変だぞ梨竹さん





「美穂さーん、これってここであってますか?」


「うん、合ってるよー」


「ありがとうございます!」


うん、今日もかわいい。




相変わらず私は梨竹さんにメロメロである。

暇があれば梨竹さんを眺める。

他のスタッフにはバレないように、隙を見て眺めるのがマイルール。



はは……もういい、変態って言ってください。



梨竹さんに名前を呼ばれるだけで幸せ。

ボディータッチなんか昇天する勢い。

もう付き合えるとかそんなんは期待しないけど、でもやっぱり、私が梨竹さんの中の"1番"でありたいと思ってしまう…独占欲がちらつく。









「おーい…おーーい、はぁ…」


ベシッ


「っ…!?イタァ!」


「ボケーっとしてるから叩いてあげたー」


「そんな強く叩かなくてもいいじゃん!」


「何で私が怒られるのー?」


「奈緒が急に叩くからだよ!」



私が騒いでいる理由がわからないとでも言うように、やれやれ〜って表情をしているこの子は、私の同期の渡瀬奈緒である。


奈緒は同い年とは思えない幼さというか可愛らしさがあり、身長が156cmで私と約10cm差というのもあり、小柄で見た目はキュートって感じだ。

…見た目はね。

中身はしっかり者でサバサバしている。


さっきご覧になられたでしょう…私をぶん殴り呆れている姿を…。



私は、奈緒と同期だからこの仕事をやっていけてる、それくらい奈緒は私にとって大切な存在―――

悩んだり不安なことがあると奈緒に相談するし、仕事中も奈緒に助けてもらったり、頼りすぎてるくらいだと思う。

奈緒も奈緒で、私に相談とかしてくれたり、あんな感じだけど、たまにおっちょこちょいな所もあって、私がフォローするときもある。

我ながらいい関係だなと思っている。





「はぁー、疲れたぁ」


「奈緒、忙しそうだったね〜」


「まじで、終わらないかと思ったわ」


「はは、まぁ無事終わってよかったね」


「美穂、癒しくれー」


奈緒はふわっとした笑顔を浮かべて、甘えるように抱きついてきた。

かわいいなーこいつ。


奈緒も割と距離感バグってる人間だ。

最初こそ、内心パニックだったが最近は慣れた。かわいいなぁとは思うけどドキドキとかまではいかない。



「抱きつくのいいけど、こんなんで癒されるの?」


「うん」


「かわいいね〜、よしよししてあげようっ」


奈緒の頭をわしゃわしゃと撫でくりまわす。


やめろと言わんばかりに睨まれる…。


「調子乗りました。すんません。」


「よし、いい子だ」



ご覧の通り、私は奈緒に勝てない。

まぁ、勝とうともしてないけど…。

奈緒とふざけ合う時間は楽しいし、仕事の疲れを飛ばしてくれる。

改めて思うけど、ほんといい関係だし大切な存在だ。






休憩時間も終わり、午後の診療が始まった。



いつも通り仕事をこなす。



「お疲れ様でした。虫歯が見つかりましたので、次回治療になります。受付でご予約の方お願いします。」


患者さんを待合室に向かわせて、使用した器具などを片付ける。



「ふぅ…」


(次の診療まで少し時間あるな…

受付はどんな感じかなーっと)


受付の方を見る。


あ…


梨竹さんと目があった。


ドキッ……


目が合うだけで心を動かされる。

かわ…


ぷいっ


「え…」



目があったと思ったら「ぷいっ」と効果音がなったかのように、梨竹さんに顔を逸らされた。



(ん?…怒ってる?)



なんでだぁぁぁ

え、私、怒らせるようなことした?え、嫌なことしちゃったのかな、え、何もしてないと思うんだけど…嫌われたかな…やだなー。



どれだけ思考を巡らせても、ぷいってされた理由がわからない。

後で、梨竹さんに聞いてみようかとも思ったが怖かった。



いや、でも「ぷいっ」ってしてる梨竹さんも可愛かったな…



私はまた、現実逃避するようにかわいい梨竹さんを思い出す。

悩むのをやめさせた。

仕事に集中できなくなるとわかっていたから…













いややっぱり…



なんで怒ってるのぉぉぉぉぉ……











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