第2話 ランクF

今俺は学園に向かっている。1時間かけて。床で寝たせいで全く疲れが取れていないのに朝からもう40分も歩いている。だが、この40分で収穫もあった。まず、うちの周辺にはほぼ人がいない。低ランクの人が少ないのか、過疎地域に飛ばされているのかはわからないが。治安も悪い可能性があるから早く力をつけなければいけない。次に俺の能力だ。(鑑定)これは思ったよりも便利かもしれない。最初は人のステータスを見ることしかできないと思っていたが、物にも使えた。例えばそこに落ちていた小石。それに使うと、


小石

ランクF

耐久値 10

付与能力 なし


ここからわかることは、よくわからないものに使えば名前を知れる。物にもランクがある。あと耐久値を知れる。これは何かと役立つだろう。あとは、付与能力?能力を付与できる能力もあるということか。

それからいくつかわかったのは、大きすぎる物には鑑定は使えない。生物に対してはほとんど使える。おそらく熟練度が上がれば建物とかもできるかもしれない。そんなことを考えながら学園に向かった。




人が見えてきたな。試しにあの人を鑑定してみるか。


田中優 16歳 男性

ランクD

筋力 60

防御 40

俊敏 100

体力 70

知力 60

魔力 60

能力 浮遊 熟練度 3


なるほど、自分のステータスを見るのと同じように見えるのか。てかこいつ昨日の飛んでたやつかよ。通りすがる人を全員鑑定していると1つあることに気がついた。そういえば俺には魔力がない。ステータスも0だった。つまりこの鑑定は魔力を消費しないから回数制限がないのか。なら遠慮なくいくらでも使えるな。そうして鑑定しながら教室まで向かった。



この学園では学年ごとに棟が別れてるらしく、教室までは1年生としかすれ違わなかった。そして、発現する能力には傾向があることがわかった。身体能力のステータスが高い者はフィジカルを使う能力が多く、知力や魔力のステータスが高いものは魔法系の能力が多い。俺の場合は後者だな。クラスに入ると半分くらいの生徒が既に座っていた。自由席みたいだったので窓際の一番端に座った。別に主人公ポジに座りたかった訳ではなくここが一番クラスを俯瞰して見れるからだ。

鑑定を発動する。

なるほど一度に複数人は見れないわけか。面倒だが一人一人見ていくしかない。ランクFとEが半々くらいか、少しだけランクDもいるが。そうすると教師が入って来た。


「お前ら、席に着いているな。ようこそプロキオン学園Eクラスへ」


その言葉で淡い期待を寄せている奴らを現実に叩き落とした。俺はそんなことは気にせず教師に鑑定を使う。だが、表示されない。生徒以外は見れないのだろうか、それとも熟練度が足りないのだろうか、まぁ教師のステータスなんて見てもしょうがないか。


「どうしたお前ら、暗い顔だが。Eクラスだからか?安心しろ。なにもずっと底辺が確定したわけではない。良い成績を納めれば上のクラスへと上がれる。ただクラス単位で入れ替わるから仲良くしとくことだ。協力しなければ絶対に上のクラスにはなれない。詳しいことはその時期になったら説明しよう。ひとまず今日の流れを説明する。お前らはまだ私服だから今日制服の寸法を行う、制服は今日中に家まで送る。その後少し話をしたら解散だ。では移動するぞ。」


体育館まで行くと他のクラスのやつも来ていた。人がいっぱいいるのは能力の実験をするのに好都合だな。




いい収穫だった。まずランクに関係なく鑑定をすることができた、それに目が届く範囲なら距離などに制限は内容だ。これは大きな収穫だった。あともう1つわかったことがある。Aクラスのやつもいたのだが、はっきり言ってあいつらは化け物だ。まずステータスが桁違いに高い。それに能力も強力なものだった。同じ歳なのにこうも違うものかと現実を見せられた。まぁBやCクラスのやつも自分と比べれば相手にならないほどステータスは高かったがな。


「よし、全員戻ってきたな。では少し話をする。ここでの生活の話だ。お前らはこの学園都市で3年間過ごしてもらうわけだが、前まで過ごしていた場所とは随分勝手が違う。まずここではポイントが全てだ。まぁ通貨みたいなもんだな。端末を見ればポイントが入っているはずだ。Aクラスには50万P、Bクラスには40万P、お前らEクラスには10万Pだ。このポイントでものを買ったりサービスを受けたりしてもらう。価値は1P=1円だと思っていい。テストや行事の成績でクラス単位でポイントは支給されるが学園から貰えるのはそれくらいだ。だから生活するためには他の手段でポイントを手に入れなければならない。バイトしたりポイントをかけた勝負をしたり色んな方法はあるが、お前らができるのは限られてくるだろう。まぁ頑張ってくれ。」


