人が言いにくそうな様子をすぐに察してフォローしてくれる。
「リン――あなた、おうちはこの辺なの?」
「はい……ええと、歩いて二十分のところです」
「何日、帰ってないの?」
「……五日くらいです」
カガリがそのあたりからポイントを強奪し始めたのだろう。
母と弟はどれだけ心配しているだろう。きっと、ジュリエッタが尋ね人を探すのと同じかそれ以上――。
ここに、王太子と親衛隊隊長はおそらく――いない。いない可能性が高い。
とどまっている場合なのか。二人がまだセーフティゾーンに居るからと言って、安心していていいものか。それでも――。
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