第19話 凜華との大喧嘩!?

 その日、私はひどく落ち込んでいた。返却された数学のテストは――赤点。

 赤点を取った人は、補修を受けなきゃならない。勉強は苦手だし、特に数学なんて大っ嫌い。私にとって、それは地獄以外の何物でもなかった。


 机に突っ伏している私を見て、凜華が心配そうに声をかけてくる。

「大丈夫? 手伝おっか、勉強」

「いや、大丈夫。そりゃあショックだけどさ……別に、数学なんてできなくても生きていけるよ。将来使うかもわかんないし」

 無理に笑ってごまかそうとした私に、凜華は少しだけ眉をひそめた。

「そんなこと言って……嫌なことから逃げたいだけじゃない?」


 その一言が、胸の奥に突き刺さる。

 悪気のない言葉だって分かってる。でも――今の私には、余計にきつかった。

「……そんなに言わなくてもいいじゃん。凜華には分かんないよ。勉強も運動もできて、家も裕福で、全部恵まれてるんだから」


 口に出した瞬間、後悔した。

 ああ、言っちゃった――。そう思った時には、もう遅い。


「はぁ? 何それ。私が苦労知らずのお嬢様だって言いたいわけ?」

 凜華の目が、いつもの優しい色じゃなくなっていた。

「確かに周りから見ればそうかもしれない。でもね、私にだって色々あるの。それでも現状から逃げずに頑張ってる。……あんたとは違うの」

「そっか。……そうだね。私はやっぱり、凜華とは住む世界が違うみたい」


 空気が一気に冷えた。

 それ以上、何も言えなくなって――私たちは、そのまま背を向けて別れた。


 それから、凜華とは一言も話していない。登下校も別々。

 目が合っても、すぐに逸らされる。

 もう、彼女は私と話してくれないのかもしれない。

 胸の奥がじわりと痛んだ。


 そんなある朝――偶然、凜華と遥ちゃんが一緒に歩いているのを見かけた。

 その瞬間、空からモンスターが現れた。


「さて、今日も楽しませてもらうわよ」

 屋上でオルフェウスが不敵に笑う。


「光よ、私に新たな力を! マジカルミナスブレイブ!」

「光よ、私に新たな力を! プリズムルミナスブレイブ!」

 凜華と遥が光に包まれ、戦士へと変身する。

 私は少し遅れて叫んだ。

「光よ、私に力を! マジカルミナスブレイブ!」


 三人で戦っているはずなのに――息が合わない。

 凜華と私は、互いを意識しすぎて、動きがバラバラだった。


「今日はなんだか、一体感がないわねぇ」

 オルフェウスが屋上から面白そうに呟く。


 次の瞬間、モンスターの拳が私たちを襲う。

 衝撃で吹き飛ばされ、地面に叩きつけられる。


「こんなところでやられてたまるもんですか!」

 凜華が私の前に立ち、再び構える。


 遥が叫ぶ。

「二人とも、協力しないと危ないです!」

「遥ちゃん、早乙女に伝えて。……力を合わせようって、お願い」

 遥は必死にモンスターの攻撃を避けながら、凜華に伝言する。


「はぁ? 私はもうあの子とは話さない。こんな奴くらい一人で十分よ!」

 冷たく言い放ち、凜華は単身突撃していった。


 遥は困ったような顔をして、私に伝える。

「星川先輩、凜華先輩、そう言ってました……」

「そっか……。ねぇ、じゃあ“ごめん”って伝えてくれる?」


 遥は唇を噛みしめた。

「何なんですか、これ……! 先輩たち、いつもみたいに普通に話してくださいよ!」

「嫌よ。あんなひ弱な子とは、二度と話したくない」

 凜華の言葉が、また心を抉る。


「……あっそ。じゃあ話さなくて結構」

 自分でも驚くほど冷たい声が出た。


 戦いの最中、凜華は一瞬の隙を見抜き、モンスターの弱点――頭部に狙いを定める。

「プリズムルミナスブレイク!」

 放たれた矢が命中し、モンスターは光の破片となって爆散した。


 変身を解除する凜華。

「遥、行こ」

「えっ、でも星川先輩は……?」

「あんなの放っておけばいいのよ。私がいないと何もできないくせに」


 その言葉を残し、凜華は遥の手を強引に引いて去っていった。


 私は立ち尽くしたまま、胸の奥に広がる痛みを押さえきれなかった。

 静寂に包まれた景色の中、ただ悲しみだけが私の心に残っていた。





【次話予告】


「あんた、ずいぶん弱ってるみたいね」

「あなたは……?」

「あたしはルシフェリア。世界の秩序を満たす者。あんたの“ネガティブ”な感情、利用させてもらうよ」

「ぁああっ……あ、や……め……て……っ!」


 私の心の闇から生まれたモンスターが、私に容赦なく襲いかかる。

 誰か……誰か助けて――。


第20話 絶体絶命!?

必ず、読んでね!

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