ポイントか。俺は鑑定をクラスメイトに使う。やはりポイントは見えないな。熟練度が上がれば見えるのか?それはともかく生活する方法を考えなければな。


「ああ、言い忘れていたことがあった。それぞれ学園では序列があってな。うちの学園もある。学年ごとに順位付けがあってそれは色々な要素を加味されて変動する。現在は完全にステータス順だな。いつでも端末で確認できるから見とくといい。」


序列があるのか。ここまで来ると期待などしていないが見てみるか。

佐伯広正 1年 195位

1学年200人だから、ほとんど最下位じゃないか。しょうがないか。


「話はこれで終わりだ。明日明後日は休みだから間違えるなよ。外の世界と同じで土日は休みだ。あと、この時期になると何も知らない1年を狙った低ランク狩りが出るから気をつけろよ。こちらも注意はしているのだがな。それでは、解散。」


これからどうしようかな、一旦家に帰るか。と、席から立とうとすると、


「みんな、少し待って欲しい。」


いかにも陽キャそうなやつが前に立って言った。


森川悠斗 15歳 男性

ランクE

筋力 50

防御 40

俊敏 40

体力 50

知力 40

魔力 40

能力 魔剣 熟練度 1


「先生の話によればクラスで協力して行事に臨むことが必須だ。だから今のうちに仲を深めるべきだと思う。なんせ俺らは1年下のEクラスだから上にあがらないと厳しい生活を送らないといけない。今端末でグループチャットを作ったからこれに入って欲しい。」


こいつがイケメンだからか知らんが女子は乗り気で、男子も面倒くさがるやつはいたが全員グループチャットに入った。人と話すのが苦手な俺にとっては苦手なタイプだ。クラスのやつらの能力もだいたい把握出来たし帰ろう。そう思うと教師が入ってきた。


「すまんな、制服ができたから面倒だと思うが着て帰ってくれ。男子はこの教室で女子は更衣室に案内するからついてこい。」


机には制服と校章、クラス章が置かれていた。早すぎるだろ、どうなってんだ。と思いつつ急ぎめに着替えてすぐに教室を出た。



校門まで歩いていると、


「ねぇ、君ー。新入生だよねぇ。俺今ポイントなくてさぁ、ちょっと貸してくれない?」


これが低ランク狩りか?ひとまず鑑定を発動する。


今井達也 16歳 男性

ランクC

筋力 80

防御 75

俊敏 60

体力 100

知力 35

魔力 50

能力 筋力増強 熟練度 3


ポイントが見えるようになっている。ステータスを見ると熟練度が2に上がっていた。もう上がったのか、まぁ使いまくっていたからな。使用回数で上がるなら他の能力と比べて使用制限がないから上がりやすくはあるのか。


「ねぇ、無視しないでよ。」


俺が通り過ぎようとすると腕を掴まれた。


「ポイント渡さなかったら痛い目見るよ?」


俺が適う相手じゃない、どうしたものか。そう考えていると。


「そこのお前!何をしている!」


「ちっ」


舌打ちしてそいつは去っていった。教師が来たおかげで助かった。これだから早く帰りたかったんだ。やはりEクラスだと標的になりやすいな。そうして俺は足早に家に帰った。



相変わらず遠いな。ここで助かることといえば近くにコンビニがあることくらいだ。そういえば熟練度が上がったが、家は鑑定できるのか?試しにやってみるか。家の前まで来て鑑定を発動すると、


「!?」


佐伯広正の家

ランクS

付与能力 絶対防御


他の部屋を鑑定してもランクはFだ。ボロいアパートなのだからそれはそうだ。なぜ俺の部屋だけランクがSなんだ。昨日過ごした感じは普通の一室だったぞ。

俺は急いで部屋に入り隅々まで捜索した。


「何もない。」


絶対に何かあるはずなのに何もない。いや、何もないわけではなかった。台所の床に何か違和感があった。最初は気のせいかと思ったが。怪しいところはそこしかない。

たが、台所を探してもなにもない。気のせいだったのか?諦め気味に鑑定を発動すると、


「(鑑定)を認証しました。」


機会音声と同時に床が開いた。

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