第16話
『恨みを晴らせ』
あの男に言われた通りに行動し、嗄れた手で握った車のハンドルで人間一人を殺生した。
なんと爽快な事か。
こんなにも晴れ晴れとした心境になるとは。
――次は誰だ。
誰を殺めれば良い。
――次は誰だ。
誰だ。
楽しみで仕方無い。
――そうだ。
あの精神科医の幼馴染みだという男にしようか。
其れもいい、そうしよう。
此のしょうもない人生に光明を得た。
ゆらゆら、ゆらゆら。
ゆらゆら、ゆらゆら――。
亡霊が揺れている。
ゆらゆら、ゆらゆら。
ゆらゆら、ゆらゆら――……。
残り僅かな人生に、こんなにも愉快な事が起きようとは思わなんだ。
嗚呼――なんて優越感だ。
相変わらず亡霊たちは物憂げに此方を見てくる。
ゆらゆらと揺れながら。
ゆらゆら、ゆらゆら。
ゆらゆら、ゆらゆら――。
ゆらゆら、ゆらゆら、ゆら。
久方振りに大笑いした所為か、随分と喉が乾いた。
嗚呼――酒だ。
酒が足りぬ。
足りぬ。
あの男が持って来る極上の酒でなくば、身体が耐えられぬ。
あの酒を呑まねば倦怠感に苛まれ、何をする気も起きぬ。
足りぬ足りぬ。
おおお――、亡霊たちが嗤っておる。
嗤っておる。
ゆらゆら、ゆらゆら。
ゆらゆら、ゆらゆら。
ゆら――。
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