サンカヨウのような君
藤崎
サンカヨウのような君
・あらすじ
仕事の帰り道、雨の中神社の前で立ち尽くす女性を見かけた昂輝
女性は昂輝が目を離した一瞬の隙に姿を消していた
ひょんなことから会話を交わすようになった女性、カヨちゃん
彼女はサンカヨウの花から生まれた人間ではないなにかだった
1週間の寿命とされているサンカヨウ、日を追うごとに体調が悪く
なるカヨちゃん。
昂輝はそばにいることを選び仕事を休んで会いにいく。
・キャラクター
木闇 昂輝(きやみこうき) 男性 34歳 174cm
ごく普通のサラリーマン
カヨ 女性 見た目高校生くらい 155cm アンバーアイ
サンカヨウの花から生まれた人間ではないなにか
【以下本編】
昂輝M「ある年の、梅雨にしては雨が少なかった1週間、俺は忘れられない体験をした」
昂輝M「土曜日、21時、雨」
【仕事帰り傘を差して歩く昂輝】
昂輝「はぁ、疲れた」
昂輝「……あの人、こんな雨の中傘も差さずに。傘貸すか、でも急に声かけるのもなぁ」
昂輝「いややっぱり……って、あれ? 人が歩いた感じはしなかったんだけどな、幻覚? いや、人が消えたなんて、よっぽど疲れてるんだな。俺も。早く帰って寝よ」
昂輝M「日曜日、10時、曇り」
昂輝「やっぱり日曜の昼間は人が多いな、最近は帰りが遅くてスーパーに寄れてなかったし。……ん? あそこ、昨日も人立ってた。何を真剣に見てるんだ?」
【女性の方に近づいて覗き込む】
昂輝「んー? あ、かわいい花ですね」
カヨ「わっ!」
昂輝「あ、すみません急に、ずっと見てたから何があるのかと気になって。花、好きなんですか?」
カヨ「えっと、ごめんなさい!」
昂輝「え⁉︎ 逃げられた。そんな怪しいやつに見えたかな。学生ぽかったもんなぁ、こんなおじさんに話しかけられたら逃げるか。悪いことしたな」
昂輝M「月曜日、7時、曇り」
昂輝「はぁ、また1週間が始まった」
カヨ「あの……」
昂輝「はぁ」
カヨ「あっ、あの!」
【服を引っ張られる】
昂輝「うおっと、びっくりした。はい……あ、昨日の」
カヨ「昨日はごめんなさい!」
昂輝「え?」
カヨ「突然逃げ出しちゃって」
昂輝「あぁ、大丈夫ですよ。こちらこそ急に話しかけてすみません」
カヨ「許してくれるの?」
昂輝「許すも何も、怒ってないですよ」
カヨ「……お詫びしなきゃ!」
昂輝「え? だから大丈夫だって、怒ってないし何もいらないですよ」
カヨ「こっちに来て」
昂輝「ちょっと、どこ行くんですか。俺これから仕事行かなきゃなんだけど。引っ張らないで……力強いな!」
昂輝「こんな道初めて来た。……まだですか、目的の場所は」
カヨ「うん」
昂輝「さっきからずっと生返事なんだよなぁ。あぁ、会社無断で休んじゃったよー……」
【神社に入る2人】
カヨ「ここ」
昂輝「お、ついた? へぇ、ここの神社の存在は知ってたけど来るのは初めてだな」
カヨ「これ」
昂輝「ん? あ、これ、昨日も見てた? へぇ、白くて綺麗な花びらだな、昨日はよく見えなかった」
カヨ「ねぇ、お水持ってる?」
昂輝「お水? あぁ、持ってるけど」
カヨ「かけて」
昂輝「え?」
カヨ「このお花にかけて」
昂輝「わ、わかった。はい、かけたよ」
カヨ「お花、見てて」
昂輝「うん? ……あ、何で、花びらが透明に」
カヨ「綺麗でしょ」
昂輝「うん、すごい」
カヨ「サンカヨウって言うんだよ」
昂輝「サンカヨウ……」
カヨ「水分を含むと透明になるの」
