決意

眠い。眠い。とにかく眠い。

昨夜眠れなかった。おじいちゃんの言葉で少し現実に戻ってこられたが、ずっと上の空だった。

あの笑顔に吸い込まれる。

全てがどうでもよくなる、、、。


はぁ。。。

ため息がつい出る。

いつもよりゆっくり歩き登校した。

校門前で待ってる人がいる。

生徒指導の先生だろうか。

今日は2人いるのか?不思議に思うが思考が追いつかない。

足元を見ながら歩く。

いつものように校門を越えようとした。

途端、腕を引っ張られた。視界がグラつく。引っ張られてる方を見る。長い髪、褐色の肌、おおよその風格、間違いない。先輩だ。


校舎脇に連れてこられた。

心臓がダンスする。高揚からか息切れからか。

息を整える。

目を閉じながら、深く息を吐く。ゆっくり目を開ける。

先輩の言葉を待つ。

永遠にも思える時間が経つ。2人だけの世界で見つめ合う。

と、その均衡が破れる。

先輩が笑ったのだ。

照れ笑いだろうか、目を逸らしながら言う。

「思っていることは同じかな?」と満面の笑みを作って。まるで太陽のような温かみを持った笑みで。

僕はその言葉を飲み込む。最初はよくわからなかったが、飲み込むにつれ心臓の鼓動が大きくなる。

僕ははにかんだ。そして恐る恐る慎重に、掠れそうな細い声で言う。

「、、、好きだ。」二の句を継げない。

すかさず細い声を拾って、

「もっとはっきり言って欲しいなー。それとも女の子から言わせるのー?」

ハッとした。先輩を見る。小悪魔か、試すような目で見てくる。

再び深く息を吐く。よし!と気持ちを入れ直す。声が掠れないように咳払いをする。

「先輩が、先輩が好きです!」

言い切った。恥ずかしい。心臓が高鳴る。

後悔はないが不安で押しつぶされそうだ。先輩を直視できず、しゃがみ込む。手で顔を覆う。

ひと時の沈黙。息を呑む。

ふと左肩に何かが当たる。いい香りが漂う。

「言ってくれてありがとう。やっぱりそうだったんだね。薄々気づいてたよ。試してごめんね。

でも君のことよく知らないからなー。」

悲壮感。絶望。挫折。あらゆる悲しみと喪失感がおいし寄せる。その場から離れたい。そう思ってからすぐに先輩は今にも壊れそうな細い声で、

「いいよ。付き合おう!これからよろしくね」

絶望の淵に垂らされた一縷の糸のような、天からのお告げのように感じた。先輩は天使なのか?その細く優しいこえを頭の中で反芻する。

僕は顔を上げる。

先輩は笑ってる。

「あそこまではっきり言われたの初めて!これから君のこと知っていくね。合わなっかったらすぐ別れるからね!」

安心して力が抜けた。

僕はそのまま上体を倒し仰向けになる。安心した声で

「がんばります。」と一言言うのが精一杯だった。

雲から顔を出した太陽がものすごく眩しかった。




**********




もう5年になるだろうか。

線香の香りに身を包まれながら思い出す。

あの頃の出会いを。幸せを。

僕は思い出を紡ぐ。

今は大人しくお利口なその”小さな太陽”に。

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