受験日
雪の日だった。朝から大粒の雪が降っていて、バスの行列や、電車の遅延で街はざわついていた。
特に多くの公立校の受験日の今日は。
坂道を登る。普段登る石積みの階段を横目に、車道用の坂を少し早足で上がる。
息が白い。防寒具は揃えて、傘を差して、滑らないように足に力を込める。
モーニングを休業して、冬湖くんを送ってから、神森神社に登っていた。ランチの準備に戻らないと、頭でわかっていても足をむけていた。
頂上に辿り着くと、大きな社が見えた。賽銭箱の前に列を作っている。こんな日なのに、参拝客はいつもより多い。
列にならび、財布から賽銭を出す。こんな時にいくら出すべきかもわからない。今更五十円出した。
列の進みは遅く、手に持った五十円が跡をつけるころにやっと賽銭箱の前に出た。
あと数分で試験開始だから、急いで五十円玉を投げて、二礼、二拍手、一礼、手を合わせた。
冬湖くんが、普段の実力を出せますように。
合わせる手に力を込める。祈りが届かないかもしれない。意味がない方が高い。
それでも祈るしかなかった。
冬湖くんはいつも家事を手伝ってくれて、勉強熱心で、優しい子供です。
ですから、彼の人生が輝かしいものとなるように、お願いします。
十全はつくしても、最後は一人で進むしかない。
僕は無力だった。だが望みは人一倍あった。
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