昂輝「へぇ、初めて知った。え、これを見せたくて連れてきたの?」
カヨ「うん」
昂輝「君、学校は? 見た感じ高校生くらいだよね」
カヨ「学校?」
昂輝「訳ありって感じか……んーでも、こんなところにいていいの? ご両親が心配するんじゃない?」
カヨ「ご両親……」
昂輝「うん、親御さん」
カヨ「親御さん?」
昂輝「親御さん、お父さんとお母さん」
カヨ「私、お父さんもお母さんもいない」
昂輝「おっと、それはごめん。うーん、学校行かないならお家帰りな」
カヨ「……わかった、帰る」
昂輝「よし、じゃあ神社出ようか」
カヨ「また会える?」
昂輝「え? うん、会えると思うけど、大丈夫? 俺捕まらない?」
カヨ「捕まる?」
昂輝「俺、おじさんだし」
カヨ「おじさんだし……? どういうこと?」
昂輝「んー、まぁ、この辺に住んでるんでしょ? なら、タイミング合えば全然会えるんじゃないかな」
カヨ「そっかよかった、じゃあまたね!」
昂輝「気をつけてね。……またね、かぁ」
昂輝M「火曜日、21時、晴れ」
カヨ「おじさん!」
昂輝「うわっ! びっくりした」
カヨ「昨日ぶり!」
昂輝「あぁ、君か……って、え、1人? こんな時間に、もう外暗いよ」
カヨ「おじさんも1人? もう外暗いよ」
昂輝「ふざけない、危ないよ?」
カヨ「おじさんも危ない」
昂輝「俺は大丈夫なの」
カヨ「なんで?」
昂輝「なんで、って、うーん……ほら、こんなおじさん襲う人なんていないでしょ。君はまだ若いんだから、もしかしたら変な人に目つけられるかも」
カヨ「え?」
昂輝「あ、違う! 脅かすつもりはなくて! 世の中物騒だから何かあったら大変だなと……」
カヨ「そっか」
昂輝「そうそう」
カヨ「じゃあおじさん一緒にいて!」
昂輝「え?」
カヨ「これで私1人じゃない!」
昂輝「いや、違う!」
カヨ「んー? おじさん何してるの、こっちきて〜」
昂輝「あぁ、なんかドッと疲れが……」
カヨ「おじさんこっちー」
昂輝「はいはい」
【公園の敷地内に入る】
昂輝「なんで急に公園?」
カヨ「あれ乗ってみたくて」
昂輝「ブランコ? あ、そう。じゃあ、いってらっしゃい。おじさんここ座ってるから」
カヨ「え? おじさんも一緒だよ」
昂輝「えぇ、俺も漕ぐの?」
カヨ「レッツゴー!」
昂輝「おじさん今日仕事帰りなんだけど」
カヨ「はーやーくー」
昂輝「はーい」
【2人ブランコに乗りながら】
昂輝「お家は大丈夫なの? 出かけることお家の人に言ってる?」
カヨ「おじさんお家のこと好きだね、大丈夫だよ」
昂輝「そっか。うーん……君、名前は?」
カヨ「名前?」
昂輝「うん、名前。……ないの?」
カヨ「あ、あるよ! ある! えーっと、あっ、カヨ! 私の名前はカヨ」
昂輝「今思いついたような”あっ”が聞こえた気がするけど。カヨ、可愛い名前だね」
カヨ「え⁉︎」(喜び)
昂輝「え⁉︎」(びっくり)
カヨ「ね! 可愛いでしょ!」
昂輝「え、うん」
カヨ「えへへ」
昂輝「……今時の子はわからん」
【間】
昂輝「ブランコ飽きない?」
カヨ「飽きる?」
昂輝「ずっと漕いでるから飽きないのかなぁって」
カヨ「うーん、飽きない!」
昂輝「そうですか、でもそろそろ帰った方がいいんじゃない?」
カヨ「おじさんはもう帰る?」
昂輝「そうだね、明日も仕事だし」
カヨ「じゃあ私も帰ろーっと」
昂輝M「水曜日、20時、晴れ」
昂輝「はぁ、このまま横になって寝たい」
