第26話 フェリスの特殊スキル
「ああ、そうだ。良いこと思いついた」
なん……だ。
どうせ……。
ろくでも……ない。
こと……だな。
「右腕だけじゃ、物足りないよな? そうだろ?」
おいおい……。
何か……ヤバイぞ。
「だからよ。左腕、右足、左足をな、順番にこんがりと焼いてあげようって訳よ。どうだ? 俺は、優しいだろ? ヒャッヒャッヒャッヒャッ!」
右腕……だけでも。
激痛が……走るのに。
更に……追い打ちを。
かけるとか……。
マジで……イカれてやがる。
「さて、左腕だな」
「やめ……ろ」
「あーん、聞こえねえなあ」
ゼヒドは、俺の左腕を掴んだ。
「ほい」
俺の左腕が、炎に包まれる。
「ああああああああああ!」
左腕からも、激痛が俺を襲った。
やべー……。
痛みで……意識が。
飛びそう……なんだが。
「ヒャッヒャッヒャッヒャッ! こりゃ、いい悲鳴じゃねえか!」
応援は……まだかよ。
「次は、どっちの足が先だ?」
俺は……やっぱり。
ヒーローには……。
成れねえん……だな。
こんな自分が……。
情けねえよ……。
「ちっ、面倒だから、両足いっとくか。ヒャッヒャッヒャッヒャッ!」
レイン……。
お前じゃなきゃ……。
駄目……みたいだ。
助けて……くれ。
助けてくれ……レイン。
レイン……レイン……。
「来てくれ! レイィィィィィィィィン!」
俺は残る力を振り絞り、大声でレインの名を叫んだ。
「おいおい、いきなり大声出して、ビックリするだろうが。こんな所で助けを呼んでも、誰も来やしねえよ。ヒャッヒャッヒャッヒャッ!」
頼む……レイン。
来てくれ……。
レイン……。
「そんじゃ、お次は両足をやい――」
ドン! と鈍い音が鳴った。音がした方を見てみると……。見知った人物の背中が、俺の目に映った。
来てくれたんだな……レイン。
レインは一瞬消え、直ぐにリリーナを抱えて戻って来た。リリーナを、俺の傍に横たえる。レインの後方で、上から落ちて来たゼヒドが床に叩きつけられた。
「フェリス。今、回復するからな」
レインの回復魔法で、さっきまであった腕の激痛が消え、傷も一切残っていなかった。
マジでレインの回復魔法は、凄いっす!
「お兄ちゃん、ごめんなさい。強制転移のスキル……使っちゃった」
強制転移のスキルは、俺の特殊スキルだ。このスキルは、対象となる者がどこに居ても、強制的に俺の居る場所へ転移させる事が出来る。ただし、その対象となる人物はレインのみだ。
「フェリス。お前が危険な目に遭っているなら、決して使うのを躊躇うな。いいな」
「うん」
レインは、俺とリリーナの周囲に結界を張る。
「よし。少し、ここで待っていてくれ。あいつを片付けてくる」
「お兄ちゃん、気を付けて」
「ああ」
レインは背を向け、右手を挙げてヒラヒラと手を振った。
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