第2話 デジタルの火種

渋谷のスクランブル。

雨上がりのアスファルトがネオンを跳ね返す。


碧はスマホを見ていた。

トレンド1位の動画。


「高校生が通行人を暴行」


数十万の再生。

コメント欄は怒りと正義で埋まっていた。


だが、その「通行人」三宅悠斗はその夜、屋上から落ちた。


「……また、か」

煙草の火が雨に溶ける。

数字が人を燃やす。

渋谷はいつだって、正義の名で誰かを傷つける。



数日後、五十嵐からの依頼。

「“トレンドファクトリー”って会社、裏を調べろ。炎上で金稼いでる。」


その名を聞いた瞬間、碧の中で何かが疼いた。

――高梨結衣。


かつて一緒に過ごした時期もあった。

まっすぐな目をして、誰よりも理想を語ってた女。

けど、途中で消えた。




結衣はそこにいた。

薄いグレージュのジャケット、疲れた笑顔。

テーブルのノートPCには、会社のロゴ。

“Trend Factory”。


結衣「碧くん、まだ煙草吸ってるんだ。」

碧「やめる理由も、やめられる理由もねぇからな。」


結衣「そういうとこ、変わらないね。」


笑いながらも、その指は震えていた。

カップの表面が波打つ。

彼女は何かを抱えていた。


碧は裏で調査を進めた。

炎上の初動アカウント、同一ルート、操作的拡散。

全て、トレンドファクトリーの内側から始まっていた。


そして、そのサーバーの鍵を持つのは——

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