昂輝「え? 夜8時に真っ暗な公園でブランコを漕ぐ少女……疲れすぎてついに例が見えるように……」
カヨ「あ、おじさーん」
昂輝「(息を呑む)カヨちゃんか、びっくりしたぁ」
カヨ「今帰り?」
昂輝「そうだよ」
カヨ「お疲れ様です」
昂輝「ありがとう。君は相変わらずだね。もう20時半だよ」
カヨ「そうだね」
昂輝「ずっと公園にいたの?」
カヨ「ずっとじゃないよ、お散歩してた」
昂輝「そっか」
カヨ「あ、雨」
昂輝「そろそろ帰ろうか、強くなっても困るし」
カヨ「え〜、まだ大丈夫だよ」
昂輝「そんなこと言って、強まったら帰るの遅くなるよ」
昂輝「ほら、強くなってきた。公園の敷地内に屋根付きベンチがあってよかった、ちょっと雨宿りして行こう」
【遊んで雨宿りをして22時を回った】
昂輝「弱まらないねぇ」
カヨ「……私、そろそろ行くね」
昂輝「え、ちょっ! こんな雨の中行かせられないよ。もう少し待ってたら弱まると思うし」
カヨ「うーん」
昂輝「あ、でも時間的には帰った方がいいのか」
カヨ「またお家の話」
昂輝「君……カヨちゃんはさ、家に帰りたくないの?」
カヨ「え?」
昂輝「いや、家の話するの嫌そうだったし、帰りたくなさそうだったから」
カヨ「あー、うん。帰りたくない」
昂輝「はぁぁ、そっかぁ。まぁ色々あるよねぇ」
カヨ「いろいろ?」
昂輝「うーん、お家の人の言う事をうるさく思う年頃ってあるし、カヨちゃんくらいの歳だと家族と離れたいとか。まぁ、俺もそうだったし」
カヨ「ふーん」
昂輝「え、違った?」
カヨ「え? なにが?」
昂輝「帰りたくないって言うから、そういう理由かなって」
カヨ「よくわからない」
昂輝「んー、そっか。今日もこんな時間まで外にいて大丈夫なの?」
カヨ「大丈夫」
昂輝「あ、話してる間に雨も弱くなってきたしこれなら走れば……よし、行こっか」
カヨ「どこに?」
昂輝「ん? 俺の家」
カヨ「……え?」
昂輝「あ、いや! 変な意味じゃなくて! 雨で濡れたしこのままじゃ風邪ひくかなって! 理由は聞かないけど何か家のことについて悩んでそうだったから気分転換になるかなって! ジュースぐらいなら出せるし、っていうほんのおじさん心!」
カヨ「あははっ! なに必死。うん、行く!」
昂輝「俺そろそろ本当に捕まりそうだな」
昂輝「寒くない? もうすぐ家だから……」
カヨ「なあに?」
昂輝「いや、今カヨちゃんの左腕が透けて見えて」
カヨ「な、なに言ってるの! そんなわけないじゃん! 疲れてるんじゃない?」(少し焦りながら冗談ぽく)
昂輝「そっかぁ、やっぱり疲れてるんだなぁ」
カヨ「ちゃんと休めてないの?」
昂輝「まぁ、ゆっくり休めることはなかなか、ないな」
カヨ「そっか……」
【たばこ屋の軒先テント】
昂輝「あ、また降ってきた。ちょっとそこで雨宿りさせてもらおうか」
カヨ「あ、うん」
昂輝「急に降っては止んで強まって、相変わらずよくわからない天気だな」
カヨ「……あの、私やっぱり帰る」
昂輝「え⁉︎ 待って待って、もう少し待ったら弱まると思うから」
カヨ「でも」
昂輝「あ、俺タオル持ってたかも。確か、えーっと」
昂輝「あぁ、小さいのしかなかった。カヨちゃんこれでよければ……え?」
昂輝「あれ、いない。帰った? わけないよな。……カヨちゃーん! 誰もいない。急にいなくなるなんて……変わった子だなぁ」
昂輝M「木曜日、20時、曇り」
昂輝「見晴らしの良い一本道を見渡したけどカヨちゃんらしい人はいなかった。あの後考えながら気がついたら寝ていて、夢かと思ったけどしっかり現実だった……。カヨちゃん大丈夫かなぁ」
