光・重力・時間の世界Another World

亜香里

プロローグ 二つの世界

光と時間の狭間に、もうひとつの世界が揺らいでいる。

 それは、私たちが生きている現実と似ていながら、決して同じではない――

 見えない境界線の向こうにある、もう一つの世界。


 人はそれを「パラレルワールド」と呼ぶ。

 だが本当に“別の世界”なのだろうか。

 それとも、私たちの意識が見落としてきた、現実の裏側なのだろうか。


 気づいたときには、私はその二つの世界を行き来していた。

 いつからそうなったのかも、なぜそうなったのかも、わからない。

 ただ、ふとした瞬間――

 風の音が変わるとき、光の色が微かに滲むとき、

 私は「もうひとつの現実」に立っている。


 それが偶然なのか、誰かの意志なのか。

 何かの目的があるのか、それともただの夢なのか。

 答えは、まだ闇の中に沈んでいる。


 けれど、ひとつだけ確かに感じる。

 あの世界では、何かが動き出している。


 光が揺れ、時間が歪む。

 あの世界では、確かに“何か”が起きている。

 ――不思議な体験の扉は、すでに開かれている。

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