決別
「二層攻略、最短記録樹立おめでとう!」
ウガク達のパーティ“ガロウ”が四人で行動を始めて一年未満。
二層を突破した彼らが迷宮ギルドに戻ると、多くの職員や探索者に祝福された。
ガイツは自信に満ちた顔で、ロルマニも珍しく誇らしげな顔で、いつも無表情のウロラも照れた顔をしていた。
「本気になったお前さんは一味違うって証明できたな」
壁にもたれて一人で飲んでいたウガクに、ギルド長が肩を抱きながら呟いた。
「いや、あいつらが本当にいいパーティなだけさ」
ウガクは本音で答えていた。
これまで多くのパーティに属してきたが、これだけやりやすいパーティは初めてだった。
(ララとルルが消えなければ、オレたちもこんなふうになっていたかもな)
ウガクが独り言ちているとギルド長が続ける。
「もうわざと追放される真似もせずに、正式にやつらと組んでもいいんじゃないか?」
ウガクもそれは考えていた。
この三人と迷宮攻略に人生を賭ける。それはとても甘美な囁きだった。
ただ、その選択肢を選ぶための条件が整っていない。
「この三層で、探し物が見つかったらな」
「もういいかげんそういうのは止めとけ。逆にしろ、これまでと同じで何も見つからずに踏破したら、もう先に進め。……おまえ自身を、もう許してやれよ」
ギルド長は言いながら離れていき、代わりにガイツが近づきながらウガクに言う。
「ギルド長、なんて?」
「おめでとうだってさ」
「へえ、あの強面のギルド長でも人をほめたりするんだな」
「まあ、悪い奴じゃないんだよ」
ウガクは長い付き合いのギルド長とのやりとりを思い出しながら笑う。
「でさ、あの話、考えておいてくれよな」
それは二層踏破時にガイツがウガクに言った言葉の事だ。
『もし、ギルド記録最速で三層越えたら、この四人で正式に組みたい』
それは質問でも要請でもなく、天気の話をするような気軽さだったから、ウガクはその言葉の意味をすぐに理解することができなかったし、ガイツもすぐに離れて行ってしまっていた。
その後でこの話題は特に上がらなかったが、ガイツは本気で勧誘しているようだった。
「お前も物好きだね、こんな老い先短い年寄りと何年も続かんだろうが」
「じゃあ、あんたが動けなくなる前に、この迷宮を完全踏破するだけだ」
「二人は、なんて?」
「もうずっと前から、あんたと組みたがっているよ」
ウガクは、照れくさそうに告げるガイツの言葉に決意する。
「じゃあ明日から忙しいぞ。最速記録を目指すんならな」
そんなウガクのへたくそな笑みに、ガイツが満面の笑みで答える。
「ああ! ところで三層の最速記録って二十年以上破られてないんだろ? どんなパーティだったんだ? たしか“ウラル”とかって名前だっけ?」
「……全然大したことない、勢いだけの若くて無鉄砲なパーティだった。……オレたちの方が凄いさ」
それはウガクの、過去への決別の言葉になった。
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