文藝ほのぼの講義

水菊静明

かでんのふしぎ

…次は、文藝部の皆さんです…


 お初お目にかかります。みなさま?わたくし、ただの高校生なのでございますが、ただの文藝部なのでございますが、ふしぎな体験によく会うのです。


 ちょっとだけ、お付き合いくださいませ?


 時は過ぎ去り件の卯月。4年ほど前なのですが、わたくし、某温泉地へ行脚しに行きまして。そこで、まぁわたくしも浮世の人間ではないので旅館に泊まるわけなのですが、まぁ、そこで、出会ってしまったわけなのでございます。


 と、言っても、まぁ、全然大したことではないのですがね(笑)。


 時は朝餉の大衆食堂…ではなく、朝日舞い込む自室部屋…なのでございますが、あの、テレビって…、ご存知?ですよね(笑)。えぇ、そのテレビでございます。なんでも祖母は知らないものですから…。


 さて、こちらのテレビは当然自室部屋にもございましてね?そちらが少し変だったんです。


 そして伏線となりましたかどうかはわかりませんが朝餉の大食堂。満を持しての登場でございます。我々がそちらに行って自室部屋を留守にしていたときのことでございます…。


 朝餉を済ませ帰還せし我々、とっても驚きました。なぜかと言いますと、そのテレビが、なぜかついていたからなのですよ。それに、とてつもなく大音量。それこそ、廊下まで聞こえていて頭おかしいったらおかしいったら…。


 まぁ、それだけです。えぇ。それだけ。別になんてことございませんでしょう?ですけれど、わたくしビビリなもので…、とっても驚いてしまいました。原因も全くもって不明でしたから。それに、全くもって他は…、ただ何ともなく、ただテレビだけがけたたましく鳴り響いていたのでございます。


 なら、それはなぜなのか。実は、本題はここから。それについての答えが、なんとなくでたのです。ですから、みなさまにお披露目させてもらおうかな…?なんてね。思ったわけでございますよ。


 そんな本題に入る前に、もう一つだけ蛇足を踏ませてくださいませ?でもまぁ、似たようなものなのでございますが。えぇ。私のね?住まいの冷却器まぁ即ち俗世的にはエアコンなのでございますが…、が、勝手に夜中についたのでございますよ。何回も。


 はい!それだけです!…まぁ…は?とでもお思いになりますわよね…わかりますわかります。ですが、これからです。ようやく、本番ですよ。


 みなさま、掛詞って、ご存知でしょうか?まぁ…、一応蛇足を踏んでおきますと、掛詞っていうのは同じ音で意味の異なる言葉を一つに重ね合わせる修辞法ってやつです。一つの言葉に二つの意味を含ませることで、言葉の世界を広げられる…らしいわよ。和歌や浄瑠璃、謡曲などで多々見られる技法ね。


 さて、こちらの技法、先程のわたくしのお話に応用できるんじゃないかなっ…と、思いましたものでして…えぇ、それこそ、このお話の本番なのでございますよ!みなさま!


 …先ほどの2つのお話…即ちテレビとエアコンで御座いますね…の共通点、何で御座いますでょう?…そうですね。どちらも音が普通の時より大きくなる→即ち音量が大きくなる…!!…で、御座います。


 ここでわたくし思いました。あれ…?これ、「音量」と「怨霊」の掛詞なのでは…?と。まぁ、心霊に結びつけるためにゴリ押しで思いついた理論なのでは御座いますが、まぁ、想像してみて下さいませ?「怨霊」が「音量」を大きくして「怨霊」の「音量→即ちパワー?力?」を大きくする…。そう、思いませんか?それに、なかなか面白くはないでしょうか。わたくし、ここで決めました。この掛詞理論でいけるところまでできる限り「怨霊」について考察してみると…そう!これこそが我が本題なのでございますよ!というわけでやっとこさ、我が文藝部in新入生歓迎会Special…開幕で御座います!!!



 というわけで、始めて参りますね。まず、音量=怨霊であることはおわかりいただけたかと思います。ここでみなさま…ちょっと…あれ?ってお思いになるところ…ありますかありますよねぇ…!!「音量→即ち霊的パワー」を少なくしていくと…「0」つまり、「零」=「霊」になりますわよね…ここで…わたくしははて?と思いました。なぜならもう、おわかりになられている方もいらっしゃるかと思いますが、「音量」=「怨霊→即ち霊」なのです。もう、おわかりですね。


 そうです。この理論ですと、「音量0→即ち「零」」=「霊」理論も成り立ってしまうのです。これはおかしい。そう思ったのもつかの間…わたくし、調べました。「怨霊」と「霊」の違いを…


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講義台本:

掛詞で怨霊を考察

音量=怨霊→音量が大きくなるほど怨霊=呪い?も大きくなる

でもこの理論を使うと霊=零=0

→音量がなくなっちゃう=呪い?も消える…?

