魔猟師の誓い ―Re:Birth Code―
パパゴリラ
第1話
【プロローグ】
――魔力の灯る国で、ただ一人、魔を纏う。
朝の大和国・朱雀市。
空に浮かぶ魔力塔の先端からは、淡い青の光が街全体に降り注いでいた。
それは電線の代わりに街を満たす「魔力供給網」。すべての家、すべての道具が、魔石から抽出されたエネルギーで動いている。
人々はそれを当然のように受け入れ、魔晄炉の鼓動を聞きながら一日を始める。
だが――その力の裏にある「魔窟(ダンジョン)」の危険を、どれだけの者が理解しているだろう。
神威一(かむい・はじめ)は、今日も訓練場で息を荒げていた。
両手に握った魔鋼の双短剣を逆手に構え、模擬ゴーレムの装甲を一閃。
轟音とともに魔力障壁が割れ、粉塵が舞う。
教官の口笛が響いた。
「よくやった、神威! お前の《纏戦闘》、また精度上がったな!」
「……放出ができない分、近づくしかないんで」
ハジメは短く答え、汗を拭った。
手のひらから魔力がほとばしる――はずもない。彼の魔力は「外に出せない」。
魔術師にとって致命的な欠陥。
だが彼は、その不自由さを逆手に取ってきた。
体内で魔力を練り、筋肉・骨格・神経に纏わせて、身体能力を限界以上に引き上げる。
“纏戦闘”――魔を纏い、己を武器とする唯一の技。
その姿を、訓練場の隅から見つめる少女がいた。
皐月蒼。
制服の袖をまくり上げ、肩までのボブを揺らして、息を呑む。
「ほんと、危なっかしいんだから……でも、すごい」
彼女の唇に、微かな笑みが浮かぶ。
――もう一人、その光景を見つめる影があった。
防御魔術の練習を終えた如月命。
淡い銀髪をかき上げ、苦笑を漏らす。
「また無茶して……ハジメ、あのままだといつか本当に身体が壊れる」
放課後、夕暮れの魔塔が影を落とす校庭。
ハジメは一人、拳を握った。
この国に生まれた意味。
この力に欠陥を抱えた意味。
そして、かつて日本で見た「英雄たち」の姿。
――俺は、あの“ファースト”になる。
この世界の頂に立って、魔力の限界を超えてみせる。
魔力が世界を灯す時代に、魔を纏う一人の青年の物語が始まる。
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