星間記録

瑠璃

プロローグ

「『霊主』の『反転暴走』を確認しました!魔術の星です!」


 ここは第11星系のどこかを漂う宇宙船──。

 霊主の存在が反転したことの知らせを聞いて、その場にいる誰もが苦虫を噛み潰したかのような表情を浮かべた。

 しかし、それに臆さず、果敢な勇姿を見せる者が一人。


「そうか……。送れる人材は絞られてくるな……」


 『反転暴走』。それは、星の主であり、圧倒的な力で星を守る存在である『霊主』の『記録』の摩耗による存在意義の反転にて起こる暴走である。

 ましてや『魔術の星』の霊主。強さで言えば、かなり厄介な筈だ。

 ここはもう、出し惜しみしていられない。


「行けるか?ルルーシェ・カラーナ」


 ただならぬ雰囲気を放つ男は、後ろに控えていた一人の少女にそう問い掛ける。

 少女は淡々とした表情で冷たい目線を男に向けた。


「……無論、行ける。団長……」

「そうか。……いや、やっぱり不安だな」


 当然だろう。この少女はついこの間の任務で単独行動をした挙げ句、『紛争の星』を混乱に陥れたばかりなのだから。


「……フィル・アーザー。カグヤ。お前たちも一応ついて行け」

「え〜?イヤっすよ!何で俺が『魔術の星』に行かなきゃいけないんですか!俺は『武装の星』出身です!一番向いてない!」

「ルルーシェも『武装の星』出身だぞ?」

「ソイツは例外でしょ!」

「はいはい。……で?カグヤはどうだ?行けるか?」


 カグヤと呼ばれた、その場では独特な服装をした少女。彼女の装いは一部の星では「和服」と呼ばれているらしい。

 彼女は静かにコクリと頷く。


「問題ありません。私は一応『呪詛の星』の出身ですから、第11記録団の中では一番向いてるはずです」

「うん。その言葉が聞けて心強いな。フィルも見習えよ?」

「俺の主張は合理的で当然のものだったはずだ!」


 フィルと呼ばれた金髪の男は、地団駄を踏みながらその部屋から去っていく。それに続いてルルーシェとカグヤも。

 彼らを見て、その場に居たいくつかの人々は不安そうな表情を見せた。


「あ、あの〜?グズガル団長。彼らに本当に任せて大丈夫なのでしょうか……?」


 その場の一人が、男に控えめに聞いてみる。

 男はその質疑を聞いて、少し笑いながら答えた。


「愚問だな。……我々は何者だ?只人か?それとも愚者か?」


 男が質問した者に近づき、ニコニコ笑いながら質問を返す。それに対してその者は、慌てたように頭を振って否定した。


「い、いえ!違います!我々は『記録団』!霊主の『記録』を受け継ぎ、宇宙を『記録』する団体です!」

「うむ!分かっているならよろしい!」


 男は嬉しそうにその者の頭を撫で、その場に居る皆にも目を向ける。


「決して忘れるな!我々『記録団』は『記録の旅』を絶やさず、止まらず、ただ『過去』を以て『未来』へと進んでいく者たちの道を導く者だ!」

「「「「「はっ!」」」」」


 途轍もないほど、気迫に満ちた返答。

 それを聞いて、第11記録団団長・グズガル・アバガラーは嬉しそうに豪快に笑った。

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