雁の巣病院

双極性障害の躁状態が強かった頃、

デイケアから見る世界は美しく見えた。

電車に乗り遅れないように走り出した時の空の青、桜満開の樹の下で寝そべりながら聴く、姫神の歌。

精神病院の患者にまで成り下がったのに、

何故こんなに毎日楽しかったのかサッパリ分からない。

のちに辛い思い出ばかりが残った雁の巣病院、

何故だか分からないが、退院後も俺は病院を眺めに足を運んだ

そして最初の入院時の友達、なおちゃんとも再会した。

精神病者同士なのでまともな会話は成立しなかったが、薬局の待合室のテレビでコンドルが羽ばたいていたことが印象的。

心に染みる、アンデスの景色にペルーの笛の音。

駐車場を見ると、20代くらいの女性患者が看護師に付き添われ、タバコを吸っていた。

精神病院の美しい空の下で。