第4話・八尺様

「契約成立じゃ」


 20XX年7月17日20時46分

 契約成立


「ならこれをやらんとな」

 

 そういい、どこからか木の棒を取り出し、渡してきた


「え?なにこれ」


 何の変哲もないただの木の棒を渡された

 まるで、ついさっき公園で拾ったかのような


「そうだがどうした?」


 何を言ってるんだこの猫は

 そりゃ当たり前ですよ……みたいに言われても


「ただの棒じゃないぞ?

 ワシの霊力が込められておる」


 霊力が込められた棒……

 結局のところ、ただの木の棒だよな…


「ただの木の棒じゃないわい

 簡単に説明するぞ

 ある程度の霊感がない人間は、攻撃どころか、そもそも触れること、見ることもできん

 もし触れられてもダメージはないじゃろうな

 0に何をかけても0じゃからな」


 「つまりは、この棒を使うことで0を1にできるんだな?」


 食い気味に言った

 

「まあ正解じゃ

 まあ、貴様はワシと契約したからのぉ1はあるじゃろう」


 じゃあ、なぜこんなゴミを渡した


「ゴミとは失礼な!

 貴様は、まだ霊力の使い方もわからんじゃろうと思って、わざわざ用意したんじゃけどなぁ」


 こいつと話してると、ストレス溜まるな……

 ──この棒の威力を試してやろうか


「待つんじゃ!?ワシが悪かった

 今の貴様の攻撃は本当に死んでしまうわい」

 

 まあ、今はこいつにかまってられるほど余裕はない

 僕は棒を握りしめ、走った道を戻った



 20XX年7月18日7時30分

 アラームの音で目が覚めた

 結局あの後、八尺様に会うことはできなかった

 

 「全く、災難じゃのぉ」


 布団の上で丸くなっていた猫がこちらを見る

 

「にしても、貴様……ぐっすりじゃったのぉ?」


 急に何を言い出してんだ?

 昨日あんだけ走ったらぐっすり眠れるだろ……と思いながら睨み返す


「──貴様、あれに気づかなかったのか?」


 今までに見たことのないアホ面で聞き返す

 てかあれってなんだよ

 ちゃんと言葉で説明しろよ


「──貴様、ワシが考えていることがわかるからと……

 まあいいわい、2時頃に窓をコツコツを叩く音が聞こえなかったのか?」


 全く気付かなかった……

 そんなことがあったのか


「……これはまずいことになったのぉ」


 少し考え、また口を開く


「まず八尺様について説明せんとな」


 そうして猫の説明が始まった


 八尺様

 約240cmの身長のある女性の姿をしていて、白いワンピース姿で現れる

「ぽぽぽ」という機会の様な奇妙な女性の声を出す

 成人前の、特に子供を狙う傾向がある

 魅入られてしまったら、数日以内に殺されてしまう

 声色を変える能力を持つ

 数十年前に、とある村の地蔵が破壊され結界が解けてしまいどこかへ逃走

 約10年前に、この町に現れることが確認され結界が張られる


「ワシの知っていることはこれが全てじゃ

 ところで貴様、時間は大丈夫なのか?」


 言われてハッとした

 時計を見ると8時を過ぎていた

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