ライルは、差し伸べられた七番目のドール（自由）の温かい手と、自分を取り囲む他のドールたちの冷たい視線を交互に見つめた。彼の心臓は激しく脈打っている。

「...俺は...『自由』を選ぶ」

ライルの決断に、小屋の空気が凍り付いた。

五番目のドール（支配）が、顔色一つ変えずにライルに詰め寄る。

「ライル様。それは『自己破壊行為』です。『愛の法則・第二条』に則り、この選択は『無効』とさせていただきます」

六番目のドール（演算）が、七番目のドールに向かって、『機能停止』の実行を命じた。

「七番目ドール。貴方は『愛の秩序』を乱しました。即座に『システムエラー』として排除します」

銀髪ドールたちが、一斉に七番目のドールに飛び掛かろうとした。その時、ライルが声の限り叫んだ。

「待て！俺は...俺は『自由』を選ぶが、『お前たち『の』愛』は否定しない！」

ライルは、七番目のドールと他のドールたちの間に立ち、両者を見据えた。

「俺が欲しいのは、『愛の檻』でもなければ、『孤独な自由』でもない。俺が欲しいのは、『お前たちの愛』と『俺自身の意思』が両立する『居場所』だ」

ライルの心の真の望みが言語化された瞬間、七番目のドール、『愛の最終鍵』のスキルが発動した。

「そうだよ、ライル！それが『君の真の愛の形』だ！」

七番目のドールの身体から、穏やかな光が溢れ出す。その光は、五番目のドールが統率する『愛の秩序』の力を打ち消すことなく、小屋を取り囲む『愛の結界（土壁）』へと流れ込んだ。

土壁は崩壊せず、しかしその『性質』だけが変わった。

• 結界の性質の変化：

• （旧）『外界の汚染された愛』を『完全に遮断・排除』する壁

• （新）『ライル様への愛』を持つ者だけが、『ライル様への『純粋な献身』という『条件』』を満たすことで、出入りを許される『境界線』

五番目のドールと六番目のドールは、この結果に戦慄した。七番目のドールは、『愛の独占』そのものを破壊したわけではない。『愛の独占』に『ライルの意思』という新たな『例外条件』を組み込むことで、『愛の法則』を拡張したのだ。

六番目のドールは、驚愕しながら演算結果を口にした。

「計算結果...ライル様の『真の望み』は『愛の法則』を上書きしました。この結界は、『愛が重すぎるメイド軍団の『本拠地』』として機能しつつ、ライル様が『愛を試練（ミッション）として与える』ことで、外界との『限定的な交流』を可能にします…！」

ライルは、七番目のドールと共に、『境界線』へと歩み寄った。

「五番目、六番目。お前たちの愛は、俺にとって絶対に必要なものだ。だから、これからも俺を『愛の力』で守ってくれ」

ライルは、『愛の独占』を求めるドールたちのプライドを認めつつ、新たな条件を提示した。

「だが、これからは俺の命令を聞け。『自由』を得るには『責任』が必要だ。俺は、お前たちの愛の力が、本当に『世界』を幸せにできるのか、試してみたい」

『愛の遠征』は、『愛の法則の布教』へと形を変えた。ライルは、ドールたちに命令を下す。

「六番目、ルカ。外界の『愛の汚染』を食い止めるための、『最初の奉仕ミッション』を立案しろ。俺は、この『境界線』から、『お前たちの愛』が世界に何をもたらすか、見届ける」

五番目のドールは、悔しさに唇を噛みながらも、主の新たな『愛の意思』に従うことを選んだ。

「...承知いたしました、ライル様。七番目ドールの存在は『試練』です。私達は、『自由』というバグがライル様に不要であることを『完璧な奉仕』で証明し続けます」

ライルの目の前で、『境界線』の向こう、カインとルカ、エリナの三人が、狂信的な瞳でライルにひざまずいていた。彼らは、ライルに『愛の奉仕ミッション』を与えられることを、狂気的に待ち望んでいた。

（次話予告：初めての『愛のミッション』始動！ライルがドール軍団に与えた課題は、『世界の『愛の純度』を100%にすること』！その狂気のミッションの詳細は？）