第3話 古の砦と二重の防御(ダブル・トラップ)

リーサからの報告を受け、エリウスは図書館のシステムで外界の状況を解析していた。


【エリウス】 「予想以上の速さです。リーサがイムロスで『古びた病』を治癒したことで、王立学者団の追跡者と、教団の急進派が既に動き出しています。」


【エリウス】 「このままでは、リーサは知識の源を吐かせるために捕らえられるか、あるいは教団に抹殺されてしまう。彼女をすぐに図書館へ戻すことは、逆に彼らの注意をアルカナスに引きつけることになります。」


エリウスは決断した。防御システムを最大限に起動させ、リーサの追跡を妨害する知識を与える必要がある。


【エリウス】 「リーサの次の目的地は、『古の砦(フォートレス・アイン)』です。この砦は、私が大賢者として活動していた時代に、強力な魔導結界術師を育成するために築いた場所です。今は廃墟ですが、外部から見つけられないよう、二重の『認識結界』を施してあります。」


【エリウス】 「リーサには、その結界を一時的に解除する『解除の調律』の術式を渡します。そして、砦の深層に隠された『防御結界術』の知識を見つけ出してもらう。」


【エリウス】 「その知識があれば、リーサは追跡者を恒久的に撒く、自分専用の隠れ家を作り出せるはずです。」



リーサは夜陰に紛れてイムロスを出発した。彼女の背後には、王立学者団が放った熟練の追跡者(元騎士団長クラス)の影が迫っていた。


【リーサ】 「くっ、しつこい。あの治癒術式を使わなければ、こんな追われることもなかったのに...いや、あの少年...エリウス様が託してくださった知識で、多くの命が救われた。後悔はない。」


リーサはエリウスから送られた座標を頼りに、深い森の奥へと進む。やがて、彼女の前に、何もない空間が現れた。


【リーサ】 「ここが『古の砦』...何も見えない。これがエリウス様が言っていた『認識結界』。外部から砦の存在そのものを消している。」


リーサは、羊皮紙に書かれた『解除の調律』の術式を正確に詠唱し、魔力を込めた。すると、空気が震え、目の前に巨大な岩壁と、蔦に覆われた砦の門**が幻のように浮かび上がった。



砦内部は、静寂と埃に満ちていた。リーサは、エリウスの指示通りに地下へと続く階段を探す。


【リーサ】 「知識を得るには、ここを一人で進まなければならない...まるで、過去の偉大な術師たちが受けた試練のようです。」


地下深く、古い研究室のような場所の前に、厳重な魔力的な封印が施されていた。


【エリウス(通信にて)】 「リーサ、聞こえますか?そこにある封印こそ、二重の防御です。それは単なる鍵ではありません。あなたが『防御結界術』を学ぶに足る資質があるか試す『知識の試練』です。」


【エリウス(通信にて)】 「封印を破るには、現代では失われた**『調和の魔力回路』を復元する必要があります。砦の壁に刻まれた古い図像を観察し、失われた『調和の法則』を知識**として理解しなさい。」


リーサは焦りを感じるが、追跡者がすぐそこまで来ている。彼女はエリウスの言葉を信じ、壁の図像と、砦内部に残された古い文献を必死に読み解き始めた。彼女の司書としての知識、そしてエリウスから受け取った『知識の欠片』の経験が、この試練を乗り越えるための鍵となった。



数時間後。リーサはついに『調和の法則』を理解し、封印を解くための魔力回路を正確に描いた。封印は音を立てて消滅し、リーサは奥の部屋に隠されていた、古代の術式が書かれた分厚い巻物を発見する。


【リーサ】「これ...!これが『防御結界術』の知識!」


その時、砦の門を破って、追跡者である王立学者団の騎士団長が、数人の部下と共に現れた。


【騎士団長】 「見つけたぞ、司書リーサ!その手に持っている巻物は、国家の財産だ!知識の出所を白状し、我々にそれを渡せ!」


絶体絶命のリーサ。しかし、彼女の手には今、エリウスから託された、失われた『防御結界術』の知識がある。


【リーサ】 「いいえ、これはエリウス様の叡智です!渡しません!」


リーサは巻物に書かれた術式を瞬時に理解し、「知識」として自身の魔力へと変換する。そして、砦の通路全体を覆う、強固な『隠蔽結界』を展開した。


【騎士団長】 「何だと!?結界だと!?この程度の司書が...!」


リーサは結界の隙間から脱出し、追跡者たちを砦の迷宮の中に置き去りにする。彼女の次の目的地は、エリウスが次に指定した『古代都市の遺跡』。追跡を振り切るため、彼女の旅はさらに過酷になっていくのだった。

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