メイド職は天職ですけど!?(圧)~連載中~
ライフリー
第1話 きっかけ(1)
私の名前はルカー。十歳。
家事雑事が大好きな、人間です。
人間を強調してしまうのは…、許してください。
ときどき、エルフと間違われることがあるんですよ。
エルフというのは、ふつう、奴隷に多いため、メイドとしても雇われることが多いです。
私も、メイド奴隷なので、だからなのでしょうか。
今、私は奴隷、という身分です。
でも、誰にも買われません。
胸が大きくないからですかね?だとしたら、なんと失礼な。
女は胸だけじゃないんですよ!
ああ、そうそう。
今日は、私の昔のことを話すのでした。
考えると、とても懐かしいです。
一番、平和な記憶は、五歳ごろでしょうか…。
私は草原に寝っ転がっていた。
頭の上には、真っ青な空と、綿あめのような雲。
普通の子なら、雲を食べてみたいと思うのかもしれないけど、(だって、綿あめに見えなくもないじゃない?)私は雲をさっと掃除して、空をピカピカに磨き上げたい、そう考えている。
空は、真っ青であるべき。雲なんぞいらん。これが私の持論だったりする。
私はルカルア・デイスト。
一介の平民である。
裕福ではないけど、貧乏でもない。
中間って感じ。
パパと、ママは、いつも仕事に出かけて行って家にはいない。
さみしくなんてないと自分に言い聞かせてるけど、本音は寂しい。
でも、最近ここー秘密基地ーを見つけた。
結構、高いところで、街を見下ろせる。
咲いている花で、花冠を作ったりできるし、木に登って寝るのも気持ちいい。
虫は嫌じゃないのかって?
まさか。虫は友達ってほど、幼いころから一緒に過ごしてきたんだから、いやだなんて…。ギャッ、虫だ!・・・・・。
ま、まあそんな感じの毎日を過ごしていたある日。
ちょうど、六歳になったころ、パパが借金を負った。
理由は簡単。
詐欺にあったのだ。
偽のプロジェクトを提出してしまったことで、会社もクビに。
ママだけの収入では生きていくのも困難な時期だった。
そこで、私は、私も働けばいいんじゃないか、そう、考えた。
でも、どこで働けばいいのかわからない。
それで、私は、いつもお世話になっている近所のおばさんに聞いてみた。
すると、返ってきた答えは
「そうねえ、角を曲がったところの、ロトルカフェとか、小さいメイドさんを募集していたんじゃなかったかしら。」
というものだった。
私が、両親に働きたいというと、やっぱり反対されたが、何とかおしきり、次の日
パパと一緒に、ロトルカフェに行った。
少しお話した後、私は働くことが決まった。
これが、私の初のメイドのお仕事。
メイド服を着て、お客様の対応をして、掃除をして…。
毎日が充実していたように感じた。
敬語が身についたのもこのころだと思う。
しかし、私の予想外の働きぶりを陰から見ていた人がいた。
ある晩から、その人が家に尋ねるようになった。
ほっそりしていて、少し、いや、だいぶやつれている人だった。
なかなかに、同情を買いそうな見た目で
「お宅の子を売ってください。今なら値段も高くつきますよ。」
そう、言っていた。
両親は、私が寝ていると思っていたのだろう。
でも、わたしは眠れなくて、耳をそば立てていた。
両親は、毎回断っていた。
でも、生活は苦しくなるばかりだったし、私が稼いだ分もあまり足しになっている、とは言えなかった。
わたしが、その人のことを聞き込みしていると、ある情報をつかんだ。
奴隷商、という存在がいること。そして、うちに来ているその人も、奴隷商なのだということを。
奴隷商とは、貧しい人から、子を買い、貴族や、裕福な平民に売る仕事である。
奴隷には首輪をつけ、命令に逆らうことができなくなるようにしているらしい。
それを聞いて、ああ、うちはもう貧しい家なのかと思った。わかっていたつもりだったけど、やっぱり悲しかった。
そして、私が八歳になったころ、家にはとうとう、食べ物が、なくなった。
借金はやっと返せたが、そのせいでより貧しくなった。
服もどんどんみすぼらしくなっていったお母さんは、体調を崩し、会社を首になった。
退職金で長い間、まかなえるはずもなく、両親は、私のちっぽけな収入に縋りつくことになった。
しかし、やはり限界を迎える。それがちょうど、九歳のころだ。
「どうしよう、もう、食べ物がない。食料を買うお金も…。」
両親が、そう、こそっと話しているのを聞いて、私は決心した。
「ねえ、パパ、ママ。私を売って。」
今まで言おうか迷っていた言葉がすっと口から出た。
両親は、ぎょっとした顔をしている。
「もしかして…、聞いていたのか?」
パパの質問に私はコクっとうなずいた。
「夜、奴隷商の人と、話していたでしょう?私、聞いてた。」
私の答えに、ママが私を抱きしめる。
「ごめんなさい、あなたにそんなことを言わせてしまって。でも、大丈夫よ。」
いつまでもこうして、両親は見栄を張り続ける。
でも、そのままで、いい未来なんて見えない。
絶対に。
だから、私は、行動に移すことにした。
うちは貧乏だから、鏡なんてなかったけど、自分がかなり寂しげな笑みを浮かべていることは分かっていた。
メイド職は天職ですけど!?(圧)~連載中~ ライフリー @raihuri-888
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