シロイモノ

@Teteta

赤と黄緑の対話


「どうしたんだ、突然、墓地に呼んで。」

 そう赤は言う。冷たい風が吹く。

「教えてもらったんだ、墓。」

「誰のだ。」

 空虚な音が鳴る。

「今、天国で運営をやっている――作者。」

「なるほどな。」

 遥か上空で鳥の羽ばたきが風に逆らう。

「享年26歳――死んだのは春のいつか。作者はカレンダーを見る趣味のない人間だったようだから、本人にも分からないようだ。3月だったか、4月だったのやも……。」

「そんな感じで自分の死に対してすらふらふらしているのは、らしいとも言えるな。」

  作者その人を1人に見せかけていた、本性では2人を孕むまだ冷めていない熱。

 「死因までは、流石に教えてくれなかった。ただ一言。夢の最中、大通りの端で、白くなる病、だと。」

「ほう。」

 まだ朝食の味噌汁の味がする。肺から溢れる渋い塩辛さの幻覚か。

「そして再開はその死の1ヶ月後か、86年後か。そのくらいにこの遊戯を思い出したらしい。」

 一体いつの話か、誰もが量りかねた。

「で、それを哀悼しているのか。」

 冷たい早朝のはずが、黄昏の匂いがする。一瞬の斜陽。逆光的に赤を照らし、橙に染まる影。と、認識した後にはもう何もなかったのかのような早朝が再びうつる。

「いつでも会える死者だと思っていたんだけどな。何故か、急に手の届かない場所に行った気がした。」

 それを思い出して急に落ちる。ああ、2度と見れない切望が近づいて来ている。

「分からなくもない。例えば、路上で銭を投げてやったものがホールで輝くような。」

 なあ、揺らぐ上で君の色が絶望、或いは嫉妬している。

「はは、それかも。」

 思考のこもっていない声でそうは肯定したが。

 

  それ以上に何かが消えている!


  それ異常に何かが消えている!


 時代を踏んだ過去が無いように。

 今、冀う生をしている!

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