シーソーの上のピエロ

天使猫茶/もぐてぃあす

シーソーの上のピエロ

 夜の公園にギィ、ギィと何かが軋むような音が響いていた。

 一体なんの音だろう? 塾帰りの少年がそちらへと目を向けると、そこには古いシーソーの片側に座り一人で上下させている人影があった。

 よくよく目を凝らして見てみれば、それは遊園地にでもいるか、それかホラー映画にでも出てきそうな、ピエロの格好をした人物だった。

 なんでこんなところにピエロが? 好奇心に駆られた少年は、不気味に思う心を抑え込んでそのピエロに近づいた。


「なにしているの?」

「見て分からない? シーソー漕いでるの」

「一人で楽しいの?」

「楽しそうに見える?」


 ピエロに似つかわしくない沈んだ声を聞いて少年は首を左右に振る。

 それじゃあなんで? と尋ねると、ピエロはため息を吐いてこう答える。


「遊園地の仲間からはホラー映画の怪物扱いされて、ホラー映画に出てくる怪物のみんなからは人を笑わせるからって仲間外れ。だから一人で遊ぶしかない」


 なんでこんなことになっちゃったのかなあ、そう呟くピエロの顔は、悲哀に溢れた笑い顔だった。

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