売れない。だから、捨てる。

エリー.ファー

売れない。だから、捨てる。

 私のペットショップには猫がいる。

 不細工だ。

 正直、全く売れる気配がない。

 けれど、私は好きだ。

 だから、これでいい。

 売れて欲しくないのだ。

 私の中で、売れて欲しい猫と売れて欲しくは猫の差は明確にある。

 額に傷があるかどうかだ。

 その不細工な猫にも額に傷がある。

 もはや、その傷の方おが大きく顔はおまけでついているような感じがするくらいである。

 私は、猫が好きではない。

 あくまで、その猫が、そこにいる猫が、あちらにいる猫が、そうそう、そこの猫が好きだ、というだけでしかない。

 大きな括りで、何かを好きになる人間の気持ちが全くと言っていいほど理解できない。

 あの考え方は何なのだ。親の教育がなっていないのか。それとも社会というものが人間の構成要素をデザインする時に間違えたということなのだろうか。

 とにもかくにも。

 私は、日々、理解に苦しんでいる。

 というわけで。

 もう一つ、別の話をしよう。

 私は、猫を殺すことがある。

 本当だ。

 私に殺される猫には、ある特徴がある。

 尻尾がないのだ。

 私は、尻尾のない猫は必ず将来不幸になるという持論がある。

 そのため、その猫のためにも、殺してあげるのが幸せなのだと思っている。

 いや、信じている。

 いやいや、確信めいた何かを自分の中に抱えていると言っていい。

 私は猫なんてものに、自分の人生をコントロールされたくはないと思って胃が、気が付くとこのようにして、私は猫に彩られた人生を生きている。

 これは、何なのだ。

 何がおかしくて、こんな人生なのだ。

 額に傷のある猫のことが大好きで、尻尾の無い猫を殺して生きる。

 こんな人間が、地球上のどこかにいたとしたら、同じような思考なのかを聞いてみたくなる。

 私は、私のために、今があると思っている。

 猫の鳴き声で時間が消費される度に、この時間は、私が猫に貸し出したものであって、死んだ後に利息を付けて返してもらえると本気で思っている。

 その利息が結果として、私の寿命を延ばしてくれるのだと、考えている。

 これが宗教なのか。

 私の中に生まれた、神の言葉なのか。

 私は神なのか。

 このペットショップに閉じ込められた神という私の証明になるのか。

 いつか、このペットショップは金になる。

 そして、私は億万長者になる。

 その前に、既に神であるわけだが、この状態が長く続かない。

 何故なら、神に金は合わないからだ。

 金を持った神は腐っていく。

 猫に囲まれている神は幸せになる。

 人類を救う。

 私には、時間がある。

 時間だけなら、腐るほどある。

 その時間を上手く使いこなすための金はない。

 でも、絶望もない。

 私は、ペットショップにある、ありとあらゆる扉を開き、猫を逃がしてしまう。

 そのせいで、街には猫が溢れ返り、街は猫が済む世界、キャットワールドとして有名になる。

 いつか、ではない。

 今、この瞬間。

 私は、そんな場所で生活を始める。

 このままずっと続けばいいと本気で願っている。

 いや、嘘だ。

 すべて妄想であってほしいと思っている。

 そのうち、私は結婚をする。

 いや。

 結婚をした。

 そして、キャットワールドが生まれることはなかった。

 ある日、私は去り。

 ペットショップもなくなり。

 皆、幸せになった。

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