昂輝「あ! いた、カヨちゃーん」
カヨ「あ、おじさん」(元気がない)
昂輝「昨日大丈夫だった? 急にいなくなるからびっくりしたよ」
カヨ「うん、大丈夫。なにも言わずに消えてごめんなさい」
昂輝「無事ならよかったよ……なんか元気ない? 昨日雨に濡れたから風邪ひいた⁉︎」
カヨ「ううん、風邪ひいてないよ、大丈夫」
昂輝「そう? 何かあった?」
カヨ「あの」
昂輝「ん?」
カヨ「……やっぱり何でもない! おじさんはお仕事の帰り?」
昂輝「そうだよ」
カヨ「そっか、お疲れ様」
昂輝「うん、ありがとう。カヨちゃんは今日はなにしてたの?」
カヨ「私? うーん、お散歩かな」
昂輝「どこに?」
カヨ「どこ、この間行った神社とか?」
昂輝「そっか……。久しぶりに見たな、サンカヨウ」
カヨ「新しいのが咲いてたよ」
昂輝「この間のとは違うの?」
カヨ「この間のとは、違うかな。サンカヨウは基本1週間しか咲かない花だから」
昂輝「そうなんだ、短いんだね」
カヨ「うん……」(寂しげに)
昂輝「やっぱり今日元気ないね」
カヨ「そうかな」
昂輝「何かあった?」
カヨ「なにが?」
昂輝「俺でよかったら、何でも聞くよ」
カヨ「……おじさん」
昂輝「ん?」
カヨ「私、明日からはもうおじさんとは会えない」
昂輝「え?」
カヨ「理由は言えないけど、もう会えない」
昂輝「なんで、理由は言えないの?」
カヨ「言っても信じて貰えない、きっと」
昂輝「……サンカヨウの花が関係あるのかな」
カヨ「なんで」
昂輝「え、当たってる? よかったら詳しく聞かせてくれないかな」
カヨ「信じてくれる?」
昂輝「もちろん」
カヨ「本当に?」
昂輝「うん」
カヨ「……わかった、話す」
カヨ「おじさんはなんでサンカヨウと関係があると思ったの?」
昂輝「何となくかなぁ。サンカヨウの話をすると寂しそうな顔をするし」
カヨ「そっか」
昂輝「うん」
カヨ「さっき、話すって言ったけど……本当はわからないの」
昂輝「わからない?」
カヨ「自分が何なのか、あまりよくわからない。1週間前、気がついたらここにいたの。近くにサンカヨウが咲いていて、なぜかこのお花についてだけよく知ってた」
昂輝「気づいたら、ここにいた?」
カヨ「うん。自分が何なのかわからないけど、でもおじさんと同じ人間じゃないことは確かだよ」
昂輝「君は、サンカヨウの精……?」
カヨ「信じられないでしょ? こんな話」
昂輝「まぁ、話だけだと信じられないけど、俺は実際に間近で見てるからなぁ、いろんな不思議なこと」
カヨ「不思議なこと?」
昂輝「うん、1週間前の土曜日、君を見かけたんだ。ちょっと目を離した間に君はいなくなっていた」
カヨ「……そう、だったんだ」
昂輝「うん。カヨちゃんの今の話から行くと、あの時カヨちゃんは雨に濡れたから透明になったんじゃないの?」
カヨ「うん」
昂輝「離してくれて、ありがとう」
カヨ「信じてもらえた……」(涙ぐんだ声)
昂輝「もちろん、信じるよ」
カヨ「ありがとう」
昂輝「……じゃあ明日からもう会えないって、そういうこと?」
カヨ「サンカヨウって綺麗に咲いていられるのは1週間なの」
昂輝「うん」
カヨ「私、おじさんが初めて私を見たあの土曜日にこの姿になった、明日で1週間」
昂輝「……それって」
カヨ「朝目が覚めたら体の調子がおかしくて、多分明日にはもっと酷くなってると思う……そろそろ時間、なのかな」
