物語は続く──。
@oryo
言葉を紡ぐ
私の絵はある意味で美しい。周囲の人間も私の絵を口々に、才能の塊だ、天才の中でも生粋の者、魂が籠っている、そう持て囃すのだから。なのに私は、この絵が醜い。魂を込められていれば、どれほど良かったものかも知れないのだから。
──「怨みの美学」より。
勿論、僕に美術の才はないし、人生で触れ合ってきてもいない。だがこれは、愚かにも正解を求める僕の、最も素直な感情が現前した物語。それを美としたかった一種の我儘かもしれない。
足は凍えて、霜焼けが酷かった冬の日のことだった。足の指を掻きたくてたまらないから、代替になる何かをしようと、そんな理由から文章を書き始めていた。皆んなは、書かれた物語をそれはそれは褒めた、最初はそうだった。でもいつしか、飽きられていった。人間とは怖いもので、どれだけ熱中していても、それが飽和すれば始めからなかったみたいに扱う。死んだ、終わった、そう思われる方が何倍もマシだった。まだ有形の何かでいられたから。
でも恐らく、皆んなは気づいていたんだろうなと思った。魂なんて籠っていない、読み応え、見た目重視、文学的ルッキズムの駄文だと。だからこの物語の主人公が羨ましい。どれだけ自己評価が低くとも、他人の評価があるんだから。あとは自分が頑張ればいいだけなんだから。
物語の続きは、紡げなかった。
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