第6話 学術都市の目録と騎士団長の罠

【リーサ】は、学んだばかりの防御結界術で追跡者の目を眩ませながら、王立学者団の本拠地に近い学術都市エルゼへと潜入した。街は知識と研究熱に溢れているが、その裏では王立学者団が厳しい情報統制を敷いている。


【リーサ】 「王都に近いこの場所が、最も危険...でも、【エリウス】様の指示なら。」


彼女の目的地は、都市の中心にある巨大な中央学術図書館。エリウスが若い頃、アルカナスの基礎となる古代文献の目録を隠した場所だ。


【エリウス(通信にて)】 「目録は、図書館の蔵書には紛れていません。私がかつて使っていた非公開の研究室の、特定の書架の裏に隠されています。アクセスには、私の過去のパスコードが必要です。」


【リーサ】は司書服に身を包み、堂々とした態度で図書館の重厚な扉をくぐった。内部は高くそびえる書架が迷路のように連なり、静かに紙をめくる音だけが響いている。


しかし、図書館に入った【リーサ】は、すぐに異様な気配に気づく。


読者や研究員に紛れて、王立学者団の私服の捜査官が多く配置されていた。彼らの視線は鋭く、獲物を待つ獣のようだ。


その中央、閲覧室の壮麗な柱の影から、【騎士団長】が現れた。彼は冷たい笑みを浮かべている。


【騎士団長】 「やはり、来たか。司書【リーサ】。いや、叡智の泥棒と呼ぶべきか。」


【騎士団長】 「我々は貴様を力ずくで捕らえるつもりはない。知識は力であり、知恵は罠となる。貴様が狙う場所は、既に我々の監視下にある。隠された研究室の場所は、既に特定済みだ。」


【リーサ】は内心動揺したが、それを表に出さないよう、平静を装う。騎士団長は、【リーサ】が動けば、即座に捕縛できるよう、図書館全体に魔力封じの結界を密かに展開させていた。


【リーサ】 「特定しているというのなら、なぜあなた方が先に回収しないのですか?知識を独占したいのでしょう?」


【騎士団長】 「我々は鍵がない。その目録の封印は、貴様の背後にいる叡智の源にしか解けない、特殊な術式で守られている。貴様が、その『源』からの指示で封印を解くのを待っているのだ。」


騎士団長の挑発に対し、【リーサ】は冷静に【エリウス】に状況を報告する。


【エリウス(通信にて)】 「【騎士団長】は、私の過去のプライドを利用している。彼が知らないのは、私にとって過去のパスコードは、単なる知識ではなく、遊び心だということ。」


【エリウス(通信にて)】 「研究室の扉を開けるためのパスコードは、図書館の最も古く、最も単純な蔵書です。そして、目録の封印を解くコードは、その蔵書の著者名を逆さにしたものです。」


【リーサ】は捜査官たちの監視をかいくぐりながら、最も目立たない場所にある神話と伝承の棚へと向かった。埃をかぶった棚の奥から、【リーサ】は、【エリウス】が言った通り、小さな蔵書を取り出す。それは世界の成り立ちに関する、古今東西の図書館で必ず扱われる一冊だった。


【リーサ】が研究室に入り、目録の入った箱の封印に触れると、【エリウス】に教えられた通り、蔵書の著者名を逆さにした言葉を静かに唱えた。封印はあっけなく解除される。


それを見た【騎士団長】は「かかった!」と叫び、魔力封じの結界を起動させた。


【騎士団長】 「動くな!これで貴様は魔力を使えない!騎士団、捕らえろ!」


しかし、【騎士団長】は動揺する。箱の封印は解かれ、【リーサ】は無事だったが、彼女の周りの魔力封じの結界だけが、静かに消滅していた。


【リーサ】 「残念ですね、【騎士団長】。この目録の封印には、【魔力封じ結界の魔力回路を吸い取る】という、隠された仕組みが組み込まれています。それは、【エリウス】様が悪意ある侵入者対策として設けたものです。」


騎士団長が罠に嵌まった隙に、【リーサ】は目録を回収し、第3話で学んだ隠蔽結界術を駆使して、騒乱の中で図書館からの脱出を図る。


【騎士団長】 「馬鹿な!奴の知識は、常に我々の一歩先を行く!...くそ、逃がすな!」


【リーサ】は無事、学術都市からの脱出に成功。回収した古代文献の目録を【エリウス】の元へ送る。


【エリウス(通信にて)】 「ご苦労様でした、【リーサ】。これで、次の『聖典の欠落』の場所と、その対処法が特定できます。目録によれば、次の欠落は、【古代兵器の魔力制御技術】に関するものです。」


【エリウス(通信にて) 「この知識を【教団】や【王立学者団】に渡してはならない。次の目的地は、その知識が隠された雪山の研究所。そこには、知識を守るための機械仕掛けの番人(ガーディアン)が眠っています。」


知識を巡る戦いは、ついに古代の兵器と機械仕掛けの番人を巻き込んだ、新たな局面へと突入する。

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転生した大賢者は二度目の人生を『不老の図書館』で送る 雲外蒼天 @okakidayo

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