結論→「音量」=「怨霊」

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 で、「怨霊」と「霊」の違いが判明したのですよ…!!端的に申し上げますとね、「恨み」があるかないかなので御座いましたの。あ、「怨霊」が恨みのある方で御座いますよ。即ち、ここにおける「音量」とは「恨みの量」だったので御座います…!まぁ、こうなると今までの私の言ってたことがよくわかってくるかと思います。「怨霊」の「恨みの量」が大きくなるほど「恨みの量」は「音量」となってわたくしたち現実世界(…というかわたくしたちの見ている世界)に現れてくると…!それがわたくしのだした最初の結論なので御座いますよ。


 それではお次に参りましょう。先ほどのお話は「恨み」がkeywordで御座いましたね。でしたら今度は、「恨み」についての掛詞を考えよう!わたくしはそう考えたので御座います。そして、出てきたので御座います。掛詞。


 そんな言の葉達はこちら→「浦見」「裏見」で、御座います。うーん…ぱっと見、関連性がありそうですよね。どちらにも「見」の字が入っていますし。…伏線っぽく言いましたが「見」の文字はわたくしの考察とは全く関係なく関係あるのは言の葉達の意味になるので御座います…。「浦見」は基本的に海を眺めること。(実は昔から浦見=恨みの方程式はあるのですが割愛…わたくしが発見したことにしたい!)そして、「裏見」ってのは滝の裏側から見る滝のこと。だいたい。(魚の裏とか裏の人とかいう意味もあるらしいけれどやっぱりこれも割愛…わたくしの説に不要…!!めんどい…!!)


 さて、ほんとうに気づいてほしいのはこちら→2つとも「水」に関連している言の葉、ということなのですよ。…ここでkeyword2つ目、「見ず」の登場で御座います。「見ず」は、「水」の掛詞だと、わたくし判断致しました。いきなり動詞?とお思いになられるかと思います。でもまぁ…、この掛詞が表すものこそ動詞なのでわたくし的には気にしておりません。わたくしが提唱したいのは、「見ず」即ち、「この世を見ず」なのではないかということです。…この辺はまぁ良い話ではないので割愛しますけれど、「裏見」「浦見」「恨み」「水」「見ず」…入水の暗喩ではないでしょうか。水辺で、恨みが募り、この世を見ることはもうない。…ね?


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講義台本:

「怨霊」と「霊」の違い→「恨み」があるかないか

「恨み」=「浦見」「裏見」→どちらも「水」

「水」=「見ず」…なぜか動詞。ゆるして

「恨み」「裏見」「浦見」「水」「見ず」

→水辺で、恨みが募り、この世を見ることはない

                 →入水の暗喩

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 …、さて。ここまでで、「水」までたどり着くことができました。…あ、ここからはいい話ですよ?って…えっと…あっと…、えぇえぇ…その…いい話っていうか…あっ…これだ前向きになる話です!えぇ。はい。


 水は、蒸発していずれ天にのぼるもので御座います。これは、怨霊や霊にも通ずるものではないでしょうか。えぇ。地上から解放されること、これはほんとうは水が蒸発するようにあたりまえのことなのではないでしょうか。えぇ。きっとそうですよ。前述したようなことを起こしたような方であっても、水が天に連れて行ってくれる…。だとすると、水はほんとうにいろんな意味を持つ字ということになりますね。まぁ…、それを決めたのはわたくしたち人間で御座いますから、気づいた人が神代の時にでもいたのでしょう。


 …。失礼致しました。掛詞、登場しておりませんでしたね?ここから、全速力でお届け致しますよ!さて…、水がたどり着いた先→「天」です。はい、はてまたkeyword「天」で御座います。「天」の掛詞は…、「転」「店」「点」といったところで御座いましょうか。えぇ、これもまた、わたくしの説の良い裏付けとなるので御座います…。


 …結論から申し上げますと、こうです。「転」は恨みが光に変わる→即ち浄化。「店」はまぁ…「転」と似たようなものですけれど、恨みを通貨とし浄化を売る、なんて訳しましょうか。最後、「点」はそのまま。天の役割極楽地獄の点数付けなのでしょう。このように、「天」という言葉は訳すことができるのではないのでしょうか。…あ、時間そろそろなくなってきたので駆け足で参りますね。というか参ってます。


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講義台本:

「水」→いずれ蒸発し天にのぼる=循環する

    →怨霊や恨みも同じようなもの!

