ANZU　～楠木杏・野球少女物語～

「おじさん、誰？あんずねえちゃんに何の用？」
プロ野球の新人スカウトマン稲葉俊は河川敷にある野球グランドのマウンドに立つ少女の姿に釘付けになった。小学生相手にそのスピードと華麗なピッチングフォームに度肝を抜かれたからだ。
「ボク、どうしてもプロになりたいんだ！」
　意を決して対峙した少女の反応は意外だった。しかし可愛い声で”ボク”と名乗る少女に強い意志と共に焦燥感が滲み出ていた。
「どうしてそんなに慌ててるの？」
「今活躍してる選手の中で、ボクがどうしても倒したい、倒さなきゃいけないバッターがいるんだ」
　稲葉俊を睨み返す杏の想いは成し遂げられるのか！？
　だが、それはこれから始まる彼女の野球人生にとって、ただのプロローグに過ぎなかった。
　プロ野球史上初、最強女子選手として活躍する少女の成…続きを読む