昂輝「1週間経ったら、君はどうなるの?」
カヨ「わからない、消えるのかな、枯れるのかな」
昂輝「……明日も神社には行く?」
カヨ「なんで?」
昂輝「会いにくる、明日。最後まで隣にいるよ」
カヨ「おじさんお仕事は? 大人はお仕事行かなきゃダメなんでしょ?」
昂輝「仕事は休むよ、来週からまた頑張ればいいんだから、このまま別れて仕事終わりには君はもういなかった、なんて嫌だからね」
カヨ「おじさんはいい人だね」
昂輝「そうかな」
カヨ「そうだよ」
昂輝「……そっか」
カヨ「おじさんはそろそろお家に帰らないとなんじゃない?」
昂輝「帰りたくないな」(苦笑い)
カヨ「いつもと逆だ、いつもは私が帰りたくなかったのに、今はおじさんが渋ってる」
昂輝「本当だ」
カヨ「私明日もいるよ? 大丈夫、いなくならないよ」
昂輝「……わかった、明日またくるね」
カヨ「うん、待ってる」
昂輝「おやすみ」
カヨ「おやすみなさい」
昂輝M「金曜日、6時40分、曇りのち雨」
昂輝M「いつもより早く目が覚めた朝。最低限の身支度を済ませ、彼女の元へ向かう。神社に行くと1本の木に背中を預けて座っているカヨちゃんがいた。膝上が半透明に見えるくらいまで彼女の体は消えていた」
カヨ「あ、おじさんだ」(弱った声)
昂輝「調子はどう?」
カヨ「うーん、あんまり良くないみたい」
昂輝「……ジュース買ってきたんだ、お菓子も。一緒に食べよう?」
カヨ「食べてみたい」
昂輝「うん、食べよ。隣座るね」
カヨ「これ美味しいね」
昂輝「お口にあってよかった」
カヨ「いいなぁ、おじさんたちはいつもこれが食べられるの?」
昂輝「まぁ、買ってくれば食べられるよ」
カヨ「もっといろんな美味しいもの知りたいな」
昂輝「夜ご飯とか食べに行ったらよかった、ね。カヨちゃん、顔が透けて……」
カヨ「あ、……ちょっとずつ進んでるみたい」
昂輝「進んでる……」
カヨ「時間が迫ってきてる」
昂輝「それって」
カヨ「お別れだよ」
昂輝「……そうか」
カヨ「なんでおじさんがそんな顔するの?」(微笑む)
昂輝「ちょっと、寂しくなるなと思って」
カヨ「梅雨は毎年来るんだよ? お花もその季節になると咲く」
昂輝「……そうだね」
カヨ「ねぇ、おじさん」
昂輝「ん?」
カヨ「私、どうなるのかな」
昂輝「どうって?」
カヨ「消えるって、どんな感じかな。ちょっと怖いな」
昂輝「大丈夫」
カヨ「おじさんは、私と出会ったことは忘れちゃうのかな」
昂輝「どうかな」
カヨ「おじさんの記憶から私が消えちゃったら、やだな」
昂輝「……忘れないよ、ずっと覚えてる。来年、またここに来るよ」
カヨ「約束だよ?」
昂輝「あぁ、約束」
カヨ「私、おじさんと会えてよかった。またね」
昂輝M「優しい風が頬を撫で、そばに咲いているサンカヨウを優しく揺らす。目線を隣に戻すと、彼女はもうそこにはいなかった」
昂輝M「カヨちゃんと出会ったあの1週間は少し長めの夢を見ていただけかもしれない、と思うことがある。カヨちゃんの姿を写真に収めていないし、俺以外誰も会話を交わしていない。でも、あの日一緒に食べたお菓子の袋が捨てられずに残っているということは......。彼女との出会いは本物だったということだ。」
昂輝M「無断で仕事休んだのも現実だったしね」
サンカヨウのような君 藤崎 @fujisaki_mjkk
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