第2話

 ゆきは、ケンが好きだ。彼は中学でサッカー部に入っていて、押されている時に限って「オッケー」と叫んで相手のコートに突っこみ、逆転ゴールを決めた。その姿がカッコよかった。

 中学を卒業する前に、付き合うことになった。高校と大学は別々だったけど、上手くいった。いつの間にか口癖が移った。大学受験、遠距離恋愛中、就職活動。不安なとき、ゆきも「オッケー」と強がるようになった。

 東京で就職して同棲生活が始まった。ひとつ屋根の下で、はじめての夜。

 「オッケーじゃないかも」

 ゆきが言うと、ケンが答えた。

 「……オレも」

 ふたりの目が合う。ゆきは前へ進めると思った。

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