第11話 進退

進めなかった夢の中。

後ろからは黒い影で隠れていたけど誰かもわからないけど追いかけられていた小学生のときの通学路。

走ってたのに走れていたのに進まずにただただ後ろからくる「それ」に私は何もできずに恐怖と「それ」に追いかけられて、隣の眼鏡屋さんも走り去っていく車道の車もスクーターもその時間もずっと動いてた気がする。周りの景色も見れていて晴れていて緑は生き生きしていて、あそこの踏切も大きな歩道橋も目の前に見える学校も全部見れていたのに進まずに。ただ。


そのまま飛び起きたとかよりもじわじわと目が開いてカーテンから溢れている小さなは朝日が目に刺さって抜けなかった。

汗をかいているとかはないし、昨日の夜にしたスキンケアの乳液がどこか嫌に感覚的に肌に残っていることに気づいて、暖かくしてくれた毛布とか布団を足で跳ね除けて、少し狭い子供部屋の扉をただただずっと見ていた。

目から離れられる扉が少し怖くてあれを開けると「それ」が待っている感覚があって、動けなくなって跳ね除けた毛布とか布団をまた足で身体にかけてみたが暑いのは変わりなかったし意を決して開けてみてもなにもなかったしいつも通りに下に行ける階段の段差が見えるだけで、いつもの時間を暮らして枯らしているだけなのを実感した。

いつも通りに出勤しようとしても後ろが気になるのはなぜだろうか。

夢のせいだろうか。それとも嫌な過去がしがらみみたいになってくっ付いてきているのだろうか。

なんなのだろうか。これは。

外を出ると「それ」ではないが、黒い影は太陽の光からできるものになって、ただの自然のことのように出来上がるその影が今日はちょっと嫌だった。

吹っ切りたくて走ってみると夢の中よりもはやく走れて自然に走れてるのに、「それ」ではないのに、気になって動けなくなりそうだった。


過去の出来事も記憶と一緒に消したい。

そんな夢。

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視界 ヨシユキ @__siiil3

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