「天」=「点」「店」「転」

「転」=恨みが浄化へ変わる

「店」=恨みを代金に浄化を売る

「点」=極楽地獄の点数付け

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 …さて、これまででようやく、地上から天への里帰りのお話をいたしましたね。…ですが、まだ、ございますよ。水は…、また、もどってくるものです。えぇ。雨→川→海→蒸発→天→雨…なのです。この順なのです。まぁわたくしド文系なので詳しいことは理系の方にお任せしますけれど…、まぁ、間違ってないはず!…さて、ここまできて、まだ登場していない要素が、御座いますね?そう。「雨」で御座います。「雨」にだって、有るので御座いますよ。掛詞が。


…文藝部の方、残り時間もう少しです…


 …わかってますわかってます…。…割と余裕ねぇな…。あ、では、こちら。「雨」は「飴」の掛詞だとしました。もちろん、「天」も御座いますけど、まぁこの辺は以下略です。「飴」…みなさま、何をご連想なされますでしょうか?まぁ…わたくしは飴といえば、「なんかべたべたする甘いやつ」なのですよ。ここから連想しただけのことなのですが、「雨」もなんか、べたべた致しませんか?(笑)このことからわたくし、こう考えました。このべったりしている水…これはつまり、天の汚染水なのではないか、と。先ほどの理論に当てはめて言えば、天は恨みから浄化を生成する場所。廃棄物が出てきても、なんらおかしく御座いません。その廃棄物こそ、「雨」なのではないでしょうか。「神の涙」なんて表現も御座いますしね。


 一方で、もう一つ天から降り注ぐものがありますよね?そう。「雪」です。こちらは先ほどの「雨」とは対照的なものだと感じます。「雪」=「幸」ですからね。こちらは「幸」なのですから、浄化物なので御座いましょう。視覚的にもわかりやすいかと存じます。「雪」で世界が真っ白になる…これ即ち、世界が浄化されてゆくことと同義なのではないでしょうか。


 …「真っ白」即ち「白」にも掛詞が御座います。「白」の掛詞は、「城」と「代」で御座います。「城」は、外界の汚れからわたくし達を守ってくれるもの。そして「代」は…、恨みの「代わり」なんて訳し方はどうでしょう?このように、「恨み」と「水」は循環してゆく…、このことこそ、わたくしのお話のまとめで御座います。ふふっ…しまりが悪くて申し訳御座いませんね。


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講義台本:

雨→川→海→蒸発→天→雨…→水は循環する

「雨」=「飴」→べたべたする…

        →浄化を生成した時の汚染水?

「雪」=「幸」→汚染水ではない!

        →世界を真っ白に浄化する

「白」=「城」「代」

「城」=外界の汚れから守る

「代」=恨みの「代わり」

→このように「恨み」と「水」は循環する

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 このように、わたくし達文藝部は毎週水曜日と金曜日、何処かでひっそりほのぼのと活動しています。興味があったら、是非、来てくださいませ?このような語りでも、小説でも詩でも短歌でも戯曲でも(なんなら外国語でも)大歓迎でございます(なんなら読み手Onlyでも…)。それに新入生歓迎誌も、絶賛配布中で御座いますし。というわけで、なにはともあれ、是非、お越しください!


 …あ、ちょっと話し忘れたことがっ…えっと…、わたくしの名前なので御座いますが…


…文藝部の皆さん、時間切れです。マイクを返してください…


 あっ…ちょっと…これだけ話させてくださいましっ…ちょ(マイクの電源が切れる音)


…文藝部の皆さん、ありがとうございます。続いて、華道部の皆さんです…


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講義台本:(時間なさげなら最悪カットよき)

わたくしの名前→「上月幸」

「上」=「神」…ちょっとおこがましいかな…、

「月」=「尽」「憑」

「尽」=「神」がいなくなってしまうこと

「憑」=「神」がわたくしに取り憑くこと

「幸」=その名の通り幸せになること

→神が尽きて幸せに

→神が憑いて幸せに  …この対比、いったい何?

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