Ego//Breaker
@Teromea000000
第1話 彼ハ刀ヲ抜キ、物語ハ始マル
第一話 彼ハ刀ヲ抜キ、物語ハ始マル
――記録者:対欲異能特殊制圧機関・特制局局長 西園寺頼次
発生から三年。
“想現大禍”と名付けられた大規模欲異能災害の爪痕は、いまだ東京に深く残っている。
その大規模災害の根源となったのが
人間の内にある“欲”や“感情”が臨界に達したとき、
理性を焼き切り、現実に干渉する異能として顕現する現象。
かつては「怒りで都市が崩壊し」「悲しみで群衆が溺死した」事例もある。
その果てに生まれるのが、“壊変体”。
欲に呑まれた人の成れの果てであり、人を超えた災厄だ。
対欲異能特殊制圧機関――通称、特制局。
我々は、欲異能を制御しうる唯一の手段“トリガー”を用い、
壊変体の鎮圧および発生抑止に当たっている。
“トリガー”とは、欲を抑え、制御するための擬似的な引き金行為。
感情を意図的に開放し、一定の儀式を介して力を限定的に行使する技術だ。
大変強力だがその代償は安いとは言えない
世界は確実に崩壊へと向かっている
だがまだその時ではない、誰かがこの世界の静寂を守らなければならない
――以上、現況報告。
寒い冬が終わり春が訪れるこの季節、4月の教室で行われる国語の授業は俺にとって最高の昼寝の時間だった。
授業の終わりを告げるチャイムがなる。
「もう!起きて〜!」
誰だ俺の惰眠を邪魔する奴は、教師だったら殴り飛ばしてやる
「せっかく同じクラスの隣の席になれたのに1時間目の授業からすることが昼寝?もっと他にあるでしょ!!」
この俺の横でなんだか喚いているのは
「桜…俺は今宇宙の始まりについて考えていたんだ、宇宙とは一つの生命、つまり宇宙は生きているんだ、そんな宇宙ですら生きているのに俺はなんたるだらけ具合なんだ、もう死んだ方がいいかもしれない、冬眠する…」
「もう冬は終わったんだから起きてよ!!次の数学の授業始まっちゃうよ!!!」
数学…それは俺の最も得意とする教科であり美学であり数学、少し起きるとしよう…
「いいか〜!この極限はこのnに1を代入することで簡単n…」
退屈だ…なんでこんな小学生でも解けるような問題ばかりやるのか数学の先生の頭をのぞいてみたいくらいだ、このあんぽんたんめこのままでは俺の頭すら使い物で無くなってしまう…ふと桜の方に目をやる、綺麗で長い黒髪、桜の花の髪飾り、とても良い姿勢で真面目にノートをまとめている、俺には勿体無いくらいの美人である。桜がふとこちらに気づく
「何見てるの?ゴミとかついてる?」
「いや…別に…」
視線を窓の外へと移す、外は満開の桜で花びらが舞っている、いい天気、最高の気温だ、だんだんと瞼が重たく…
4時間目終了のチャイムがなる
「悠翔くん午前中ずっと寝てたでしょ!!英語の授業とか指されてたけど寝てたから私に問題回ってきたんだからね!ほんと許さない…今日帰りスタボ奢りだから」
「まじかよ…今月もうお金ないのに…」
「まだ4月の4日ですよ〜、一体何に使ったらそんなにお金が無くなるの」
「今月推しがピックアップで…めっちゃ課金して…」
「はぁまた課金もう流石に呆れたわ…絶対お金貸さないからね!」
「ウユ…桜〜お弁当ちょうだい」
「はいはい…今日余ってたからトマト入れちゃったけど残しちゃダメだからね?」
トマトは嫌いである
「げ、まじかよ…え、ちょ、え〜…」
「あ!悠翔お前また愛妻弁当かよ羨まし〜」
