第4話 わたしのドワーフの斧

「おーはよ!」


ルゥがいつものように後ろから抱きついてくる。

「おはよ」

かな子はいつものように答える。


「今日もヤバヤバに寒いねー。今日、一限当てられてるから早めに準備しないと」

ルゥの美しい白い鼻先と永井耳が少し赤くなってる。


「ははっ、耳ながっ! ウケる」

ルゥを勝手に撮影してる他校の生徒二人組の声に気づく。


目立つ彼女といるとたまにこういうことが起きる。

「──気にしてないよ。時間無いから早く行……かな子?」


かな子はズンズンとその生徒に向かい、そしてバッグから斧を──。

取りはしなかった。そもそも持ってきてないのだ。


「そういうの、やめてくれませんか。すぐに画像消してください」

かな子は毅然とした態度ではっきりと言った。


「え、あ、」

びっくりして戸惑う二人。


シリアスな空気に、ふざけて誤魔化すこともできない。


「い、行こ」

二人組はそそくさと逃げるように去っていった。


「……ありがと」

ルゥも驚いている。


「だってムカつくじゃん」

ふふっ、と笑うかな子。


「そうだね! ムカつく! 私もやっぱり何か言ってやればよかった!」

ルゥが笑う。私も笑う。


「知ってる? ドワーフって16で成人なんだって」


街には雪が降り始めた。


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わたしのドワーフの斧 森生藤 @chikano

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