第2話 死海

私の夢の中での出来事であってほしいが、少しは現実なのだろう。そう心を落ち着かせている気がしていた。


船の上。波は強い。

帆はゆらゆらどころではなく、激しく揺れ、手を振るような速度ではないあれは1番強いワイパーのようなそんな速度と激しさで体の自由もきかないようなそんな強くて怖くて恐る海だった。

船員の姿はなく、この船には私だけみたいで不安定で空は豪雨に雷は稲光が下から出てきているようなそんな荒々しい天気でまさしく海賊が危ないエリアに入った噂話のために海路を遠回りすることを選ぶようなそんな海。

この海の噂話は知らないしこんなエリアがあることも知らなかった私はどうにかしたいものだが、船の知識がないためか面舵いっぱいとかなんなのか船を操るあのハンドルは一体どこにあるのか、波が船に上がってくることには死を覚悟したほうがいいのではないか、一体何ができるだろう。海は怖いものへと様変わりして、有名海賊アニメやジョニーデップの映画みたいな格好がつくあのシーンではなく、これはもうすでに視界に見えている「死」を待つだけの救いがない、神様はいないことを理解するためだけの時間が猶予として少し与えられているだけの状況に置かれている。

焦りに身を任せることしか出来ずに、覚悟の準備は出来ずに、こんなときにあのときにあれをすれば、これをすればとそれだけが脳内を巡り巡ってそれの行く果ては「諦め」「死」。

ただそれだけのことなのだ。

本当にただそれだけのこと。


夢なのか現実なのかは理解が追いつかない。

落ち着けば確実に夢だとわかるはずだが、夢とは思えない心境にそれとリンクするように海は焦っているように荒れる。荒々しく動く。

寄せては引くような甘ったるいものではないのだけがわかる。時間がはやくなる。

海が船を飲み込み始める。

そこらじゅうの素材の悲鳴が聞こえてこの船も私もこのままこの海に飲み込まれて栄養になり、どこかの生命体の栄養になり、この海が育つはずだろうが、そんなことなど思えない。

追いつかない心と体、時間と空間、焦りは苛立ちにどうしようもない私の人生が飲み込まれてしまっては終わりだと確信した。

謝りたいこと、感謝したいこと、やり残したことこれはこのまま後悔として終わりを告げるだけの懺悔の幽霊として残り続けるのだろうか。その答えすら、わからないまま。

焦りと汗に塗れて布団の上だった。


起きたときには海のような汗の量に焦りが変わり、気分は悪いが洗濯をする。

たくさんの考え事が溢れては止まらないこの世界に生きているということは、あの夢の中で見た死海が常に荒々しく動いているということなのだろう。

どう航海するのか、帆をなびかせるのか、海の機嫌は自然の機嫌だ。

そんなに上手く生きれるわけではないがなるべくゆっくりの舵をきらない航海をするべきために、たくさんの休養が必要。

夢は夢でもたくさんの現実に目を背けていたみたいで、泳いで行くためには。

そんな夢の中だった。

視界だった。

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