身長がネック

俺の名前は有村翔、今俺はクラスメイトのである高橋琉斗と本屋に来ている。どうやら青春を知ってほしいとのことなのだが…


「…ほら、この本なんかどうだ?」

「どれどれ…”ラブコメほど都合の良い言葉はない”?ふざけたタイトルしてんな」

「面白くてつい読んじまうんだよな~、やっぱそーた先生は神だぜ!」

「はぁ…くだらん」


琉斗の持ってきてくれた作品は、今どうやら最も注目されている作品だそうで、新感覚のラブコメ作品として賞も受賞したらしい。琉斗はどうやらはまっているようだが、俺には面白さが伝わってこなかった。


ライトノベル系統の本を読むのは…中学で卒業だ。夢を見るくらいだったら今できる最大限を尽くす方が理にかなっていると言えるだろう。それにしても…なぜこんなにきわどいタイトルや表紙で発売しているのだろうか…内容も薄っぺらそうだし…まあ人によってはこれが面白く感じると思っているんだろうな、知らんけど。


「…やっぱ大学の赤本だよな~」


俺は大学の過去問題のある本棚へ向かう。

いろんな大学の過去問題の本が陳列されているが、俺の目指す大学の過去問が一番上の本棚に陳列されているのが見えた。


「…届かない、俺じゃ」


ここで俺は絶望という二文字で表しやすい感情を抱いた。琉斗はライトノベルコーナーからいつの間にか消えてるし…脚立でも使うか。


俺は一回脚立を持ってきて準備する。

脚立の上に乗って取ろうとするが、元々の身長が低すぎるせいで脚立を使っても届かせることができなかった。


「…万事休す、か。よく言ったものだ」


そう呟いていると、後ろから大きな人影が現れた。


「せんぱ~いw、大丈夫ですか~?ずっと本を取れてなかったみたいですけど~w」

「わ、笑うなよ、恥ずかしい…」

「あれ?照れてる~。先輩可愛い~」


と、なぜこんなにいじられてしまっているのかよく分からんし…悔しいが今回は彼女の身長を活かして取ってもらうしかなさそうだった。


「すまないが、あの大学の過去問を取ってくれないか?」

「…もう、仕方ないですね~。今回だけですよ~?」


絹川はそう言うと、脚立に乗って本を取ろうとする。

…この時俺は、赤本よりも気になるところがあった。それは…スカートから見える…あれだ。あれあれ。


「…よし。あ!先輩…覗いてないですよね?」

「の、覗いてねぇっつーの!」


嘘、実際はきれいに見えました。派手な赤色が…


「…あげます。本当に見てないんですよね?」

「見てないって…あ、どうして二つ取ってるんだ?」

「…あ、間違えて取ってしまってたようです…」

「…ありがとな絹川、助かった」


俺は赤本を取れて、おまけに下着の色も…いや、それだといろんな意味で助かったって意味になってしまう。これじゃ善意で助けてくれた絹川の気持ちを台無しにしてしまう。


それにしても…どうして絹川は俺の行く大学の赤本を二つ手に取ってたんだ?

そこだけの謎は、多分一生分からないだろうと、俺は思った。

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