場所：大坂城

　時間：天正17年（1589年）頃

　1. 待望の嫡男「鶴松」の誕生と権力の確立

　秀吉の待望の嫡男、**鶴松（つるまつ）**が誕生した。秀吉は狂喜乱舞し、大坂城は豪華絢爛な祝祭ムードに包まれた。秀吉の寵愛は頂点に達し、淀殿の権力は揺るぎないものとなった。

「見たか、ねね。これこそが、豊臣の未来じゃ！ 淀殿は、わしに真の宝をもたらしてくれた！」

　秀吉は、小さな鶴松を抱き上げ、至福の表情で城中に響く大声で叫んだ。

　淀殿の勝利は決定的だった。鶴松の養育権をめぐり、ねねとの対立は激しさを増していたが、秀吉の「鶴松は淀殿の手元で育てる」という決定的な判断により、淀殿が養育権を確保した。

「御台所様、申し訳ありませんが、この子は私の手で育てます。私の子ですから。この子こそが、豊臣家の正統な血筋なのです」

　淀殿は、ねねに向かって毅然と言い放った。ねねは顔を歪ませ、深い孤独に沈んだ。

「ああ、秀吉様……。あなたは、私たちが築き上げてきたものを、あの娘の寵愛のために捨ててしまうのですか。この先、豊臣家はどうなることか……」

　ねねはそう独白し、自らの居室に引きこもりがちになった。

　この歓喜の中、初と江が大坂を訪れ、公の場で茶々を祝福した。

「茶々姉様！本当におめでとうございます！ これで、姉様は誰にも負けない！ この子が、私たちの勝利の証ね！」

　江が、興奮気味に姉の耳元で囁いた。鶴松という「力の象徴」が生まれたことで、三姉妹の愛の誓いが達成に近づいたことを、秘密裏に確認し合ったのだ。

「ああ、江、初……。あなたたちの愛が、私にこの子を産ませてくれたのよ。この子が、私たち三人の未来を繋ぐの。これで、私たちは永遠に結びつくわ」

　茶々は涙を浮かべながら、妹たちを抱きしめた。

　2. 江の夫、豊臣秀勝の病死と江の寡婦

　鶴松誕生の喜びも束の間、江に再び悲劇が訪れた。江の夫である豊臣秀勝が、文禄の役の準備中に病死したのだ。江は再び寡婦となった。

「一体、私の人生はどうなっているの？ なぜ、私はこうも夫に先立たれるのだろう……。神は私に何を試しているの？」

　江は自らの運命の過酷さに、膝をついて泣いた。しかし、その悲しみの奥底には、別の感情も湧き上がっていた。

「でも、これは、私にとって新たな機会なのかもしれない。豊臣家の血縁者となった今、私がこのまま終わるはずがない。私は、もっと大きな場所へ行かなくてはならない運命なのよ」

　江は、悲しみを乗り越え、次の政略を冷静に判断していた。しかし、心の奥底では、二度目の孤独になったことへの恐怖も感じていた。

3. 淀殿による江への秘密の支援と愛の再確認

淀殿となった茶々は、権力を使って江を手厚く保護し、大坂城内の離れた場所に住まわせた。この姉妹間の支援は、公的には「豊臣家からの手厚い庇護」として扱われたが、その裏には深い愛があった。

「江は、この戦国の世で最も過酷な運命を背負っている。だからこそ、私がこの権力で、彼女を守り抜かなくてはならない」

茶々は、夜ごと、人目を忍んで江の居室を訪れた。この秘密の逢瀬こそが、淀殿としての孤独な茶々にとって、唯一、真の自分に戻れる時間だった。

部屋には、ほんのりと香が焚かれ、静かな闇が広がっていた。再会を果たす二人は、言葉を交わすよりも先に、互いの温もりを求めた。

「姉様……。茶々姉様の愛があるから、私はまた立ち上がれる。私は、私たちの誓いを果たすため、どんな男の元へでも行くわ」

江はそう言って、茶々を強く抱きしめた。その抱擁は、愛と、そして外の世界への苛立ちと、未来への野心が混じり合っていた。

茶々は、淀殿としての重い衣を脱ぎ捨て、妹の激しい要求を受け入れた。茶々の指先が江の頬をそっと撫で、その肌の感触を確かめる。二人は、誰にも知られることのない闇の中で、互いの存在を深く探り合った。

「江。あなたの体と心は、私たち三人のものよ。決して、一人だと思わないで。この温もりが、あなたの次の戦いの力になる」

茶々の囁きは、優しく、そして官能的だった。江は、姉の愛を全身で受け止め、その胸元に顔を埋めた。この肉体の結びつきこそが、彼女たちの魂が一つであることを証明する、秘密の儀式だった。

この夜、二人は互いの存在を分かち合うことで、江は三度目の政略の舞台へと向かうための、揺るぎない覚悟を決めた。

「姉様……。私は、私たちの誓いを果たすため、どんな男の元へでも行くわ」