「まじお前ら一年の時からずっとこんな感じだよな…非リアにイチャイチャ見せつけて楽しいか??」
こいつらは同級生のモブ1とモブ2こんな俺と仲良くしてくれる頭のいかれた奴らである
「ねーねー桜〜今日カラオケ行かない??」
「またあの3人で女子会しよーよ!!」
桜はこっちに視線を送りながら
「あ、ごめーん今日バイト先でちょっと外せない用事があって…あとこの私の隣にいる愚か者にスタボを奢らせなきゃいけないから〜」
「うわ〜桜また悠翔の物かよ〜」
「残念だわ〜次絶対あそぼね!!」
「…お前今日の卵焼きしょっぱくね?」
「えへ、今日塩いつもの2倍くらい入れちゃった」
昼休みの終わりを告げるチャイムがなった
今日も平和な1日だなと思った。だけどどんな時だって平穏はいつも唐突に終わりを告げる
ー放課後ー
授業中寝ていた罰として俺は桜にスタボへと連行されていた
「こないだ出たスタボの新作飲んでみたかったんだよね〜このアーモンドクリームスーパーベンティダイナマイトエクストラチョコソースベンティダイヤモンドベンティ…」
何か恐ろしい名前を唱えている魔法か何かだろうか
「え、なんだって?アーモンド…ベンティ…え?」
「だからアーモンドクリームスーパーベンティ…」
ドゴォン(爆音)!!!!!!
爆音と共に空気が重くなる
「何!?今の音」
「多分あっちからだ…」
音のした方を見てみると崩れた民家から黒煙が立ち上っている
「何があったんだろ…ちょっと行ってみよ!」
「え〜めんどっちぃ…」
「いいからついてきて!」
桜に引きずられながら現場へと向かう
壊れた家屋からは火が立ち上っていて、地面は割れ水道管が破裂したのか水が噴き上がっていた、周りには握り潰されたような跡がある死体がいくつか転がっていて、何かが焦げた匂いがする。その中にそいつはたたずんでいた…
「私が!私しかいないの…私が守らないと守らなきゃ私が!!」
両手で赤子を抱えながらボサボサの髪の女がそこに立っている、頬の部分が崩れかかっている
「ねぇあれ…壊変体だ…」
「……」
女(壊変体)の視線がこちらに向く
「あれぇ…ここら辺にいた人はみんな殺したはずなんだけど…もしかして邪魔しにきたの?させないよ〜あはははははははははははは私が!!私が殺すから!!!」
背中から2本の黒い大きな腕が生えてきた
「えぇ…これやばくない?悠翔くん刀抜く準備しといて、私もいつでも出せる…はぁせっかくスタボの新作飲めると思ったのになぁ…」
俺は竹刀ケースから刀を取り腰にかける。桜も薙刀をケースから取り出した
「え?もしかしてその程度のおもちゃで私のこと止めようとしてる?この私を!?止められるわけないじゃん!この子は私が守るんだから!邪魔する奴は全員殺しちゃうよ!!!」
黒い腕がこちらに向かってくる
右腕は桜が薙刀で左腕は俺が鞘付きの刀で受ける
桜と俺は10mほど後方に吹っ飛ばされた
「いてて…」
黒い腕の追撃がやってくる
俺たちを叩き潰そうとしているようだ
「桜!避けろ!」
桜はギリギリのところで交わした俺は壊変体の腕が地面についたと同時に壊変体に接近した
「くらえっ」
刀を振り上げ壊変体の眉間に打ち込んだ…が片方の腕で防がれてしまう
「悠翔くん!後ろ!」
背後から黒い腕のグーパンが飛んできた
「うわっ!」
なんとか刀で受ける…が掴まれ投げ飛ばされた」
「悠翔くん大丈夫?」
このままではジリ貧である
「桜」
「ん?」
「抜いていい?」
「…いいよ」
黒い手は再び俺たちに襲いかかってきた
「五十嵐流刀法・居合」
