第2話
午後11時、僕たちを乗せたバスは定刻通りにどこかのサービスエリアに到着した。
僕は迷わず降りる。深夜のサービスエリアは心地が良くて好きだ。時間を潰すためだけに集まった人々。希望と真反対の、何か、淀んだ空気が漂っている。それでも退廃的で絶望に満ちているかと言われればそうじゃない。無に満ちた、単なる生への通過点。
閑散とした室内の椅子に腰掛けて、セルフサービスの煎茶を一杯、ぐいっと飲み干す。お茶の通り具合でなんとなくわかる。腹の調子の雲行きが怪しい。出発前は完璧だったのに、今はどうもムズムズする。もちろん、この感覚はいつも当たるとは限らない。すぐ痛くなる場合もあれば、一日経っても腹痛が来ない時だってある。
ただ、今はそんな運任せなことはしていられない。僕は迷わずトイレに向かう。しかしどれだけ踏ん張っても、屁のひとつ出てこない。「なるほど。まだ顔を出したくないってか」僕は心の中で腹に問いかける。このまま朝までお腹の中にこもってくれれば助かるのだが。
5分ほどトイレで粘ったが、進展はなかった。腹は違和感を抱えたまま、何も吐き出さない。本当に困ったやつである。バスの休憩時間は15分と決められているので、そろそろ出なくてはならない。とりあえずコンビニに寄って、整腸剤を購入することにする。これで何とかなるだろう。トイレの感じでは、次の便意は早く見積もっても3時間後だろう。その頃には寝ているだろうし、寝ていなくとも次のサービスエリアでもう一度トイレに行けばいいだけの話である。
水で錠剤を2つ流し込む。勇敢な戦士達が、僕の胃を優しく整えてくれるに違いない。これで安心して寝ることができるはずだ。
バスに戻ると小栗はもう寝ていた。他の乗客もちらほらと眠りに付き出している。
しばらくして、運転手が人数を確認し始める。僕をカウントしたのを確認してから
、もう一度、ふかわりょうのラジオをつける。
BGMも、お便りのコーナーもない、謎めいたラジオ。そもそもリアルタイムですらない、誰が聞いているのかもわからない、不思議なラジオ。
ムズムズする腹に手を当てる。先ほどより具合が悪い。
「こいつが良くないのかな」僕はパンツのゴムの位置を少しずらす。少しの開放感が訪れる。しかし違和感は残り続けたままだ。「これが薬の効きはじめの副作用であ理ますように」と僕は強く神様に願った。
老人と海と、僕の腹痛 浅内 丈翔 @TAKERUASAUCHI
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