第2話 (ウブス降臨…チープの眼前に)

(言葉の概要)

 さてここで原子体と量子体の話しをしよう。全ての生命は原子体と量子体という二体の対として存在する。超高等生命はこの二体(の対)を自覚している。しかし通常の生命は原子体(物質としての肉体と、肉体の一部である眼耳鼻舌身に由来する脳内電気信号が生み出す感覚・知覚・感性・知性)しか自覚できない(量子体の存在は認識出来ない)。これに対して、あるレベルを超えた生命は原子体と量子体の二体(の対)を程度の差こそあれ認識できる。ヒカリ・コーの対は本来は原子体・量子体の対としての存在であるには違いないが(ウブスが大光と疎通可能高等生命のためか)通常のエンタングルメントとは異なり、ともに原子体として存在したり、ともに量子体として存在したりすることも可能だ。但し、同じ状態でいられる時間には制限がある。


(ウブス降臨本文)

 さて、原子体でいるコーに対してチープは呼んでしまった護衛官達に、〈この者を捕らえよ!〉と命じようと思ったが、〈また突然姿を消されると、二度と捕縛するのは無理だ。消え去る前に何とかしよう。〉と考え直し、

 「いいか!このことは誰にも言うな!忘れろ!」

と強く命令し、

 「各自持ち場に戻ってよし!」

と言って護衛官達を去らせた。

 落ち着きを取り戻したチープは

 「シロ帝国の話しより、一体お前は何者だ!どんな幻術を使ったのだ!」

とコーを睨んだ。

 「私を捕らえるのが無理だ、と分かったようだな。そういうところはさすがだ。しかし、私の存在はまやかしではない。理解し難いだろうが、息をしないと人は死ぬが如く真実なのだ。さて、私が何者なのかを説明しても、今の貴方には理解も納得も出来まい。」

と質問には答えなかった。

 「ではお前の目的は何だ!」

とチープは苛つきを隠せないが、

 「まあいい。私の思いを少し話してやろう。シロ帝国は西方勢力の陰謀より本来の版図を大きく削られたのだ。己が所有していたものを己に取り戻すのは正義だ。正教会も認めている。」

とチープは強弁する。

 「己がものは一切ない。強いて言えば万物は神に帰属する。」

とコーは諭した。

 「お前は東洋人か。田舎者にシロ帝国の栄光は分からん!」

とチープは居丈高に叫んだ。

 「チープよ。幾ら強がっても、誤った信念は下らない思い込みに過ぎず、文字どおり命取りになるぞ。民に大きな影響力を持つ者には特にそうだ。何故なら一時的とは言え生殺与奪権能を託されている私が遣わされているからだ。」

と諌める。

 「命だと!お前に真の命を持つシロ帝国の栄光がわかるか!」

 とチープは威丈高に吠えた。

 「真の栄光はシロ帝国に有るのではない!」

 とコーは応え、

 「出現消失自在のコーという者には生殺与奪権能が有るかも知らんとまだ思えんか!」

と続けた。

 「さてチープよ。私は今日から暫くの間、量子体という目には見えない形で貴方の何処かそば近くに居る。貴方の心と行いをつぶさに観ている。貴方の眼前で私が突然現れたり消えたり出来るのは何故か、また何の為か、私は如何なる者か。本来の神の心に思いを馳せ、よくよく考えよ。兎にも角にもイラクウを攻撃する大義はシロ帝国にもチープ貴方にも本当に有るのか否か。貴方のシロ帝国観は神からのものか!ルシファーからのものか!よく考えておけ!」

とコーは強く言い残し、消え去った。 




 




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