第3話 死灰
目が覚めると生きていたから、きっとこれは夢なのだろう。
ふわふわとベッドに横たわり始める時間になったころ、ふと、死について考えるようになった。
死とはなんなのだろうか。
死というものは本当に存在するのだろうか。
死にまつわるもの、簡単に命を失えるようになったこの世の中で死は重たくあるべきなのだろうか。
こんなことが頭の中を走って暴走しているころ、脳みそが疲れ果てて気づけば泥のように眠っていた。
碧い雲ひとつないきれいな空が見えた。
真夏日に見るあのビビットカラーにも見えそうな綺麗な碧い空。
きれいが故に少し夏の悲しさ、童心を持ってプールまで走っていたあの頃がVHSの画質で脳内再生が始まり、懐かしさや物悲しさで目に少しだけ碧い空が反射する。
そんな空を見上げると地面に咲いた力強いあの花を見失ってしまっていることに気がつく。
真夏日というのは凄まじく視界が目まぐるしい。
上を見上げれば、下を見れば。
それはそれは力強い景色と生命体が蔓延った世界が見えてしまう。
この広い地球に置いて行かれた私はすごく小さな存在だと再認識することを強制される力強い景色と生命体の数に圧倒され、私は静かに弱くその場にしゃがみ込み、そのきれいに咲いた生命体を見ることしか出来なかった。
私の目には碧い空が反射していたはずなのに、生気を失ったみたいな、火が消えたろくそくのような、熱は帯びずにただ悲しくそれだけの感情に埋め尽くされてしまっていた。
人は弱い。
空から灰色のなにかが落ちて目に入り、痛がると涙ぐむこの目。
誰かの助けを呼ぶようなそんな目をして、1人では、独りでは、生きていけないことを証明するような目。
正気を失い、ハイライトが消え、ただ真っ黒に包まれるだけの悲しい目が満員電車には詰まっていたり、休みの日でも働く日でもただ詰まっている死灰の目に人の弱さを見る。
暑い日でも寒い日でも風の強い日、運がない日、苦しく呼吸すら薄くなる日、そんなことが多すぎてしまったこの心にはただの死灰、世界の大きさか小ささを見てしまっては苦笑い、愛想笑い。
こんな夢の中でも疲れるなんて不運だ。
寝起きは最悪、心の罪悪感、今日も早起き、仕事の毎日。
ただただ時間が過ぎて同じ日々を送って手を振るカーテンにも気づけないし開けない、私はただただ生気を失った死んだ目の灰になって燃やされ尽くしてしまうことだろう。
ゆっくりおやすみ。
ゆっくりとただゆっくりと。
今日はゆっくりおやすみなさい。
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