第1話 フリージアが飾る友情

二人の仕事終わりに突然、アレンジメントの依頼をするために坂本親子の営むフラワーガーデナーの前に一人の女子高生、風本花凜が訪れていた。

彼女は彼岸の才能を頼るために来たらしい。

「ねぇ、彼岸君……君の力を貸して!」

突然の頼みに彼岸は困惑した。

「なぜ、君が?もしかして親戚の結婚し……」

彼岸の質問を聞かず花凜はこう告げる。

「リアルライブイベントをするんだけどステージを花で飾りたいの、お願い!」

そう言われた彼岸だったがこの依頼を断ると言う考えは彼にはなかった。

側で聞いていた彼岸の母、向日葵はこの状況を見てこう告げる。

「二人にフリージアを送りたいくらいだね。」

息子の友人が訪れてくれたこと、そして友人となってくれたんだというこの状況に対して友情の花言葉があるフリージアを送りたいと向日葵は呟いたのだ。

事実この二人は以外にも学校で良く話す。それも花の話題でだ。

花凜は彼岸に対してよく薔薇を始めとする恋の花言葉の話ばかりしていた。

まだフラワーデザイナーとして実力はあるものの経験自体は浅い彼岸、彼はまだ覚えられていない花言葉もたくさんあるのだ。結果、恋の花言葉を話されても例えそれが乙女の淡い情熱であるとも知らずに。

しかしこの話を実は彼岸から聞いていた向日葵はある一つの結論に辿りつく。

『この花凜ちゃんはもしかして彼岸の事が……好きなのか?』

そう考えていた。

花凜は彼岸の事に関しては色々と知っていた。

それこそ彼がフラワーガーデナーを経営していることも。

だからこそ信頼できるクラスメートにして想い人である彼岸にこのことを伝えていた。 

ただし彼岸は彼女の恋心に気付いておらず花凜はずっとその可愛い頬を膨らませるほどに悩んでいた。

花が好きでフラワーデザイナーとしての称号を得た彼岸と花が好きで配信で花を語るほどにまで花言葉も好きな花凜、この二人はなぜこれほどまでに交わらないのか、向日葵は聞いたり見ていて微笑ましく思っていた。

しばらく彼岸は悩んでから決意する。

「わかったよ花凜さん。その依頼、僕が受ける!」

その返答に花凜は跳ねるほどに喜んだ。

「良いの!ありがとう彼岸くん!愛してる!」

突然の一言に彼岸は驚く。

「え?今……」

自身のうっかり発言に花凜は顔を赤くする。

「え?私、今……まさか……ごめん今のちょっと、聞かなかったことにして!うぅ~恥ずかしい。」

花凜は顔が赤くなっているのを見られないように手で顔をかくす。

その様子に彼岸は心のなかで、

『花凜さんが愛してると……いやいやいや今は仕事の話、聞かなかったことにしよう。』

そう考えた。

この後、花凜がライブを行うステージを見に行くのだがそれが以外にも大きく彼岸はよりこの依頼に対する熱量が増え、初めて自身に来た仕事を全力で行うと誓い自身の実力を活用してステージを飾っていくのだった。

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