第2話 一枚脱ぐごとに――力の解放と恥辱の狭間で

俺が戦いの現場で最初の一枚を脱いだ瞬間、何かが内側から目覚めた。

ジャケットの重みを脱ぎ捨てたその体で、視界の輪郭が鮮明になるのが分かった。まるで世界が今までより色鮮やかに見え、音もクリアに響き始めた。

脳裏にスキルの説明が甦る――全裸に近づくほど全ステータスが大幅に上昇。逆に着込むほど能力が下がる。その一枚目の脱衣で、俺の視覚と聴覚は研ぎ澄まされ、動作のキレが増す。たとえば壁のホコリすらわずかに動くのが見え、音の定位も正確になる感覚だ。筋肉もいくらか硬直がほぐれ、動きのロスが減った。これは確かな効果だった。続いて脱いだシャツ。

肌が露わになると、全身を血液が駆け巡る熱さを感じ、足腰に力が漲る。

俺の筋力と持久力は飛躍的に向上し、場内で拳を試しにぶつけただけで、壁にヒビすら入れた。

心の迷いも薄れ、恐怖心が小さくなっていく。精神的なタフさの底上げだ。ついに、俺は力を実感し始めた。しかし脱ぐことは簡単ではない。侮辱に耐える羞恥と恐怖が俺の心に鋭く刺さる。

毎度、脱いだあと俺は恥ずかしさに顔を赤くし、無意識に視線を避けた。次に脱いだズボンは、最も勇気が必要な一枚だった。

履き慣れたズボンを脱ぐと、足元が軽くなり、足の感覚が聖地のごとく鮮明になる。

地面の振動や微妙な地形を足裏で正確に感じ、敵の動きを直感的に察知できた。

瞬発力、敏捷性は格段にアップし、脚が魔法のようにしなやかに動いたのだ。だが、その効果に比例し、恥ずかしさもピークに達した。

「全裸でいるということは、ただ強いだけでなく、自分の羞恥と向き合うことなんだ……」

俺は力と恥のはざまで激しく葛藤した。そのたびに、ミーナが静かに励ましてくれた。

「シン、裸になることは強さの証明よ。恐れちゃだめ」俺は握った拳の力で答えた。

「わかってる。でも、恥ずかしい」それでも、俺は脱ぐことを続けた。

たった一枚脱ぐたびに俺は確実に変わり、強くなった。

心の弱さに打ち勝ち、全裸紳士としての伝説の第一歩を踏み出したのだ。裸の羞恥と戦いながら、俺は戦い続ける。

それが、俺の生き様だ――。

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