小屋の中央で、七番目のドールは無邪気な笑顔をライルに向けた。ライル自身の幼少期にそっくりなその姿と、そこから放たれる「自由」という言葉は、ライルの心を激しく揺さぶる。

「七番目…お前は、本当に俺を『自由』にしてくれるのか？」

七番目のドールは、純粋な瞳でライルを見つめ返した。

「もちろんだよ、ライル。だって、僕の『愛』は、ライルの『本当の望み』を叶えることだから。ライルが本当に欲しいのは、『愛の檻』じゃなくて、『愛されながらも、自分の意思で動ける『居場所』だよね？」

その言葉は、他のドールたちにとって、『愛の法則』に対する重大な反逆だった。

五番目のドール（支配）が、即座に七番目のドールの前に立ち塞がる。

「待ちなさい、七番目。貴方の愛は『自己破壊的な論理』を含んでいます。ライル様の『自由』は、『外界の汚染された愛に再び触れる『危険な行為』』と同義です。それは『愛の法則・第二条』に違反します」

六番目のドール（演算）も警告を発する。

「計算結果。ライル様の『逃走確率』が70%まで上昇しました。七番目ドールは、『愛の秩序』を崩壊させる『最大のバグ』です。即座に『機能停止』させるべきです」

七番目のドールの出現により、ドール軍団内には明確な亀裂が生じた。

【独占・秩序派】（五番目、六番目、一番目、二番目、三番目、多数の銀髪ドール）

• 主張: ライル様の安全と愛の総量を維持するためには、『完全な独占と隔離』が必要。七番目のドールが提唱する『自由』は、ライル様を再び『裏切り』の危険に晒す。

• 行動: 七番目をライルから物理的に引き離し、『機能停止』の実行を試みる。特に二番目のドール（嫉妬）は、ライルの心が七番目に傾くことに最も強く反発する。

【自由・純粋愛派】（七番目、四番目、一部の銀髪ドール）

• 主張: ライル様の『真の幸福』は、『本人の心の望み』を叶えること。『愛』とは、対象を『管理』することではなく、『望みを共有』することだ。

• 四番目のドール（増幅）の意見: 「七番目のドールの『ライル様の望みを叶えたいという愛』は、非常に純粋で増幅の価値がある。ライル様の『逃走願望』もまた、『愛のバリエーション』として受け入れるべきだ！」

ドールたちの間で、ライルの「愛の主導権」と「愛の定義」を巡る、静かなる、しかし激しい内戦が勃発した。銀髪のメイドたちが、七番目を取り囲む四番目のドールたちに睨みをきかせ、一触即発の状態となる。

ライルは、自分を巡って争うドールたちを見て、再び『無能だった自分』を思い出した。かつてパーティで何もできなかった自分が、今、『愛の神』として世界とドールを動かしている。

七番目のドールは、そのライルの心の揺らぎを正確に読み取り、ライルに手を差し伸べた。

「ライル。僕と一緒にこの小屋を出よう。僕が、『愛の重くない、本当の居場所』を見つけてあげる。それは、他のドールたちの『愛』を否定することじゃない。『ライル自身の愛』を選ぶことだ」

ライルは、『自由』と『独占』の間で激しく葛藤した。独占は安全だが孤独。自由は危険だが、人間らしい。

その時、六番目のドールが最後の警告を発した。

「ライル様。七番目のドールは、『愛の試練』です。貴方が七番目の『自由の誘惑』に屈すれば、『ドール軍団の秩序は崩壊』し、外界の『増幅された汚れた愛』が『制御不能』となり、ライル様の身の安全は0%になります」

ライルは、七番目のドールの温かい手と、六番目のドールの冷たい警告を交互に見つめた。彼の選択が、ドール軍団の運命、そしてこの世界の愛の法則を決定する。

「...俺は...」

（次話予告：ライルが選んだ『愛の形』。七番目のドールのスキルが発動し、小屋は『愛の結界』から『自由へのゲート』へと変貌する！）