「2人まとめて死んじゃええええ!!!!」
「鎌威太刀」
この技は一本の刀の斬り付けと風による無数の斬撃で相手にダメージを与える技だ
黒い手に無数の斬撃が走るしかし壊変体の首を狙った斬撃は受け切られてしまう
「Re:Burst、嵐刃ノ奏手」
俺の周囲に風が巻き起こる
「チッ…お前も異能使いかよ虫ケラが…その程度の斬撃で殺せると思うなよ!この私を!!!」
壊変体の黒い腕が4本に増える
「男を殺せないなら先に女から殺してやる…」
「しねえええええ!!!!!!」
黒い腕が桜に襲いかかる
桜はつけている黒い手袋を取る、地面が凍りだす
「Re:Burst、久遠ノ調律者」
大きな氷塊が黒い腕を拘束する
「は??」
「悠翔くん!怪我ない?」
「こっちは大丈夫…桜は?」
「私も平気!久しぶりに能力使ったから少し疲れたけど」
桜がえへへと笑う
「なに…なんなんだよお前ら!!私が…私が守らなきゃいけないのにこの子を!!」
「悠翔くん…これなんだろ…」
「保護欲…とかじゃないかな…知らんけど」
「私の邪魔をするなああああああああ」
桜の作り出した氷塊の拘束が割れ始める
「わわ…これやばいかも」
「終わらせる…」
一気に壊変体との距離を詰める
「五十嵐流刀法・刺突」
「天穿」
突き出した刀が壊変体の頭を破壊する
「ぎゃああああああああああ」
悲鳴と共に壊変体の体が崩れていく…はずだった
黒い腕が俺の首を絞めた
「うっ…」
「残念でしたぁ!頭破壊したくらいじゃ私は死にませぇん存分に苦しめてあげるぅ私が!!!」
「悠翔くん!!」
「おい動くなよ女、次なんかしたらこいつの首の骨折っちゃうからぁ」
「くっ…」
「さぁてどうやって殺そうかな…」
パチパチパチ
どこからか手を叩く音が聞こえる
「いや〜ルーキーちゃんず、結構頑張ってるね〜入局試験必要かと思ったけどこれはいらないかな?」
桜の後ろから黒い傘を刺したマスクをしている綺麗な紺色の髪のツインテールをした少女が歩いてくる
「はぁ?誰お前、もしかしてこいつらの仲間?よくわかんないけどそれ以上動いたらこいつのこと殺しちゃうよ?」
首を絞める力が強まる
「ごひゅっ…」
「させるわけないじゃん」
パァン
銃声が響いた、見てみると少女の持っている傘の先端が壊変体の黒い腕に向けられておりそこから発砲したようだった。拘束が緩み俺はずるりと手から滑り落ちた
「いや〜でもよく頑張ったねルーキーちゃんず、あとは俺に任せてね〜」
「なんでこう邪魔が入るんだ…このクソアマあああああああああああああああああ!!!!」
黒い手が少女に襲いかかる
「バンッ」
少女が放った弾丸は壊変体が抱えている赤ん坊の頭を直撃した
「ああっ…」
壊変体が崩れ始める
「こ、こんなの…」
壊変体はゆっくりと崩れ落ち塵となって消えていった
「悠翔くん!!」
桜がこっちへと向かってくる
「幸い五十嵐悠翔の命に別状はないみたいだね」
少女が傘を差しながら近づいてくる
「待って!近づかないで…あなた一体何者なの?」
少女がニヤリと笑う
「おっと…これは申し遅れたね…俺の名前は双見葵、対欲異能特殊制圧機関・特制局に所属している。お前らを迎えにきてやったんだよ五十嵐悠翔、影森桜」
物語が動き出す音がした
「ふーん…五十嵐悠翔ねぇ…、これからとぉっても楽しくなりそう!キド!あなたもそう思うでしょう?」
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