お花を摘みに行ってきますわ
ガラムマサラ
第1花
ある日の昼休み、校舎の中庭でいつもの光景が流れていた。
「櫻井さん、好きです!僕と付き合ってください!」
「ごめんなさい、あなたとは付き合えないわ」
そう言い残すとすぐに櫻井彩芽は校舎に戻っていった。
校舎の中庭ということもあり校舎の中から告白がどうなるのか気になる生徒が多くいた。
そしていつものようにため息と歓声がそこら中に聞こえる。
またダメか、とため息が出る横でよし!俺にもチャンスがあるぞ!と気合いが入る者もいる。
そう、櫻井彩芽はモテるのである。綺麗な顔立ちに長い黒髪を靡かせ、常に学力運動ともに成績トップに性格も良いときた。そんな彼女に惚れて告白し散っていく男は数知れず。
そして告白は決まって昼休み入ってすぐに校舎の中庭で行わられ、必ず1日1人までと決まっている。
なぜそうなったのか、誰がそうしたのか、理由は明白である。
その理由は櫻井彩芽本人にある。
ジャーーーーー。
中庭から校舎に入ってすぐのトイレで水を流す音が聞こえる。
「はぁ、ほんと毎日毎日しんどいって、、、」
顔面蒼白の彩芽の顔が鏡に映る。
彩芽は男性と一言でも話すと急な便意に見舞われるのである。しかも大きい方。
そのため、お昼ご飯を食べる前、そしてトイレから1番近い中庭で1人だけ告白を受け付けるのである。
幼少期の頃から男性と話すとどんな場面でもトイレに駆け込んでいた。
「小学生の時に校長先生から初めて表彰されたときも、中学で初めて男子に告白された時も、街中でイケメンにナンパされたときもそう!なんでこんな身体なのよ、もうー」
トイレの鏡の前で嘆く彩芽。
「まーた今日も告白されたの?懲りないなぇ、もうやめたらいいのに」
そう彩芽に呆れ顔で話しかけたのは彩芽の幼馴染である、英楓(はなぶさ かえで)だ。
彩芽とは逆に可愛らしい顔にピンク色の派手髪をツインテールで結んでいるギャル。
そして彩芽の秘密を唯一知る人間である。
「うるさい!私だって彼氏欲しいの!」
「絶対彼氏作って、文化祭一緒に回ったり〜夏祭り行って〜花火見ながらチューしたりしたいの!」
楽しそうに目を輝かせながら話す彩芽。
「うわぁ、痛いわー。普通花火見ながらチューしないでしょ」
また言ってるわと呆れ顔で返す楓。
「ちょっとそこ、引かないの!いいでしょ?夢見たって。。。」
泣きそうになる彩芽。
そんな彩芽に対して楓はため息混じりにこう返す。
「あいつじゃダメなの?」
「あいつ?」
キョトンとした顔で聞き返す。
「勇太よ勇太。あいつなら話しても平気なんでしょ?」
勇太とは、彩芽のもう1人の幼馴染である御手洗勇太(みたらい ゆうた)のことで3人は家が近く、幼少期はよく一緒に遊んでいた仲で彩芽が話しても唯一便意を催さない男である。
「勇太ぁ??ないない!あいつは絶対ないわ!だって別に私の好みじゃないもの」
「私はこうスラーっとしてて高身長でーキ⚪︎タクみたいな男らしい人が好きなよ?あいつはそれの真逆よ。あー私のキ⚪︎タクはどこにいるの?」
また目を輝かせながら空を拝みながら話す彩芽。
「はぁ、ウチは良いと思うけどねあいつ。たしかに身長は低いけど優しいし気が効くし、なんてったてウチが飼ってる犬にそっくりで購買も頼んだらすぐ買ってきてくれるしー」
「あんたはパシリに使いたいだけでしょ!」
「とにかく勇太は違うの!」
勢いよくツッコむ彩芽。
「何が違うの?」
そこにたまたま通りがかった勇太が不思議な顔で立っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます